技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2015年12月号

Nuclear Medicine Today 2015 ハードウエアの最新技術紹介

Large Bore TOF PET-CTシステム「Celesteion」の時間分解能向上技術とその効果

2014年4月に販売を開始したLarge Bore TOF PET-CTシステム「Celesteion(セレスティオン)」は,大きいガントリ開口径とFOV,そして高い性能を持ったTime-of-Flight(以下,TOF)機能が特長である。本稿では,450ピコ秒以下のTOF時間分解能を達成したCelesteionの技術とその効果について紹介する。

■TOF

PET装置は陽電子と電子の対消滅によって生じた2つの消滅放射線を検出し,それぞれの入射点を結ぶ直線上のどこかに消滅点があると判断する。これに加えてTOF機能では検出の時間差を計測することで,消滅点をある程度の範囲まで絞り込むことができる(図1)。
この時間差計測の精度を表す指標がTOF時間分解能である。例えば,TOF時間分解能が450ピコ秒の装置では,消滅点の位置を約6.7cmの範囲まで限定できる。TOF機能で消滅点の位置を限定することは,感度向上と同等であることが知られており,その効果は時間分解能に反比例して大きくなる1),2)

図1 TOF機能の概念図

図1 TOF機能の概念図

 

■TOF時間分解能向上技術

このようなTOF機能のメリットを生かすために,高い時間分解能を実現する独自のPET検出器を開発した。その特徴の一つが光電子増倍管(以下,PMT)の配置である。従来の製品である「Aquiduo」では同じ大きさのPMTを配列しているのに対して,Celesteionでは2種類の大きさの異なるPMTを使用している。これによって,シンチレータ内で発生した可視光をより効率的に電気信号に変換することができる(図2)。
時間差測定の精度は,検出器から出力される電気信号のゆらぎに大きく依存するため,効率的な変換によってゆらぎを抑制することで,高いTOF時間分解能を実現することが可能となった。

図2 PMTの配列

図2 PMTの配列

 

■高いTOF時間分解能の効果

TOF機能による感度向上効果をファントム実験で確認したデータを図3に示す。収集時間が40%減少しても,10mmホット球()はTOF機能を用いた画像でより明瞭に描出されており,TOF機能による感度向上効果を確認できる。
また,臨床例の比較では,TOF機能によって被検者の体格による画質の低下が抑制され,より均質な画質となることが確認されている。一般に被検者の体格が大きくなるとPETの画質は低下するが,TOF機能の効果は対象物の大きさに比例して大きくなるために,TOF機能によって画質変化が抑制されると考えられる。
このように,Celesteionでは独自技術によって高いTOF時間分解能を実現することで,高画質のPET画像を安定して得ることが可能である。

図3 TOF機能による感度向上効果

図3 TOF機能による感度向上効果

 

●参考文献
1)Budinger, T.F., et al. : Time-of-Flight Positron Emission Tomography ; Status Relative to Conventional PET. J. Nucl. Med., 24, 73〜78,
1983.
2)Karp, J.S., et al. : Benefit of Time-of-Flight in PET ; Experimental and Clinical Results. J. Nucl. Med., 49, 462〜470, 2008.

 

●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ(株)
広報室
TEL 0287-26-5100
https://jp.medical.canon/

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