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一般撮影のさらなる低線量化を可能にする新ノイズ低減処理ソフトウエア 〜AIを活用した技術で画像のノイズ

“患者さんのために”より安全・安心な検査をめざす

“患者さんのために”より安全・安心な検査をめざす

 

獨協医科大学病院では,長年にわたりキヤノン社製デジタルラジオグラフィ「CXDIシリーズ」を使用してきたが,新たにキヤノンが開発したノイズ低減処理ソフトウエア「Intelligent NR」の臨床応用を開始した。同ソフトウエアは,人工知能(AI)技術の一つであるディープニューラルネットワークを用いて構築したノイズ低減処理技術で,従来ノイズ低減処理より大幅にノイズを低減する。臨床応用に先駆けて基礎検討を行ってきた同院の使用経験について,放射線部の淺野浩一副技師長と木村友昭主任技師,瀬﨑英典技師に取材した。

淺野浩一 副技師長

淺野浩一 副技師長

木村友昭 主任技師

木村友昭 主任技師

瀬﨑英典 技師

瀬﨑英典 技師

 

革新的なノイズ低減処理ソフトウエア「Intelligent NR」

獨協医科大学病院の放射線部は74名の診療放射線技師が所属し,放射線診断部門,核医学部門,放射線治療部門の3部門に分かれて放射線診断・治療を行っている。そのうち放射線診断部門では,2000年からデジタル化を推進,一般撮影領域では2005年にデジタルラジオグラフィCXDIを導入した。現在,一般撮影室のほか手術室や救急撮影室で合計17枚のCXDIを使用している。
CXDIシリーズは,画素サイズの125μm化や散乱線低減処理機能,アドバンスエッジ強調処理と1998年の販売開始以降ハードウエア,ソフトウエアの改良を進め,高画質化・低線量化に取り組んできた。今回,新たにノイズ低減処理ソフトウエアIntelligent NRを開発,2022年9月に提供を開始した。
従来のノイズ低減処理は,設計者の手動によるルールベース方式で設計され,除去したノイズ成分に信号の一部が含まれるケースがあるなど,ノイズ低減性能に限界があった。それに対しIntelligent NRは,教師データにキヤノンが長年にわたり蓄積してきたCXDIシリーズの臨床データベースを基に,独自のノイズシミュレーションを用いて,CXDIのノイズの特徴をニューラルネットワークに学習させている。それにより,鮮鋭度(MTF)を落とさず,高精度なノイズ除去が可能となり,従来のノイズ低減処理と比較して最大約50%のノイズ低減を実現した。
同院では,小黒 清技師長を中心に発売に先駆けてIntelligent NRの導入に向けた検討を行い,基礎検討を経て2022年3月に臨床利用を開始した。基礎検討に携わった淺野副技師長は,導入の決め手は何よりも低線量撮影の可能性への期待だったと話す。
「物理評価(MTF,NNPS)および人体ファントムを用いた基礎検討では,従来のノイズ低減処理画像とIntelligent NRを適用した画像に対して視覚評価を行った結果,当院の従来の撮影線量と比較して胸部で50%〔診断参考レベル(DRLs)0.3mGyの約1/4線量〕,腰椎で25%(同9mGyの約1/7線量)程度まで,線量を低減できる可能性があるという結論が得られました。Intelligent NRは,画像処理によって粒状性を改善し,画質を維持しつつ被ばく線量が低減できる可能性があります」

診断能の維持と低線量を両立したIntelligent NR

同院では現在,5室ある一般検査室のうちの1室にIntelligent NRを導入,基礎検討を行ったDRLs掲載の成人10部位〔胸部正面(100kV以上),胸部正面(100kV未満),腹部正面,頭部正面,頸椎正面,胸椎正面・側面,腰椎正面・側面,骨盤正面〕にはすべてIntelligent NRを適用し,同院の従来線量の50%,DRLsの約25%の線量で撮影している。
木村主任技師は,「当院は,毎月約7000人に一般X線撮影を行っていますが,導入以降7か月間で,5424例にIntelligent NRを活用しています。読影医からも,『胸部正面像では,ノイズの影響で視認性が低くなりがちだった心臓の血管陰影や気管分岐なども明瞭に表現され辺縁を追える,腰椎側面像などノイズが多い部位ではさらに改善効果が感じられる,ノイズ低減による淡い部分の消失もない』と評価されています」と述べる。
高度な画像処理を行うIntelligent NRだが,撮影ワークフローに対する影響は杞憂に終わった。Intelligent NRによるノイズ低減処理画像を,従来の処理同様の撮影後約2秒で表示でき,ほかの部屋とのワークフローと変わらず運用できているという。
Intelligent NRは現在,「CXDI-410C Wireless」と「CXDI-710C Wireless」,「CXDI-810C Wireless」で提供されている(オプション)。また,Intelligent NRはノイズ処理のレベル強度を10段階(1~10)で設定できる。同院で検証した物理データから,従来のノイズ低減処理とIntelligent NRのレベル3が同程度のnoise power spectrum(NPS)だと推測されるが,現在,同院ではノイズ低減効果の検証を慎重に進め,ノイズ低減効果以外の影響が確認できなかったことから,最大レベルの10に設定して使用している。瀬﨑技師は,臨床での現状のノイズ低減効果を評価しつつ,より強いレベル強度の開発にも期待を示す。同時に,Intelligent NRにより得られる粒状性の改善された画像を活かす,最適な処理パラメータをさらに検討していきたいと話す。

■Intelligent NR(INR)を適用した臨床画像

症例1:胸部正面(縦郭部)

a:従来線量(120kV,4.5mAs)従来NR_LV5
b:50%線量(120kV,2.25mAs)INR_LV10
c:50%線量(120kV,2.25mAs)None NR
a,bの比較:線量は50%だが,bの方が心臓と重なった血管陰影が見やすい。

 

症例2:腫瘤性陰影

a:従来NR+通常処理 b:従来NR+処理検討後 c:INR+処理検討後 d:INR+通常処理
a,dの比較では,dの方がコントラストが良く見やすい。cはINRに適した画像処理であることから,一番陰影が見やすい。

 

症例3:腰椎側面

a:従来線量(80kV,28mAs) / 従来NR_LV5 ESD : 5.1mGy DRLsの約1/2/EI 182
b:50%線量(80kV,14mAs) / INR_LV10 ESD : 2.6mGy DRLsの約1/4 /EI 97 aはノイズが多いが,bはノイズが少なく辺縁も追える。また,骨梁の見え方も失われていない

 

※Intelligent NRをINR,従来のノイズ低減処理を従来NRと表記

Intelligent NRにより拓かれた今後のビジョン

現在,DRLsの小児の3部位(5歳児胸部,1歳児胸部,幼児股関節)について,Intelligent NR適用に向けた基礎検討を行っている。さらに,婦人科領域では骨盤計測などへの適用を検討していきたいと木村主任技師は話す。
「小児は特定のがんに対し成人より放射線感受性が高く,検査を受ける生涯期間が長くなるため,放射線リスクが大きくなります。また,妊婦は体厚が大きく,胎児への被ばくを考慮する必要があります。加えて,骨盤計測は辺縁信号を目的としています。これまでの臨床応用での手応えから,線量をより低減したい領域で効果を発揮できるIntelligent NRに,大きな期待を寄せています」
また,健常者への低侵襲が望まれる胸部の健診などでの低線量化も有用ではないかという。
さらに,同院で期待を寄せているのが長尺撮影への適用だ。CXDI Control Software NEは,CXDIワイヤレスセンサを最大3枚まで専用架台にセットし,1回の照射で長尺撮影を行える“ワンショット長尺撮影機能”を搭載している。同院では,5室の一般撮影装置のうち2室が長尺撮影に対応し,全脊椎撮影などを行っている。
「当院は脊柱変形疾患の症例が多く,月に約300人撮影しています。10代の若い患者さんの割合が高く,特に小児に多い特発性側彎症は進行に応じて手術療法が選択肢になります。Intelligent NRにより低線量撮影が可能になれば,患者さんへの放射線リスクが小さくできます」(木村主任技師)
今後のIntelligent NRの可能性として,ワンクリックで目的に応じた強調画像の作成が可能な“アドバンスエッジ強調処理”や回診用撮影システムなどで対応可能になれば,手術室や救急撮影など一般撮影室以外での活用も視野に入り,大いに期待できると話す。

AI活用がもたらす可能性への期待

Intelligent NRは,ノイズ除去にAIが活用されているが,AI活用に対する期待はそれにとどまらない。淺野副技師長は,「患者さんに安心,安全な検査を提供するためには,操作ミスや撮影部位の取り違えをなくし,再撮影を減らすことが必要です。当院は,キヤノンメディカルシステムズ社製のX線撮影装置を使用しており,トラブル発生時には迅速に対応していただいています。今後は,CXDIによる撮影像だけに留まらず,X線撮影装置へのAI導入などによる新しい試みにより,さらなる安全面の向上が望まれます」と話す。
AIをはじめとする技術の進化は,すべて患者の利益につながっていく。

(2022年10月18日取材)

*記事内容はご経験や知見による,ご本人の意見や感想が含まれている場合があります。
*Intelligent NRはノイズ低減処理の設計段階でAI技術を用いており,本システム自体に自己学習機能は有しておりません。

一般的名称:X線平面検出器出力読取式デジタルラジオグラフ
販売名:デジタルラジオグラフィ CXDI-410C Wireless
認証番号:229ABBZX00049000
製造販売元:キヤノン株式会社

販売名:デジタルラジオグラフィ CXDI-710C Wireless
認証番号:229ABBZX00020000
製造販売元:キヤノン株式会社

販売名:デジタルラジオグラフィ CXDI-810C Wireless
認証番号:229ABBZX00029000
製造販売元:キヤノン株式会社

 

獨協医科大学病院

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TEL 0282-86-1111
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