セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)
2026年10月号
第111回日本消化器内視鏡学会総会コーヒーブレイクセミナー7 市中病院の活力─Cアーム透視装置をつかいこなす─
〈講演1〉「回す!見える!!治せる!!!」Cアームを活用した市中病院での社会貢献
渡邉 健雄(同愛記念病院 消化器内科)
同愛記念病院は、2023年4月に内視鏡室のリフォームに合わせてキヤノンのCアームX線TVシステム「Ultimax-i」を導入した。それに伴い、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)検査数は2022年の328件から、2025年には616件まで大幅に増加している。本講演では、市中病院におけるCアーム装置の活用について、症例を交えて紹介する。
市中病院におけるCアーム活用例
当院は360床(うち療養病床30床)の二次救急病院である。救急搬送からの入院は年間1400件だが、救急部はなく各科が持ち回りで救急対応を行っており、演者も救急外来を担当し、注射オーダーも自ら行っている。消化器内科に所属する消化器内科医は7名、専攻医1名で、1日平均在院患者数は約25人である。
当院では、2023年4月に新たに増設した透視室内にUltimax-iを導入した。内視鏡室内に透視室を増設したためスペースが限られていたが、Ultimax-iは省スペース設計であったため、動線や機器の配置などを考慮した位置に設置できた。
以下に、同装置を活用したERCP症例をいくつか紹介する。
●症例1:乳頭部がん症例(図1)
本症例は、閉塞している下部胆管と椎体が重なり、確認が困難であった症例である。従来、このようなケースでは腰部拳上などで対応していたが、Cアームを左右方向回転(LAO/RAO)させることで胆管と椎体の重なりを解消し、閉塞部位が明瞭に描出できた症例である。Cアームを活用することで、安全に金属ステントを留置できた。
図1 症例1:乳頭部がん症例
●症例2:中部胆管閉塞症例(図2)
本症例は、CTやMR画像で閉塞が確認されたものの、閉塞部が内視鏡スコープの裏に位置しており、透視画像で確認ができなかった。しかし、Cアームを頭尾方向回転(CRA/CAU)させることで、内視鏡スコープの形を変えることなく、胆管の閉塞部を確認でき、操作性の良いまま生検・ステント留置を安全に施行できた。
このように、症例ごとに回転方向を検討しつつ運用している。
図2 症例2:中部胆管閉塞症例
●症例3:胆囊摘出後の閉塞性胆管症例(図3)
他院で胆囊摘出術後、閉塞性胆管が生じて当院に紹介された症例である。ERCP施行後の胆管造影像では、内視鏡スコープに重なった位置より先に造影剤が進まず、完全閉塞をしていた。Cアームを頭尾方向回転(CRA/CAU)させることで、結紮による閉塞部位を視認できたことにより、ガイドワイヤで閉塞を突破、ステント留置をなし得た。
図3 症例3:胆囊摘出後の閉塞性胆管症例
●症例4:総胆管結石除去例(図4)
本症例は、通常であればスコープ裏に隠れる結石の大きさや数をCアーム回転により明瞭に確認でき、嵌頓することなく大きな結石を安全に除去した。
図4 症例4:総胆管結石除去例
●症例5:胆囊炎症例(図5)
本症例は胆囊炎症例で、造影画像でも胆囊管分岐部は不明瞭であり、ガイドワイヤによる探索を試みたが、スコープの真裏に位置していたため確認できなかった。しかしながら、Cアームを頭尾方向回転(CRA/CAU)させ、胆囊管分岐部がスコープと離れて見やすくなり、安全にステント留置が成功した。
また、時折ステント留置部を総胆管と考えていたものが、実際には胆囊管であったり、透視画像では胆囊管と総胆管が完全に重なり、分岐が確認できない症例もある。これらのケースでは、Cアームを回転させることで安全かつ正確にステント留置部や胆囊管分岐部が確認できる。
図5 症例5:胆囊炎症例
Cアーム導入以降のERCPドレナージ症例の実績
Cアーム導入以降、当院では2023年6月〜2025年5月の2年間で胆囊炎ERCPドレナージを140例行い、1回目のドレナージ成功例は121/140例(成功率86.4%)であった。1回目で不成功であった19例中8例は2、3日後に再施行し7例で成功、2回目までの成功率は91.4%であった。
Cアーム導入前後の比較では、ERCP件数は導入前(2021年1月〜2023年3月)は47件(年間平均21件)から、導入後(2023年6月〜2025年5月)は140件(同70件)に大幅に増加した。また、胆囊管の視認性が向上したことで、ERCPドレナージ成功率は66.0%から91.4%に上昇した(胆囊炎重症度による成功率の差はなかった)。なお、手技時間は79.4分から65.5分に短縮した。
ドレナージ不成功例は、導入前は16/47例(34.0%)で、経皮的経肝胆囊吸引穿刺法(PTGBA)/経皮的経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)が5例(10.6%)、緊急の胆囊摘出術に至った症例は3例(6.4%)であった。一方、導入後は不成功例12/140例(8.6%)のうちPTGBA/PTGBDは4例(2.9%)、胆囊摘出術は1例(0.7%)と大幅に減少した。
これらの結果から、Cアーム導入により患者の生活や動きを損なうことなく治療できる確率が向上し、緊急手術によるリスクを回避することにも寄与していると言える。
そのほかのCアーム活用例
超音波内視鏡下肝胃吻合術(EUS-HGS)施行例では、穿刺した胆管枝とほかの胆管枝や総胆管が重なり、ガイドワイヤの操作が難しい場合がある。Cアームを回転させて撮影方向を変えることで、重なった胆管枝を1本ずつ明瞭に描出しやすくなり、ガイドワイヤの走行を確認しながら、的確かつ安全に操作することができる。また、屈曲部の角度が一見急峻に見える場合も、Cアームを回転させることで、実際の角度と同様の見え方にしてステントを留置できる。さらに、骨折などにより側臥位しか保持できない場合は、照射部位が患者の腕と重なり、確認が難しいケースがある。しかし、腹臥位と変わらぬ画角にCアームを回転させることが可能なため、処置を容易に実施できる。
また、ステント迷入時にステント下端がスコープの真裏に重なった場合、通常はスコープをプッシュし、処置を検討する。しかし、Cアームを回転することで、スコープを無理にプッシュせずともステント下端が見やすくなり、処置が容易になる。
なお、Ultimax-iはコンパクトな装置設計により、スタッフのワークスペースを広く確保することが可能なため、体動が著しい患者を看護師がサポートしやすい。また、当院では超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)などでも透視室を使用する場合があるが、スペースが確保しやすく、検査室を十分に活用できる。
まとめ
当院では、Cアーム装置の導入により胆囊炎の治療成功率が大幅に向上した。Cアームを活用することで、視認が困難であった部位の視認性が向上し、手技の成功率が高まった。その結果、治療成績の向上につながるとともに、処置をより積極的に実施できるようになり、受入患者数・処置件数が増加し、病院経営にも大きく貢献した。その結果、胆道鏡の購入やEUS機器の更新など、Ultimax-iの導入を起点に、さらなる設備投資へとつながる好循環が生まれている。さらに、患者の生活の維持や安全を守る意味でもCアームは有用であり、これは市中病院から始める社会貢献だと考えている(図6)。
図6 Cアーム導入の意義と症例数の推移
*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。
一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名:多目的デジタルX線TVシステム Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000
製造販売元:キヤノン株式会社
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