技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2016年4月号

Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

クロスモダリティワークステーション「Vitrea」の腹部領域での活用

大渕  新(グローバルHII事業部)

近年のモダリティの進歩,院内IT環境の変化に伴い,各診療科の診断においてワークステーションによる解析を必要とする場面が増加している。それに伴いワークステーションには診療科,モダリティの垣根を越えた横断的な利用が求められている。
本稿では,CT画像の解析機能に加え,Angio,MRIの各種解析,管理機能を新たに搭載し,クロスモダリティワークステーションとして生まれ変わった「Vitreaバージョン7」について紹介する。

■Vitreaの特長

Vitreaは全世界で5000台以上の導入実績があり,2D/3Dビューワなど基本機能から,4D解析,各種定量化解析など,さまざまな臨床用途に応じた解析機能を搭載している。
Vitreaのプラットフォームは,ユニバーサルプラットフォーム構造を採用しており,東芝メディカルシステムズで開発されたアプリケーションのほか,国内外で高い評価を持つパートナーベンダーのアプリケーションを短い期間で搭載することが可能となっている(図1)。このプラットフォームの特性を生かし,東芝メディカルシステムズ,パートナーベンダーそれぞれの先進的アプリケーションを素早く融合することで,常に最新,最先端の画像解析アプリケーションを臨床現場に届けられることも,Vitreaの大きなアドバンテージと言える。

図1 多様な技術の融合:Vitreaプラットフォーム

図1 多様な技術の融合:Vitreaプラットフォーム

 

また,Vitreaの各種アプリケーションは研究,開発段階から東芝メディカルシステムズの各種撮影装置と製品コンセプトを共有することで,撮影から解析,配信まで一貫した高いユーザビリティと親和性をユーザーに提供している。
さらに,MR画像の解析においては,2015年10月に当社グループに参入したOlea Medical社のアプリケーションが搭載されたことも,Vitreaのクロスモダリティ性を大きく飛躍させた要因と言える。Olea Medical社の解析アプリケーションはパーフュージョンや各種マッピングなどMR画像の定量的解析に定評があり,欧米を中心とした臨床施設,研究施設で広く利用されている。また,国内外で多くの先進的研究施設とパートナー関係を構築しており,それら各施設から多くのクリニカルエビデンスが生まれていることも,これらアプリケーションの信頼性を高めている。VitreaのMRI向け解析には,“ワークフロー”と呼ばれる操作フローをナビゲートする機能が搭載されている。これは,ユーザーが対象となる検査画像とワークフローを選択するだけで,その後はアプリケーションがその検査画像の特性に該当する各種画像解析を順に起動,実行し,最終的な総合結果まで導いてくれる機能である。さらにデータ選択操作においても,過去にユーザーによって選択されたデータと各種解析機能の対応をアプリケーションが自動的に学習する機能が備わっており,ユーザーは初回の解析実行時にデータ選択を行うだけで,その後の解析ではその学習結果を基に各解析機能に該当するデータシリーズがアプリケーションによって自動的に選択される。この学習機能により,大量にあるMR画像のシリーズの中から該当するデータを特定する煩わしさ,データの誤選択を軽減することが可能となっている。
Vitreaのラインアップとしては,スタンドアロン型の「Standard」と,同時に3人のユーザーで利用可能な「Extend」の2機種が展開されており,さまざまな医療施設の利用シーンに合わせて運用することが可能となっている。
先述したように,Vitreaには放射線,呼吸器,循環器,脳神経,乳腺,消化器の領域においてAngio,CT,MRIに対応するクロスモダリティのアプリケーションを幅広く搭載している。また,画像解析以外にもCT線量マネジメント,CTプロトコル共有,稼働状況モニタリングなどの各種マネジメント機能も充実している。
以下に,各モダリティにおける腹部領域アプリケーションのラインアップの一部を紹介する。

1.CT

1)体脂肪面積計測(図2
CTで撮影された腹部単純画像を用いて皮下および内臓脂肪を自動計測するアプリケーション。ワンクリックで全脂肪面積,皮下脂肪面積,内臓脂肪面積,腹囲を計測し,肥満度,メタボリックシンドロームの判定が可能である。

図2 体脂肪面積計測解析画面

図2 体脂肪面積計測解析画面

 

2)ボディパーフュージョン(図3
体幹部の血流解析を行うアプリケーション。“Single/Dual input Maximum Slope”“Patlak Plot”の解析アルゴリズムが使用可能で,体動補正機能を搭載し,フュージョン画像やtime density curve(TDC)画像を出力可能である。

図3 ボディパーフュージョン解析画面

図3 ボディパーフュージョン解析画面

 

3)大腸解析(ザイオソフト:図4
国内での販売実績が高いザイオソフト社とのコラボレーション。virtual gross pathology(VGP)表示や2体位観察など,解析からレポートまでの一連の操作がVitrea上で可能となる。

図4 大腸解析(ザイオソフト)解析画面

図4 大腸解析(ザイオソフト)解析画面

 

4)CT線量マネジメント(図5
CTから得られる線量情報(CTDIおよびDLP)を指定した条件に従い分析し,グラフ表示する。あらかじめ定義した閾値を超える線量値や検査時間,装置ごと/操作者ごとの検査履歴などの確認が行える。また,分析結果をPDF形式のレポートやCSV形式のファイルとして出力可能である。

図5 CT線量マネジメント画面

図5 CT線量マネジメント画面

 

2.X線

1)DTS線量情報管理(図6
当社のAngioシステム「Infinix Celeve-i」には,仮想患者モデル上に入射皮膚線量をカラーマップとして参考表示する“DoseRite DTS(Dose Tracking System)”を有する。DTS線量情報管理は,DoseRite DTSの結果を管理する機能である。
同一患者の過去検査のDTS結果を積算表示することが可能で,術後の被ばく管理,次回検査の計画に有効利用できる。

図6 DTS線量情報管理画面

図6 DTS線量情報管理画面

 

3.MRI

1)MR Metabolic解析(図7
water fat separation(WFS)法により撮像された脂肪画像,水画像を用いてfat fraction map(FF)を作成し,肝臓の脂肪沈着の定量化が可能となる。これにより,がんの組織性状や肝機能障害,肥満の精査を行うことができる。

図7 MR Metabolic解析画面

図7 MR Metabolic解析画面

 

2)Relaxometry
マルチエコー収集のデータからT2(R2)マップ,T1(R1)マップ,T2(R2)マップを計算するアプリケーション。このアプリケーションにより肝臓組織内の鉄沈着分布の評価が可能となる。

3)DCE Permeability(図8
ダイナミック画像を用いたwash in,wash out,AUCなどの定性的なマッピングに加え,定量的なVe,Vp,Kep,Ktransを用いることにより,組織内情報の詳細な診断を可能とする。結果は,前立腺読影の標準化手法である“Prostate Imaging Reporting and Data System(PI-RADS)”によるレポーティングが可能である。

図8 DCE Permeability解析画面

図8 DCE Permeability解析画面

 

以上,クロスモダリティワークステーションとして生まれ変わったVitreaの概要を紹介した。今後はPET,SPECT,超音波のアプリケーションも順次搭載予定であり,ますます東芝メディカルシステムズ装置の可能性を広げ,診断,病院運営を支援していく。

*Infinix Celeve,DoseRiteは東芝メディカルシステムズ株式会社の商標です。

 

●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ(株)
広報室
TEL 0287-26-5100
https://jp.medical.canon/

TOP