セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)

2026年10月号

第111回日本消化器内視鏡学会総会コーヒーブレイクセミナー7 市中病院の活力─Cアーム透視装置をつかいこなす─

〈講演2〉「高画質」と「低被曝」を当たり前に両立する市中病院でCアームを使いこなす Ultimax-iチーム戦略

藤田 祐司(NTT東日本関東病院 肝胆膵内科)

藤田 祐司(NTT東日本関東病院 肝胆膵内科)

NTT東日本関東病院では、キヤノンのCアームX線TVシステム「Ultimax-i」を用いて年間616例(2025年)の内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を行っている。一般に、Cアーム装置は胆石などの良性疾患が多い市中病院と比べ、大学病院で多い難症例や悪性腫瘍により適していると考えられているが、高画質・低被ばくを実現するCアーム装置は市中病院にとってもメリットが大きい。本講演では、当院での経験を基に市中病院でのCアーム装置の有用性について紹介する。

なぜCアームを選択するのか

当院は、一般病棟が約500床の市中病院と大学病院の中間に位置付けられる施設である。当院の消化器内科は肝胆膵内科と消化管内科に分かれ、そのうち肝胆膵内科の胆膵チームは5名の医師が所属し、内視鏡処置を年間1180件行っている。ERCPのほか、観察超音波内視鏡検査(EUS)を透視室で行うことも多く、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)やInterventional EUS、気管支鏡や経皮処置、中心静脈カテーテル(CVC)挿入なども行われている。
当院は、Ultimax-iのほかにオーバーテーブルタイプのデジタルX線TVシステム「Astorex i9」(キヤノン社)を導入しているが、ほぼすべての胆膵内視鏡処置をUltimax-iで行っている。その理由の一つが360°のアクセシビリティである。Ultimax-iは、寝台背後に最大128cmのスペースを確保できるほか、患者頭側のスペースを活用し、看護師による補助を行っている(図1)。
また、Ultimax-iはCアームの特性を利用し、最適な角度で検査可能である。当院が経験した症例では、十二指腸下行部が狭窄し確認が困難であったものの、Cアームを回転することで狭窄部を評価、ステントを安全に留置できた。

図1 Ultimax-iのアクセシビリティ

図1 Ultimax-iのアクセシビリティ

 

Ultimax-iの特徴

Ultimax-iは、検査の種類や目的に応じてオーバーチューブ/アンダーチューブの切り替えが可能である。また、Cアームの可動域が広く、あらゆる角度から観察できる。さらに、Ultimax-iに新たに搭載された高画質・低線量検査コンセプト「octave SP」は、独自のリアルタイム画像処理技術などにより、照射線量を従来より約65%低減し、低被ばくで高画質な画像を提供する。
加えて、Ultimax-iは一般的なCアーム装置よりコンパクト設計で、壁につけて設置が可能である。当院では、移動性を重視してあえて壁から40cm離して設置しているが、それでも手前側に約2mの作業スペースを確保でき、ワゴンなどを設置しても狭さを感じることはない(図2)。

図2 Ultimax-iの設置性

図2 Ultimax-iの設置性

 

ERCPにおける被ばく管理

医療従事者の被ばくは「放射線障害の防止に関する法令」において、「5年間で100mSv、かついかなる1年においても50mSvを超えないようにする」とされている。また、被ばく線量が100mSv/年超でがんリスクが高くなり、1mSv以下では累積しても生涯100mSv未満で、自然放射線レベルより低いとされている。ERCP施行時において、患者被ばくと同等では医療従事者はすぐに限度を超過するため対策が必要である。

「放射線防護の三原則」と「日本の診断参考レベル」

医療従事者の被ばくの主な原因は、患者に衝突して広がった散乱線によるもので、散乱線の特徴上、オーバーチューブでは医療従事者の上半身を中心に被ばく線量が多い1)。そのため、「放射線防護の三原則」に則り、透視時間の最小化(時間)、線源からの物理的離隔(距離)、鉛による散乱線のブロック(遮蔽)などの対策が必要となる。
医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)の「日本の診断参考レベル(2025年版)」(Japan DRLs2025)」では、2020年版(DRLs2020)では別個に扱われていたERCPの「診断」と「治療」が統合され、新たな基準値(DRLs値)として入射表面空気カーマ(Ka、r)110mGy、透視時間15分、撮影回数13回などのベンチマークが公表された。入射表面空気カーマはDRLs2020より大幅に低下しており、これには透視装置の進歩も影響していると考えられる。

被ばく低減の取り組み

当院では、透視室の床面から高さ50cm、100cm、150cmで線量を測定してヒートマップを作成し、それを参考にポジショニングを検討している(図3)。また、個人用防護具の使用の徹底も図っている。個人用防護具の定量的低減効果については、遮蔽率・低減効果が鉛入りエプロン(体幹部)で90%以上、放射線防護メガネは側面レンズの有無により50〜90%で、透視台に設置する追加鉛防護シールドや防護クロス、防護垂れの被ばく線量低減効果も示されており2)〜4)、今後のERCPには必須である。そのほかに、絞りの活用により術者の被ばく線量が有意に低下し、かつ患者被ばくも30〜40%低下するという報告もあり、乳頭カニュレーション時などに積極的に活用することも有用である5)。
また、Ultimax-iは、透視線量モードをNormalモード(標準の線量)、Midモード(通常の50%の線量)、Low(通常の35%の線量)の3段階に調節可能であり、当院ではLowを中心に使用している。低線量パルス透視を通常設定と比較したランダム化比較試験(RCT)でも、透視時間や手技時間に差はないという結果が報告されており6)、低線量でも問題はないと言える。しかし、低線量でも視認性が低ければ手技時間が長くなるため、高画質・低線量のUltimax-iが高い効果を発揮する。
さらに、ERCP術者に対する被ばく低減技術に関する教育が、術者の被ばく線量の低減に有効であることも報告されている7)。

図3 当院透視室のヒートマップ(散乱線分布)

図3 当院透視室のヒートマップ(散乱線分布)

 

被ばく低減のための当院の現場マネジメント

当院では、透視パルスレート7.5fps、Lowモードを標準プロトコールとしている。これにより、Normalモードの連続透視と比べ9%、さらにoctave SPにより3.15%の被ばく線量の低減を実現している(図4)。ただし、視認しづらいデバイスなどを扱う際は、一時的に線量を調整している。例えば、乳頭では7.5fpsで容易に確認できても、体格の大きい患者の肝門部などでは視認が困難な場合があり、一時的に15fpsに変更することでワイヤの動きが確認でき、胆管に挿管できた。
また、鉛カーテンは被ばく防止に有用だが、着脱に手間がかかるというデメリットがあった。そこで、一般の鉛エプロンを養生テープで透視台に貼り付け、さらにアンギオで使用する手台に鉄板を入れ、鉛エプロンをつけることで鉛カーテンの代用として活用している。
これらの工夫もあり、当院では透視装置更新前後での1か月あたりの被ばく線量(平均値)は実効線量が0.271mSvから0.167mSv、水晶体線量が1.022mSvから0.566mSv、皮膚線量が1.351mSvから0.747mSvに低減した(図5)。年間では約2mSvとなるが、透視パルスレートの調整などでさらなる低減が可能と思われる。
なお、当院のERCP被ばく線量は21.6mGy、透視時間は7.1分(いずれも中央値)で、DRLs 2025と比較して被ばく線量は約1/5、透視時間は約半分となった。一方、508.7mGyという高線量の症例もあり、今後のさらなる低減が期待される。
また、透視室内で被ばく線量が低い位置にスタッフを配置している(図6)。特に看護師が補助するポジションは術者の1/3程度の被ばく線量であり、加えて看護師はローテーションして検査を担当しており、被ばく線量はさらに低減されている。その結果、看護師が室内に安全に常駐可能となったことでデバイスの受け渡しがスムーズになり、患者モニタリングや体動管理・体位補助、急変時の対応などが可能になっている。

図4 当院の標準プロトコールによる被ばく線量の低減

図4 当院の標準プロトコールによる被ばく線量の低減

 

図5 透視装置更新前後での被ばく記録(実効線量)

図5 透視装置更新前後での被ばく記録(実効線量)

 

図6 当院透視室のヒートマップとスタッフ配置

図6 当院透視室のヒートマップとスタッフ配置

 

まとめ

Ultimax-iには、低被ばく環境下での安全で短時間、かつ高成功率な検査が受けられるという患者側のメリット、アンダーチューブ方式と防護垂れ活用による水晶体防護や疲労軽減という術者側のメリット、多目的Cアームによる稼働率向上やコストの最適化という市中病院全体のメリットがある。これらにより、Ultimax-iはチーム力を最大化する武器であると言える。

●参考文献
1)Hizukuri, K., et al. : Radiol. Phys. Technol., 17(1), 288-296, 2024.
2)Dumonceau, J.M., et al. : Endoscopy, 44 : 408-424, 2012.
3)Ikezawa, K., et al. : Sci. Rep., 13(1): 7824, 2023.
4)木曽まり子, 他 : 胆道, 28(1): 59-65, 2014.
5)Seung, W.B., et al. : Korean J. Pain, 26(2) : 148-153, 2013.
6)Ali, O., et al. : Endosc. Int. Open., 12(4) : E554-E560, 2024.
7)Barakat, M.T., et al. : Clin. Gastroenterol. Hepatol., 16(4): 550-557, 2019.

一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名;多目的デジタルX線TVシステム Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000
製造販売元:キヤノン株式会社

 

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