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省スペース設計と経済性の高さで1.5Tからのリプレースも可能なVantage Galan 3T 〜3Tによる高画質を全身領域で提

佐野厚生総合病院

 

栃木県佐野市の地域医療を支える佐野厚生総合病院は、2017年8月に2台ある1.5T MRIのうち1台を、キヤノンメディカルシステムズ(旧・東芝メディカルシステムズ)の3T MRI「Vantage Galan 3T」へと更新した。1.5T装置が入っていた検査室を拡張することなく設置でき、全身領域において高画質な画像を提供し、地域医療に貢献している。Vantage Galan 3Tへの更新の経緯や実際の運用について、用度管理課課長を兼任する山崎義広事務部部長と、放射線科の江原信隆主任に取材した。

山崎義広事務部部長

山崎義広
事務部部長

江原信隆放射線科主任

江原信隆
放射線科主任

 

 

高度医療機器を計画的に更新し基幹病院として地域医療を支える

1937年に開設し、80年を超える歴史を持つ佐野厚生総合病院は、救急から療養まで包括的に医療を提供するケアミックス型(531床:一般376床、感染症4床、精神51床、療養型100床)の地域基幹病院である。2003年に現在地に新築移転、地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院の指定を受け、現在は21診療科を標榜する。2017年に就任した村上円人院長の下、断らない救急医療(一次・二次)の実践にも注力し、地域中核病院としての役割を担っている。山崎事務部部長は地域での病院の位置づけについて、「大病院や公的病院がない(市民病院は2018年4月より民営化)佐野市において、地域医療を守ることを使命としています」と述べる。
長く農村地域の医療を支えてきた厚生連病院だが、農業人口の減少や高齢化、また医師不足などの影響を受け、厳しい運営を強いられている。同院も例外ではなく、実際に栃木県で3病院を運営していたJA栃木厚生連が2013年に解散するなど取り巻く環境は厳しい。山崎部長は、同院の現況を次のように説明する。
「地域の医療ニーズに対応するため、多くの診療科を維持していますが、常勤医の確保が最大の課題です。医療経済についても厳しい状況が続く中で、病院としては地域での役割の強化、医師の確保を念頭に置き、災害拠点病院およびへき地医療拠点病院の認可に向けた体制づくりを進めています」
同院では、2017年8月にMRIを1.5Tから3TのVantage Galan 3T(以下、Galan 3T)に更新した。高額医療機器の調達、更新について山崎部長は、「画像診断機器など高度医療機器の更新は、地域医療を守るために必要なことであり、中長期計画を立て継続的に実施しています。MRIについても、より高画質で鮮明な画像で地域医療に貢献できるよう、1.5Tから3Tへの更新を決めました」と述べる。
同院は、MRIをはじめCT、X線撮影装置など診断機器はすべてキヤノンメディカルシステムズの製品が導入されている。その理由を山崎部長は、「国産企業であり、なにより栃木県大田原市に本社を置く地元企業でもあり、メンテナンスやサービスへの信頼と安心感から長いおつきあいになっています。とはいえ、性能やコストパフォーマンスについては妥協せず厳しい評価を経て導入しています」と説明する。

コストやスペースなど1.5Tからの更新の課題をクリア

同院では、「EXCELART」と「EXCELART Vantage powered by Atlas」(共にキヤノンメディカルシステムズ)の2台の1.5T MRIが稼働していたが、更新時期を迎えたEXCELARTに代わる装置の検討が行われた。1.5Tから3Tへの更新に当たって最初に課題となったのが、設置スペースと入れ替えに伴う装置のダウンタイムだった。山崎部長は、「1.5Tの部屋に3Tを入れるには、大幅な改修工事が必要だと思っていましたが、 Galan 3T はそのまま設置できることがわかり、決め手の一つとなりました。さらに、部屋の大きな工事が不要で、工事費も抑えられ、更新作業に伴うダウンタイムも最小限に抑えることができました」と話す。
Galan 3Tは、最小設置面積18.6m2の省スペース設計が特長の一つであり、今回の更新ではEXCELARTの検査室にそのまま設置でき、大幅な拡張工事なども必要なかったため、1か月弱の休止期間で検査を再開できた。
また、高磁場化によるランニングコストの増大も課題の一つだったが、寝台を下げると自動でスタンバイ状態になる“Ecoモード”機能や、液体ヘリウムの消費を防ぐボア構造が評価された。山崎部長は、「Ecoモードは診療放射線技師が意識することなく消費電力を抑えることができます。また、液体ヘリウムは従来、年1回補充していましたが、それも不要になります。これにより年間のランニングコストは、以前と比べて200万〜250万円削減できると試算しています」と説明する。

1.5TのEXCELART(左)が設置されていた検査室を拡張することなく、Galan 3T(右)を設置することができた。

1.5TのEXCELART(左)が設置されていた検査室を拡張することなく、Galan 3T(右)を設置することができた。

 

高画質化と撮像時間の短縮で頭から足先まで全身検査に活用

放射線科では、診療放射線技師16人のうち4人がMRI検査を担当しており、予約検査、当日検査を合わせて、2台で1日約25件の検査を実施している。基本的に3Tと1.5Tで使い分けはせず、Galan 3Tは頭部から手足の指先まで、全身の検査に活用されている。
MRI検査を担当する江原主任は、Galan 3Tの画質について、「全身どの部位でも高画質に撮像できます。患部に密着できる16chフレキシブルSPEEDERでは高いSNRの画像を得られ、膝や手足などの整形領域、体幹部などさまざまな領域に有用です(図1)。当院では、乳腺外科から術前評価や薬物療法の効果判定のためのオーダも多いのですが、乳房撮像でも脂肪抑制が均一によく効き、安定した画像を得られます(図2)」と述べる。
Galan 3Tの画質を高く評価している江原主任だが、更新前には心配もあったと次のように話す。
「3T MRIの臨床利用が始まった頃、腹部は中心まで磁場が届かず画質が低下する現象があったので懸念していましたが、実際には1.5T装置と比べて圧倒的に画質が向上していました。当院は胆石の患者が多くMRCP検査を頻繁に行いますが、特別な工夫をせず普通に撮像するだけで明瞭な画像を得られるので、腹部検査には優先的に使用しています」
また、3Tにより高画質化したことで、頭部検査などでは従来の約半分の撮像時間でも1.5Tと同等以上の画像を得られるようになった。そのため、「撮像時間が2分から1分になるだけでも、長い時間、静止することが難しい小児や認知症患者の検査に非常に有用です」と、江原主任は臨床的なメリットが高いと話す。

■Vantage Galan 3Tによる臨床画像

図1 膝の拡大画像 16chフレキシブルSPEEDERは、患部に密着させることができるため、高いSNRを得ることが可能。高SNRを生かした高分解能撮像になり、軟骨構造が明瞭に描出されている。

図1 膝の拡大画像
16chフレキシブルSPEEDERは、患部に密着させることができるため、高いSNRを得ることが可能。高SNRを生かした高分解能撮像になり、軟骨構造が明瞭に描出されている。

 

図2 乳房画像(浸潤性乳管癌) 脂肪抑制法Enhanced Fat Freeを用いることにより、両側均一の脂肪制画像が得られている。

図2 乳房画像(浸潤性乳管癌)
脂肪抑制法Enhanced Fat Freeを用いることにより、両側均一の脂肪制画像が得られている。

 

高精度アプリケーションによる自動化で検査スループットが向上

ハードとソフトの両面から検査のスループット向上が追究されている点も、Galan 3Tの特長である。まず、検査準備では、ポジショニングサポートパッドが充実しているため、汎用コイルでも専用コイルのように簡単にセッティングできる。ヘッドコイルにはチルト機能が付いており、円背の患者でもポジショニングがしやすい。江原主任は、「簡単にポジショニングできるということは、患者さんにとっても体が楽だということです。楽な姿勢であれば検査中も動かずにいられるため、画質の向上にもつながります」と話す。
豊富なアプリケーションも、スループット向上に貢献している。位置決めアシスト機能“SpineLine”は、従来は手作業で行っていた椎間板断面の設定が自動で行われ、作業時間が大幅に削減された。また、動脈硬化症や糖尿病による壊死を評価するための下肢血管検査について、江原主任は、「全下肢の非造影MRAは、FBIアシスト機能“DelayTracker”を用いることでワンクリックにて拡張期、収縮期のディレイタイムが撮像条件に反映されるため、失敗することがなく、検査時間の延長がなくなりました。撮像後は、MIP処理やつなぎ合わせのスティッチング機能が全自動で行われるようになり操作時間も短縮しました」と、検査スループットの向上に大きく寄与していると述べる。

静音化技術や共同利用の促進で地域に貢献するGalan 3T

同院では、Galan 3Tの高画質化やスループット向上に加え、静音化技術Pianissimo Zenをはじめとした“患者へのやさしさ”も高く評価している。山崎部長は、「開口径が71cmと大きいことや、耳栓やヘッドホンなしで検査を受けられることは、患者さんの安心につながります。当院は近年、市民向けの広報活動にも注力していますが、そこでもGalan 3Tは貢献してくれると思います」と期待を示す。
4月からは診療放射線技師を増員し、院内検査の増加だけでなく、地域連携での共同利用も含めたGalan 3Tのさらなる活用に取り組んでいく。地元に愛される病院をめざす同院にとって、Galan 3Tは大きな力となるだろう。

(2018年3月7日取材)

 

佐野厚生総合病院

佐野厚生農業協同組合連合会
佐野厚生総合病院
栃木県佐野市堀米町1728
TEL 0283-22-5222

 

 

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