セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)

2025年11月号

第48回日本呼吸器内視鏡学会学術集会ランチョンセミナー11 気管支鏡医が求める内視鏡透視室

〈講演1〉現状と理想の内視鏡透視室

丹羽  崇(神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科 喀血・肺循環・気管支鏡治療センター)

丹羽  崇

本講演では、各施設へのアンケートや自施設の事例紹介などを通じて、内視鏡透視室の現状と理想の内視鏡透視室について考察する。

内視鏡透視室の現状

今回、各施設の気管支鏡医に対し自施設の内視鏡透視室に関するアンケートを行い、13施設から回答を得た。

●Cアーム型装置の導入状況

呼吸器科専用の透視装置を有するのは13施設中1施設のみで、12施設(92%)は消化器科との共有であった(図1)。使用している装置はCアーム型のみが8施設(61%)、オーバーチューブ型のみが4施設(31%)、両方が1施設(8%)であった(図2)。
装置の操作は半数以上の施設で医師が行い(図3)、Cアーム型装置を導入ずみの全施設でCアームの角度振りを使用していた。
当施設で導入しているキヤノンメディカルシステムズ社製のCアームX線TVシステム「Ultimax-i」は、Cアーム可動範囲がLAO90°~RAO41°、CRA45°~CAU45°と広く、あらゆる角度から観察が可能である。例えば、右肺下葉底部(B8、B9)では、CアームをRAO41°に回転させ、放射線の入射角度に対し鉗子やクライオプローブが垂直になるようにすることで、胸膜接線方向が確認できる。

図1 透視装置は呼吸器科専用か? 共用か?

図1 透視装置は呼吸器科専用か? 共用か?

 

図2 使用している透視装置はCアーム型かオーバーチューブ型か?

図2 使用している透視装置はCアーム型かオーバーチューブ型か?

 

図3 透視装置を操作するのは医師か、診療放射線技師か?

図3 透視装置を操作するのは医師か、診療放射線技師か?

 

● 検査室内のレイアウト

検査室内のモニタは天吊りが多く(12施設、複数選択式)、そのうち約1/3が大画面モニタであった(図4)。モニタではX線透視像や内視鏡画像、CT画像などを確認し、バーチャルブロンコスコピー(VBS)や電子カルテなどを同時に観察できる施設もあった。
検査室の広さについては9施設(69%)が満足していたが、アンケート対象施設の大半で装置自体がコンパクトで省スペース性が高いUltimax-iを導入していることも要因の一つと考えられる。また、Cアーム型装置はオーバーチューブ/アンダーチューブがあり、アンダーチューブで検査可能なことを知っていると回答したのは8施設(62%)であった。

図4 検査室内のモニタはどのようなタイプか?(複数選択式)

図4 検査室内のモニタはどのようなタイプか?(複数選択式)

 

●被ばく低減への取り組み

近年、重視されている術者の被ばく低減対策では、防護用エプロンや防護用メガネ、個人線量計の着用などが挙げられた。気管支鏡検査はX線管に近接しがちなため防護用メガネやネックガードが必要であり、多くの施設で着用していた。
また、約半数の施設で透視時間の短縮や透視線量を変更するパルス透視、透視線量モードの活用などによって被ばく低減に取り組んでいた。さらに、病変やデバイスを強調するモードを搭載した装置を導入している施設では、全施設でそのモードを使用していた(図5)。当施設においても新画像処理条件「Accent」を使用している。

図5 X線透視の病変やデバイスを強調するモードを使用しているか?

図5 X線透視の病変やデバイスを強調するモードを使用しているか?

 

各施設のレイアウト紹介

ここで、各施設の事例をいくつか紹介する(図6〜10)。3面の天吊りモニタやコンソール上にモニタを配置し、防護板による被ばく低減に取り組んでいる施設(名古屋医療センター:図6)や、術者被ばく低減のために、Cアーム型装置をアンダーチューブで使用し、医師が遠隔で透視操作を行う施設(同愛記念病院:図7)があるほか、Cアーム型装置を壁際に配置して広いワークスペースを確保し、防護垂れで被ばく対策を行っている施設もある(神戸大学医学部附属病院:図8)。また、4面の天吊りモニタを使用したり(虎の門病院:図9)、がんの診断精度向上に重要な迅速細胞診(ROSE)用スペースを設ける(上尾中央総合病院:図10)など、施設ごとに特色が見られる。
演者が週1回勤務する倉敷中央病院は、天吊りモニタを採用することで、広いワークスペースを確保している(図11)。一方、当施設(神奈川県立循環器呼吸器病センター)では、以前の透視装置は壁際に設置していなかったため、検査室への患者の出入り動線である透視装置手前のスペースが狭く、物品の配置にも苦労していた。しかし、現在はコンパクトなUltimax-iを壁際に設置して導入したことによりスペースができ、クライオバイオプシーやアルゴンプラズマ
凝固法(APC)のユニットなどを設置した上でも広いワークスペースを確保している(図12)。

図6 事例1:名古屋医療センター放射線部

図6 事例1:名古屋医療センター放射線部

 

図7 事例2:同愛記念病院内視鏡センター

図7 事例2:同愛記念病院内視鏡センター

 

図8 事例3:神戸大学医学部附属病院内視鏡センター

図8 事例3:神戸大学医学部附属病院内視鏡センター

 

図9 事例4:虎の門病院内視鏡室

図9 事例4:虎の門病院内視鏡室

 

図10 事例5:上尾中央総合病院内視鏡室

図10 事例5:上尾中央総合病院内視鏡室

 

図11 事例6:倉敷中央病院内視鏡センター

図11 事例6:倉敷中央病院内視鏡センター

 

図12 当施設(神奈川県立循環器呼吸器病センター)の紹介 装置のコンパクトな奥行きと壁ピタ設置によって装置前に広いワークスペースを確保。Cアームの角度振りも活用している。

図12 当施設(神奈川県立循環器呼吸器病センター)の紹介
装置のコンパクトな奥行きと壁ピタ設置によって装置前に広いワークスペースを確保。Cアームの角度振りも活用している。

 

理想の内視鏡透視室とは

アンケートでは、内視鏡透視室の改善点として検査室の狭さの解消やCアーム型装置の導入、ワークスペースの拡充などの回答が寄せられた。また、検査室に対するこだわりや理想として、ROSE用スペースやモニタの設置、見やすいモニタ配置や電子カルテ端末、コーンビームCTなどの導入の希望などが挙げられた。
そこで、これらの回答も踏まえ、理想の内視鏡透視室について考察した(図13)。まず、操作室にカルテ記録や操作などを行うスペースを設け、検査室内にはCアーム型装置やコーンビームCT、寝台のほか、ロボット気管支鏡や全身麻酔装置をO2配管が動線を妨げない位置に配置する。また、壁際に物品棚を設置し、クライオバイオプシーやAPC、光線力学療法(PDT)の機器を常時取り出せるよう配置する。さらに、検査室内でROSEやアブレーション治療が行えることが理想である。

図13 理想の内視鏡透視室(Cアーム使用)

図13 理想の内視鏡透視室(Cアーム使用)

 

まとめ

アンケート結果から、他科との共用が多い中、Cアーム型装置を導入した施設が多いことが明らかになった。気管支鏡手技の拡大により、検査に必要なスペースは今後も拡大が見込まれる。透視装置更新を検討中の施設では、省スペース性や今後の発展性などを考慮して機器を選定し、検査室のデザインを検討してほしい。

*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。
*病変・疾病の記載は、医師による診断結果に基づきます。装置やソフトウェアが判断するものではありません。

一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名:多目的デジタルX線TVシステム Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000

 

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