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循環器領域での質の高い検査をハイエンドクラスCT2台で行い地域医療の重責を担う 〜Area Detector CTとVitreaによ

函館五稜郭病院

 

道南医療圏全域の急性期医療を手がける函館五稜郭病院は、ハイエンドクラスのモダリティを整備するなど、新しい技術を積極的に診療現場に取り入れてきた。2009年には東芝メディカルシステムズの「Aquilion ONE」を導入し、2015年3月に「Aquilion ONE/Global Standard Edition V6.0」へとバージョンアップ。同時に採用した画像処理ワークステーション「Vitrea」を用いて、心筋虚血のtransluminal attenuation gradient(TAG)解析に取り組んでいる。同院における循環器領域でのCTの活用法を取材した。

新技術の臨床応用に積極的に挑み地域医療を支える

戊辰戦争で旧幕府軍の最後の砦となった五稜郭に隣接する函館五稜郭病院は、1950(昭和25)年に開院した。「『安心』・『信頼』・『満足』を患者さんと地域に」を基本理念に掲げ、二次医療圏である南渡島医療圏はもとより、南檜山・北渡島檜山医療圏も含めた、道南医療圏全域の急性期医療を担っている。現在、標榜診療科数は22科、病床数は516床を数え、2014年の実績で外来患者数は1日約1000人、救急搬送数は年間約2800人に上っている。
地域中核病院である同院では、設備や医療機器の充実化にも取り組んでいる。同院はがん診療連携拠点病院の指定を受けており、道南医療圏では唯一PET/CTを導入するなど、常に最先端の装置を整備し、高度医療に役立ててきた。これは、国内初の西洋式城郭である五稜郭をはじめ、常に新しい技術を積極的に取り入れてきた函館の風土が、長年にわたり地域医療を支えてきた同院にも根づいているのだと言える。

中田智明 副院長

中田智明 副院長

小林功一 医療部放射線科科長

小林功一
医療部放射線科科長

大須田恒一 技師

大須田恒一 技師

 

「待たせない検査」のためにハイエンドクラスのCTを導入

放射線科には現在、小林功一科長以下、29名のスタッフが在籍している。小林科長は、放射線科の基本方針について、次のように説明する。
「放射線科では、『患者さんを待たせない検査』をめざして、日々業務に取り組んでいます。当院は道南医療圏の南端にあり、自動車で3時間かけて来院する方や、青森県の大間町から海を渡ってくる患者さんもいます。これらの遠方から来る患者さんが診察後すぐにCTやMRIの検査を受けて、その診断結果までを聞いて、安心して家に帰れるようにするのが、私たちの目標です」
この方針の下に、検査業務に取り組んでいるスタッフは、当日検査を実施するために日々の研鑽を欠かさない。病院が費用を負担し、北海道内だけでなく、全国各地の学会、研究会などに積極的に参加できるようにして、検査技術の向上を図っている。
一方で、ハイエンドクラスのモダリティを導入していることも、当日検査の実施に貢献している。前述のPET/CTが2台あるほか、CTは4台、MRIは1.5T装置を2台配備している。特にラインナップが充実しているCTは、函館市内第1号機として2009年から稼働しているAquilion ONEを、2015年3月にAquilion ONE/Global Standard Edition V6.0にバージョンアップ。同じタイミングで80列160スライスの「Aquilion PRIME」も導入した。現在、この2台をメインに使用しているほか、救急用と治療計画用にそれぞれ64列CTを1台配備している。当日検査を行うためのこのような設備投資により、2014年における1か月平均のCT検査は2089件、MRI検査は472件、核医学検査は404件(うちPET/CTが274件)となっている。
さらに放射線科では、循環器内科とともに、Aquilion ONE/Global Standard EditionとVitreaによる心筋虚血のTAG解析を行っている。

循環器診療に生かされるArea Detector CTとマルチスライスCT

同院では、年間約250症例の経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行するなど、循環器領域の疾患を多く扱っており、Aquilion ONE/Global Standard EditionとAquilion PRIMEが活躍している。循環器内科の中田智明副院長は、循環器診療におけるCTの位置づけについて、「心筋虚血のような心機能を診断するのは、負荷心筋シンチグラフィなどの核医学検査がゴールドスタンダードですが、多列化や被ばく低減といった近年の技術の著しい進歩により、心臓カテーテル検査前のゲートキーパーとして非侵襲的に心疾患を診断することができ、重要な存在となっています」と説明している。
このような考えに基づき、同院では、Area Detector CT(ADCT)とマルチスライスCT(MSCT)のハイエンドクラスの装置を2台導入した。そして、両装置をフル稼働させることで、検査の“質”が確実に向上している。通常、CT検査を担当する4名の診療放射線技師は、検査オーダを受けると、その内容を基にどちらの装置で撮影するか振り分ける。CT検査担当の大須田恒一技師は、ADCTとMSCTの使い分けについて、「Aquilion ONE/Global Standard Editionでは4D-CT、Aquilion PRIMEでは3D-CTを撮影しています」と述べている。Aquilion ONE/GlobalStandard Editionについて大須田技師は、造影CTにおいてダイナミックボリュームスキャンにより血流動態をとらえることができ、4Dデータでの有用な情報を提供しているという。一方、Aquilion PRIMEは、人工骨頭置換術を受けた患者さんなども多いことから、金属アーチファクトを低減する“SEMAR”を使用する検査が多く、撮影後にSEMARの処理を行うことによりアーチファクトを抑え、画質が改善できる点を評価している。

■症例1 労作時胸苦、背部痛、呼吸苦

症例1 労作時胸苦、背部痛、呼吸苦

a:TAG解析(LAD)、b:TAG解析(RCA)、c:TAG解析(LCX)、d:VR画像、e:MIP画像、f:アデノシン負荷心筋シンチグラフィ
冠動脈解析(d、e)にてLADに有意狭窄、TAG解析により心筋虚血を疑い(a)、負荷心筋シンチグラフィ所見(f)と一致した。

 

VitreaのTAG解析機能による高精度の心筋虚血評価

同院の放射線科では、現在1か月平均30件程度の心臓CTをAquilion ONE/Global Standard Editionで施行している。その多くは、PCI後のフォローアップ、心電図検査後の要精検、診療所からの紹介検査である。造影はtest bolus tracking(TBT)法で行っており、造影剤量はフラクショナルドーズで27mgI/kg/sで10秒注入としている。
また、放射線科では、循環器内科、心臓血管外科とともに、心臓CTにおける新たな検査法、診断法に取り組んでいる。例えば、循環器内科とはTBT法による冠動脈のサブトラクションCTを行っている。そして、現在最も意欲的に取り組んでいるのがTAG解析である。
TAG解析は、冠動脈を流れていく造影剤の濃度変化をCT値でグラフ化するものである。健常者の場合は、造影剤が冠動脈の末梢に流れていくに従って緩やかに濃度が低くなっていくが、狭窄があれば大きく濃度が下がり、グラフのCT値も大幅に下降する。これにより心筋虚血の評価が可能となる。同院では、まずAquilion ONE/Global Standard Editionで心臓CTを施行し、これをVitreaのTAG解析機能を用いて、冠動脈が左から右へ一直線となる画像を作成し、冠動脈のCT値をグラフ化する処理を行っている。これにより、冠動脈のどの部分で虚血が起きているかがわかる。大須田技師は、Vitreaでの解析について、「導入以前は、手作業でグラフを作成するなど、非常に手間と時間がかかっていました。それが自動処理されるようになり、短時間で容易な評価が可能となりました」とメリットを挙げている。
同院では、TAG解析の症例数を増やして、負荷心筋シンチグラフィ、心臓カテーテル検査と比較し、その有用性の評価を行った。これについて中田副院長は、「形態画像だけでは過大評価してしまうことがありますが、TAG解析により機能情報を追加することで、心筋虚血を高い精度で診断できるようになります。これにより、無駄な検査・入院を減らすことができたり、心臓カテーテル検査が必要な患者さんに対して速やかに検査を実施することができます」とTAG解析の意義について述べるともに、期待を示している。

VitreaでTAG解析を行う大須田技師

VitreaでTAG解析を行う大須田技師

 

“デュアルエネルギーシステム”や“AIDR 3D Enhanced”も活用

中田副院長らは、これからTAG解析の症例を積み重ね、より高い精度で心筋虚血の評価ができるよう取り組んでいくとしている。また、放射線科では、今後もAquilion ONE/Global Standard Editionの性能を生かした検査を行っていく。そして、被ばく低減技術であるAIDR 3D Enhancedを使用した低線量での撮影により、患者さんの負担を軽減していく予定である。
新技術を積極的に取り入れて新しいことに挑戦してきた同院では、これからもAquilion ONE/Global Standard Editionのメリットを引き出し、道南地方の地域医療を支えていく。

(2015年10月29日取材)

 

社会福祉法人 函館厚生院 函館五稜郭病院

社会福祉法人 函館厚生院 函館五稜郭病院
北海道函館市五稜郭町38-3
TEL 0138-51-2295
http://www.gobyou.com/

 

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