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神戸市の医療を担う基幹病院で新世代ADCTのAquilion ONE / GENESIS Editionが稼働〜循環器領域を中心に面検出器とFIRST

神戸市立医療センター中央市民病院

 

神戸市立医療センター中央市民病院(坂田隆造院長、診療科32、病床数700床)は、神戸市の基幹病院として、高度医療・救急医療などで質の高い医療を提供している。同院では、診断用、救急部門で計4台の64列CTが稼働していたが、そのうち1台を2016年3月にリプレイス。Area Detector CT の最上位機種である東芝メディカルシステムズの「Aquilion ONE / GENESIS Edition」が、関西地区での第1号機として導入された。冠動脈CTなど循環器領域を中心にスタートした同院での初期導入経験を取材した。

神戸医療産業都市の中核として2011年に新築移転オープン

神戸市立医療センター中央市民病院のあるポートアイランド南側の地区は「神戸医療産業都市」として開発が進められており、同院をはじめ先端医療センター、神戸低侵襲がん医療センター、兵庫県立こども病院などの医療関連施設のほか、バイオ、再生医療、スーパーコンピュータ施設などが集積して連携することで、最先端の研究開発や雇用創出などを図っている。同院は、メディカルクラスターの中心施設として、2011年7月に同じポートアイランド内の旧病院から現在地に新築移転した。診療では、手術支援ロボットやTAVR(経カテーテル大動脈弁治療)の導入など高度医療の提供や、24時間365日の北米型ERスタイルの救急医療の取り組みなどを特徴とする。
放射線診断科は、7名のスタッフ(核医学専門医1名含む)で画像診断とIVRを担当する。伊藤 亨部長は、「経験豊富なスタッフが多く、各自がカバーする専門領域も幅広く、少数精鋭で成熟したチームとなっているのが特徴です。診療科とのカンファレンスなどを通じて、密な連携を取って診療を進めています」と現況を説明する。1日の読影件数はCT160件、MRI70件、PET/CT10件、核医学15件など。特に救急部門とは毎朝8時にカンファレンスを行い、夜間に撮影されたCT、MRIについてはその場でチェックして問題があればすぐにフィードバックする体制をとっている。

放射線診断科・伊藤 亨部長兼院長補佐

放射線診断科・
伊藤 亨部長兼院長補佐

循環器内科・加地修一郎医長

循環器内科・
加地修一郎医長

放射線技術部・奥内 昇技師長

放射線技術部・
奥内 昇技師長

 

放射線技術部・福井達也副技師長(左)、茨木丈晴主査

放射線技術部・福井達也副技師長(左)、
茨木丈晴主査

   

 

関西地区第1号機のAquilion ONE / GENESIS Edition導入

Aquilion ONE / GENESIS Editionは、Aquilion ONEシリーズの最上位機種として新たに投入されたADCTのフラッグシップモデルである。これまで培ってきたノウハウをブラッシュアップし、独自のX線光学系技術“pureViSION Optics”とFull IRの逐次近似画像再構成である“FIRST”との組み合わせで、さらなる高画質化と低被ばく撮影を可能にした。
同院では、診断部門で他社製64列CT3台、救急部門でも他社製64列CT1台を用いて年間3万5903件(2015年実績)の撮影を行っていた。今回、診断部門の他社製64列CT1台をリプレイスして、東芝メディカルシステムズのAquilion ONE / GENESIS Editionが導入された。同院ではIVR-CTとしては東芝社製が稼働しているが、診断用としては初めての導入となる。CTへの期待を伊藤部長は、「画質やさまざまなアプリケーションなどはもちろんですが、被ばく線量や造影剤量の低減、検査のスループットの向上などをトータルに判断して導入しました」と述べる。
CT検査は、Aquilion ONE / GENESIS Edition導入前でも単純、造影ともほぼ即日で検査が可能だったが、奥内 昇技師長は、「CTが検査の第一選択となるケースが多くなっていることから、診療のスループットの中でボトルネックとならない体制を整えることが必要であり、今回のAquilion ONE / GENESIS Editionの導入についても機器の性能を含めてトータルに評価して選択しました」と述べる。

シンプルなAquilion ONE / GENESIS Editionのコンソール

シンプルなAquilion ONE / GENESIS Editionの
コンソール

撮影範囲をレーザー光で示す“エリアファインダ機能”

撮影範囲をレーザー光で示す“エリアファインダ機能”

 

撮影をサポートする機能を搭載し検査ワークフローを向上

放射線技術部でCTを担当する茨木丈晴主査はAquilion ONE / GENESIS Editionの第一印象について「320列ということで、ある程度の大きさを想像していたのですが、思ったよりコンパクトで驚きました。実際に64列が入っていた部屋にそのまま設置しましたが、ストレッチャーの出し入れなども問題なく、作業スペースも確保されています」と述べる。操作性については、「初めての東芝メディカルシステムズ社製のCTであり、最初は少し戸惑いましたが、撮影部位や症例によってプロトコールを決めてプリセットとして登録することで、簡単な操作が実現できました。当院では、放射線技術部内のローテーションが比較的短いことから、誰でもすぐに使える操作性がポイントだったのですが、問題なく対応することができました」(茨木主査)と述べる。
Aquilion ONE / GENESIS Editionでは、±30°まで可能なガントリチルト機能など検査効率と使い勝手を向上する機能が追加されている。検出器の範囲をレーザー光で表示する“エリアファインダ機能”について茨木主査は,「位置決め画像を撮影せずに、目視で撮影したい部位にポジショニングできます。一般撮影のようなセッティングが可能で、検査のワークフローの向上や被ばくの低減にもつながっています」と評価する。

FIRSTの高精細画像による冠動脈CTに期待

同院では、Aquilion ONE / GENESIS Editionの最初のターゲットとして心臓CTの撮影からスタートしている。循環器内科の加地修一郎医長は、循環器領域での診療について、「面検出器によってバンディングアーチファクトがない画像が得られることはもちろんですが、FIRSTによるノイズ低減と画質の向上が最大のメリットです。FIRSTによる画像再構成は血管の辺縁がシャープで、石灰化のブルーミングアーチファクトもなく、従来の画像再構成法に比べて明らかに画質が向上しています。これによって、従来CTでは難しいとされていた細小血管の描出、ステントや石灰化の内腔の描出が可能になるのではと期待しています」と述べる。さらに、加地医長は、「高速撮影と画質の向上によって、従来は難しかった息止め困難例や心房細動例などでも撮影が可能になり、適応拡大が期待されます」とAquilion ONE / GENESIS Editionの可能性について評価する。
茨木主査は心臓CTについて、「以前の64列CTでは、検査前にハートレートによって適切なプロトコールを探す必要があったのですが、Aquilion ONE / GENESIS Editionでは息止めの練習をするだけであとは自動的に装置側で設定をして撮影する“ハートナビ”によって、検査は非常に楽になりました」と述べる。さらに、Aquilion ONE / GENESIS Editionでは、FIRSTによる画像再構成で低電圧撮影が可能になり心臓CTにおいて低被ばく、低造影剤量の検査が可能になっている。ほとんどの検査で64列CTの約1/4の線量となり、1mSv以下の検査も実現している。茨木主査は、「80kVでの撮影を行っていますが、循環器内科からの画質の評価も高く、小児の川崎病の検査も行いました。これまで小児の心臓検査は被ばくの点で躊躇していましたが、ここまで低線量になればフォローアップでも使用できるのではと期待しています」と述べる。
また、循環器領域の撮影では、“バリアブルピッチヘリカルスキャンシステム(vHP)”で、胸腹部の心電図同期、非同期の一連の撮影が可能になった。vHPの活用について茨木主査は、「これまでは2回に分けた撮影が必要でしたが、vHPでは1回の撮影ですみ、造影剤量を低減することができます」と評価する。低電圧撮影との組み合わせによって、さらなる造影剤量の低減が期待されており茨木主査は、「従来の半分の容量のシリンジの導入や、ヨード濃度の低い造影剤の使用など患者さんへの負担軽減が期待できます」と述べる。

■‌Aquilion ONE / GENESIS Editionによる臨床画像:冠動脈CTA(1Beat)

Volume撮影のため、バンディングアーチファクトのない鮮明な画像が得られている。FIRST再構成で処理することで血管壁がシャープになり、内腔部分と石灰化部分が明瞭に分離できている。

Volume撮影のため、バンディングアーチファクトのない鮮明な画像が得られている。FIRST再構成で処理することで血管壁がシャープになり、内腔部分と石灰化部分が明瞭に分離できている。

 

さらなる低被ばく撮影で心機能評価などへの適用も期待

大きな期待を持って導入されたAquilion ONE / GENESIS Editionだが、導入初期の評価について福井達也副技師長は、「当院では、心臓CTとしては年間で冠動脈800件、アブレーション前検査500件を行っており、操作性とスピードは重要です。また、TAVR前のCT検査も増加しており、今後vHPによる検査が効果を発揮するのではと期待しています」と述べる。
加地医長は、心臓領域でのAquilion ONE/ GENESIS Editionへの期待について、「心機能評価や心臓の形態評価への利用を考えています。FIRSTによって低被ばくで、心エコーのような三次元的な心臓の構造解析が可能になるのではと期待してます」と語る。さらに、今後の展望について茨木主査は、「心臓領域では冠動脈のサブトラクション撮影や、脳神経外科では頭部の4D-DSA、腹部では腎動脈瘤や脾動脈瘤などのIVR術後評価としての4D-DSAに取り組んでいきたいですね」と語っている。
Aquilion ONEを超えるAquilion ONEとして登場したAquilion ONE / GENESIS Editionによる、これからが期待される。

(2016年4月28日取材)

 

神戸市立医療センター中央市民病院

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神戸市中央区港島南町2丁目1-1
TEL 078-302-4321
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