セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)
2026年10月号
第111回日本消化器内視鏡学会総会 ランチョンセミナー18 胆膵内視鏡診断・治療を究める─Ultimax-iをどう上手に使いこなすか Part2─
〈講演2〉被ばくに配慮した胆膵内視鏡診療 −ダブルバルーンERCPを中心に−
菅野 敦(自治医科大学内科学講座 消化器内科部門)
自治医科大学消化器内科部門では、キヤノンのCアームX線TVシステム「Ultimax-i」を活用し、ダブルバルーン内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を積極的に行っている。ダブルバルーンERCP(DB-ERCP)は適切なドレナージ方針の検討に有用だが、通常のERCPと比較して手技時間が長いために、被ばく対策が重要である。本講演では、Ultimax-i運用下での被ばく対策やDB-ERCPの有用性について紹介したい。
Ultimax-i導入までの経緯と放射線防護の取り組み
当大学では、現在、胆膵チーム8名で胆膵内診療を行っている。年間の施行数は、超音波内視鏡(EUS)が約1200件、ERCPが約800〜850件に上るため、ERCP用として約3年前にUltimax-iを導入した。Ultimax-iの最大の特長はCアームであり、寝たきりの患者でもCアーム操作により腹臥位と同様の画角で透視検査が行える。また、当装置をアンダーチューブで運用した場合、術者の体や甲状腺、眼の水晶体などへの散乱線による被ばく線量の低減が図れる。
演者が当大学に異動した2020年4月時点では、旧装置をオーバーチューブかつ遮蔽防護材を使用せずに運用していた。2021年4月に施行された「改正電離放射線障害防止規則」では、眼の水晶体に受ける等価線量の限度が「5年間につき100mSVおよび1年間につき50mSV」に引き下げられたが、当大学に異動後の半年間での演者の水晶体被ばく線量は12.4mSVで、5年に換算すると124mSvになる。実際には、半年後にアンダーチューブの運用に変更し、被ばく線量は低減したが、検査件数の増加に伴い頸部の被ばく線量が増加したことなどもあり、新装置への更新を要望しUltimax-i導入につながった。
また、JDDW2019 キヤノンメディカルシステムズ共催ランチョンセミナーの報告では、防護垂れの追加で眼の水晶体の被ばく線量が68%低減することが示されている1)ように、放射線防護では防護垂れが非常に重要な役割を果たしており、当大学でも現在は防護垂れと遮蔽板を設置している(図1)。加えて、Ultimax-iはパルス透視や透視線量モードなどの被ばく線量低減に有用な機能を搭載しており、Ultimax-i導入後の眼の水晶体や皮膚の被ばく線量低減につながっている(図2)。
図1 当大学のERCPの様子
図2 当大学の被ばく線量測定
ERCP施行時の線量測定
図3は当大学のERCP施行時のレイアウトである。Ultimax-iはアンダーチューブ運用で、患者の頭側と足側に看護師を各1名、術者の後ろに介助者を配置している。ERCP施行時の実際の照射線量を電離箱式サーベイメータを用いて測定した結果、透視台(テーブル)上の遮蔽板内側の1410μSV/hrに対し、外側は25.5μSV/hrと98.2%低減した(図4)。また、テーブル下の防護垂れ内側は1530μSV/hr、外側は73.1μSV/hrで、防護垂れにより95.3%低減している。
患者頭側にも防護板を設置しているため、患者頭側の看護師の被ばく線量はテーブル上ではテーブル下より75%低減していた。また、患者足側の介助者はテーブルから距離があるにもかかわらず12.5μSV/hrだったのに対し、介助者は0.5μSV/hrであり、術者が防護板の役目を果たしていると考えられる。
図3 当大学のERCP施行時のレイアウト
図4 当大学のERCP施行時の線量測定結果
DB-ERCPの有用性と被ばく対策
当科の山本博徳前教授がダブルバルーンの開発者であることもあり、われわれは年間100〜120件前後のDB-ERCPを行っている。また、DB-ERCPによる胆管結石除去や結石再発の因子をまとめた論文を発表、Digestive Endoscopy(DEN)学会賞を受賞している2)。
当大学のUltimax-i導入後のERCPとDB-ERCPの入射線量(2026年1月~3月実測値)は、入射線量合計、面積あたり入射線量、照射時間合計のいずれもDB-ERCPで多く、DB-ERCP施行時は特に被ばくに注意すべきである。また当大学では、DB-ERCP時にオーバーチューブを保持する介助者を配置している。フラットパネルを十分に下げ、遮蔽板を使用することで被ばく線量は低減するが、放射線防護の基本理念である「ALARAの原則」に則り、「被ばく低減の3原則」(時間、距離、遮蔽)に従って被ばく線量の低減を図ることが重要である。そこで、目的部位に到達後はオーバーチューブを固定する装置(FKホルダー、ケイエスエム社)を使用している(図5)。これにより、到達後は介助者が一時透視台から離れることができ、介助者の被ばく低減につながる。
図5 当院で使用するオーバーチューブ固定装置
バルーン内視鏡からEUS-BDへの移行
しかし、狭窄例などでカニュレーション処置が困難なケースも多く、深部まで挿入したものの、浸潤が見られ乳頭に到達できなかった症例も経験している。
当大学での術後再建腸管悪性胆道閉塞に対するDB-ERCPによる胆道ドレナージ症例では、目的部位まで到達した症例は55/66例(83.3%)で、そのうち胆管カニュレーションは47/55例(85.5%)、ステント留置は45/47例(95.7%)で、手技成功率は45/66例(68.2%)にとどまった。また、術後腸管の悪性胆囊狭窄症例の後ろ向きの比較では、カニュレーション成功率はシングルバルーンERCP(SB-ERCP)が28/41例(68.3%)、超音波内視鏡下肝管胃吻合術(EUS-HGS)は29/29例(100%)で、Procedure timeやtime to RBO(TRBO)でもEUS-HGSの優位性が示された3)。ほかにも、カニュレーション成功率について超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD)で30/32例(94%)、バルーン内視鏡ERCPが83/118例(70%)とする報告4)や、EUS-BD42/44例(95%)、バルーン内視鏡ERCP40/54例(74%)とする多施設前向き観察研究の報告5)がある。後者の2報告ではTRBOの有意差はないものの、いずれもカニュレーション成功率やProcedure timeでEUS-BDの優位性が示されていることから、近年はEUS-BDが主流になりつつあると考えられる。
しかし、当大学では局所を観察後に適切なドレナージを行うため、バルーンERCP施行後にEUS-BDを行っている。
症例提示
当大学のバルーン内視鏡症例を紹介する。
●症例1:胆管がん症例(図6)
症例1は、幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)10年後に再発した胆管がん症例(71歳、女性)である。局所観察により状態の悪化が想定されたため、カニュレーション後、adenocarcinomaと診断。擦過細胞診でClass5と診断され、ステント留置や抜去が行えた。
図6 症例1:胆管がん症例(71歳、女性)
●症例2:胆囊管がん術後のR-Y再建症例(図7)
症例2は、胆囊管がん術後のR-Y再建症例(79歳、男性)で、胆管空腸吻合部に再発した症例である。DB-ERCPを行ったところ、胆管空腸吻合部に狭窄が見られ、盲端側でも将来的な狭窄の可能性が示唆された。EUS-BDに移行後、ガイドワイヤを挿入しITステントを1本造設した。しかし、2週間後に閉塞し胆管炎が生じたため、ガイドワイヤを挿入してITステントを抜去し、unevenカテーテルで橋渡しを行いY脚側にガイドワイヤを挿入、アンカバードステントをpartial-stent-in-stent法で留置した。狭窄部の診断の重要性を確信した一例である。
図7 症例2:胆囊管がん術後のR-Y再建症例(79歳、男性)
まとめ
Ultimax-iの利点を臨床現場で最大限に利用することが重要である。Ultimax-iはアンダーチューブにより被ばく線量の低減が可能だが、さらなる被ばく低減を図るために、防護垂れや遮蔽板、プロテクタ、防護メガネなどの使用は必須である。特にDB-ERCPでは、オーバーチューブ固定装置などを用いて被ばく予防を行うことが重要である。また、DB-ERCPで狭窄部の確認後にEUS-HGSに移行することも有用である。
●参考文献
1)松原孝祐:ERCP時の被ばく低減をめざして─内視鏡医が知って得するX線防護─~放射線防護の専門家の立場から~. JDDW2019 KOBE.
2)Yokoyama, K., et al. : Dig. Endosc., 36(11): 1269-1279, 2024.
3)Shibuki, T., et al. : Endosc. Ultrasound., 14(4): 196-204, 2025.
4)Hakuta, R., et al. : Surg. Endsc., 38(12): 7269-7277, 2024.
5)Itonaga, M., et al. : Dig. Endosc., 37(11): 1179-1189, 2025.
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一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名:多目的デジタルX線TVシステム Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000
製造販売元:キヤノン株式会社
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