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320列ADCTを導入して幡多地域の高度な医療を支える 〜冠動脈撮影や、TAVI、大腿骨骨折手術への情報提供など320

高知県立幡多けんみん病院(橘 壽人院長、診療科18科、病床数355床)は、高知県西部の幡多地域の医療を担う中核病院として、1999年に県立の宿毛病院と西南病院が合併して誕生した。以来、がん、循環器、脳血管疾患などの高度医療の提供、産科・小児科診療、救命救急医療まで地域の拠点病院としての役割を担っている。同院では、2014年3月に東芝メディカルシステムズのArea Detector CT(ADCT)の「Aquilion ONE/Global Standard Edition」を導入した。救急から心臓疾患、整形外科領域まで幅広い診療に対応する同院での320列ADCTの運用を中心に取材した。

吉森伸郎経営事業部長

吉森伸郎
経営事業部長

北岡謙一整形外科部長

北岡謙一
整形外科部長

公文 弘放射線科技師長

公文 弘
放射線科技師長

大石孝正 主任

大石孝正
主任

 

高知県西部・幡多地域の住民の命を守る基幹病院

高知県の西部、愛媛県とも県境を接する幡多地域は、四万十市、宿毛市、土佐清水市、幡多郡(黒潮町、大月町、三原村)で構成され、人口は9万人弱。その中で、幡多けんみん病院は、地域で唯一の県立病院として、診断から治療まで高いレベルの診療を提供できる体制を整え、他の医療機関や介護・福祉施設などと連携しながら、地域で完結可能な医療を展開する。診療では、循環器科、脳神経外科、小児科、産婦人科などで地域のセンター的役割を果たしているほか、救急医療では24時間365日の診療体制で二次救急までカバーする。また、2012年には地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、専門的治療から緩和ケア、医療相談まで地域のがん医療の中核を担っている。
そのほか、災害拠点病院(地域災害医療センター)として、災害倉庫や食料備蓄、非常用電源などを備えるなど、地域に果たす役割は大きい。経営事業部の吉森伸郎部長は、同院の地域での役割について、「地域の医療を守る最後の砦として、高いレベルの診療が提供できる体制を整えています。CTをはじめとする画像診断機器、治療機器についても最先端の医療機関と変わらないレベルの機器をそろえています」と説明する。

Aquilion ONE/Global Standard Editionを新たに導入

放射線科の機器は、CTがAquilion ONE/Global Standard Editionを含め2台、1.5T MRI2台、血管撮影装置2台、一般撮影室がマンモグラフィを含めて3室、そのほかRI、放射線治療までがそろう。放射線科の公文 弘技師長は、「地域で完結できる医療を提供する病院の診療を支えるべく、診断、治療機器についても高機能の装置をそろえて高いレベルの検査を提供しています」と述べる。
Aquilion ONE/Global Standard Editionは、2014年3月に他社シングルヘリカルCTをリプレイスして導入された。CT導入の経緯を公文技師長は、「もう1台の他社製64列CTをメインに使用してきましたが、更新の時期に当たって、面検出器を搭載したAquilion ONE/Global Standard Editionを新たに導入しました。CTは2台体制となりますが、64列はバックアップとして、ADCTをメインに運用しています」と説明する。
CTの検査件数は、年間で1万6000件、1日平均では30件から多い時で50件近く撮影する。救急の撮影もあるため、スタッフは基本的にCTとMRIの頭部、脊椎の検査には対応できるようにしている。公文技師長は、「CTとMRIに関しては、担当技師をおいて、専任としてさまざまな検査に対応できる体制をとっています。その上で、緊急時にはスタッフ全員が検査に対応できるように全体のレベルアップを図っています」と述べる。放射線科のスタッフは、放射線科医2名、診療放射線技師12名などとなっている。
CTを担当する大石孝正主任は、Aquilion ONE/Global Standard Editionの運用について、「撮影スピードの向上とボリュームデータの取得が可能になったことで、検査と画像処理作業の時間がスピードアップしました。特に冠動脈撮影では、64列に比べて約1/10の被ばく線量で、一瞬で撮影できますので造影剤量も減り、撮影後の位相を探す手間もありません。64列の画像で十分と言っていた循環器科の医師からも高い評価を得ています」と述べる。

Aquilion ONE/Global Standard Editionのコンソール

Aquilion ONE/Global Standard Editionのコンソール

 

 

大腿骨骨折の“Same Day Surgery”をサポートするADCT

同院では、大腿骨転子部骨折の手術について、できるかぎり受傷当日に行う“Same Day Surgery(同日手術)”を進めている。大腿骨骨折は、超高齢社会の中で症例数が増え続けているが、多くの医療機関では手術室や麻酔医の手配などの都合から、手術までの待機期間が3〜6日(平均4.4日)となっている(日本整形外科学会のアンケートによる調査結果)。同院では、手術室や麻酔科の協力を得て、大腿骨骨折の早期治療に取り組んでいる。整形外科で、2011年11月〜2014年3月までに行った248例の大腿骨骨折手術のうち、135例に当日手術、翌日までに約8割の手術を行っている。整形外科の北岡謙一部長は、「大腿骨骨折患者の平均年齢は84歳で、90歳代や認知症患者も多く、できるだけ早く手術することで術後の回復やリハビリ、療養環境にも良い影響を期待しています」と説明する。
同院では、大腿骨骨折で救急搬送された場合には、単純X線写真とCTを撮影し、骨折以外に疾患がないと判断すれば、そのまま手術に至るケースがよくあるという。北岡部長は大腿骨手術におけるCTの有用性について、「大腿骨骨折の治療は、的確な診断に基づいて正確で安全な手術を行うことが要求されます。特に骨粗鬆症を背景に持つ患者さんでは、粉砕骨折など単純X線写真だけでは判断できないケースが増えており、CTによる高精度な画像情報により精度の高い手術が可能となります。術前にCTによる3D画像を確認して、骨折の程度や方向などを把握し術式やデバイスの選択を行うことで適切な治療が提供できます」と述べる。

冠動脈撮影や頭部サブトラクション、SEMARなどを活用

冠動脈撮影では、64列からADCTになったことで、特に高心拍や不整脈症例で撮影できないケースがなくなり、再構成時の作業効率も向上したと大石主任は次のように評価する。
「冠動脈の撮影は、64列CTの時から行っていましたが、Aquilion ONE/Global Standard Editionでは1心拍のボリュームスキャンを行い、動きの少ない位相が自動的に再構成されます。64列では、心位相を自動調節する機能があるのですが、止まっている位相を探すのに時間がかかっていましたので、大きな違いですね」
また、同院では心臓弁膜症の患者について、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)のために他院への紹介を行っているが、その際にAquilion ONE/Global Standard Editionで術前のCT撮影を行っている。大石主任は、「今年からTAVIのために他院への患者紹介を行っていますが、術前プランニング用の情報として当院でCT撮影を行ってデータを提供しています。Aquilion ONE/Global Standard Editionでは、バリアブルヘリカルピッチ(vHP)によって、心電図同期による胸部撮影から下肢までを一気に撮影できます」と説明する。
頭部領域では、CTAのオーダに対してAquilion ONE/Global Standard Editionでのサブトラクションを行った画像の提供を行っている。大石主任は、「単純と造影のボリュームデータでサブトラクションを行うことで、頭蓋底の骨抜きなどが高精度に可能です。3Dワークステーションでも骨除去は可能ですが、診療科が求める部位や範囲、症例などによって選択しています」と説明する。さらに、ボリュームスキャンとCTサブトラクションに、金属アーチファクトを低減する“SEMAR”を適用することで、脳動脈瘤のクリップ術後の患者のフォローアップにおいても、クリップのアーチファクトを除去して関心領域の評価を可能にしている。

■症例1:冠動脈奇形症例

ボリューム撮影を行うことで、短時間かつ正確な画像を提供できる。

ボリューム撮影を行うことで、短時間かつ正確な画像を提供できる。

 

■症例2:大腿骨骨頭部骨折症例

MPR画像により、転子部骨折の部位や範囲を正確に把握することができる。

MPR画像により、転子部骨折の部位や範囲を正確に把握することができる。

 

■症例3:左骨頭骨折症例

左骨頭骨折が明瞭に描出されている。

左骨頭骨折が明瞭に描出されている。

 

AIDR 3Dと高速撮影でCT透視などでも被ばくを低減

Aquilion ONE/Global Standard Editionでの被ばく線量の低減については、全検査にAIDR 3Dを組み込むことで確実に低被ばく化を進めているほか、CTガイド下の透視などでも効果が出ているという。大石主任は、「CTガイド下のドレナージやバイオプシーを行っていますが、Aquilion ONE/Global Standard Editionでは3スライスで確認が可能で手技自体が短くなっています。これは確実に線量削減につながっています」と、高速撮影がもたらす効果について述べる。
高知県西部の唯一の県立病院として地域から大きな信頼を集める同院で、320列ADCTが大きな役割を果たしている。

(2015年5月26日取材)

 

高知県立幡多けんみん病院

高知県立幡多けんみん病院
高知県宿毛市山奈町芳奈3-1
TEL 0880-66-2222

 

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