技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2019年11月号

放射線治療の技術動向

エレクタ社製「Versa HD」の定位照射について

少数個の転移性脳腫瘍に対して積極的な定位照射の適応が増加している。エレクタ社製「Versa HD」では,これに対するソリューションとして“High-Definition Dynamic Radio Surgery(HDRS)”を有する。HDRSでは,強度変調回転放射線治療(VMAT)で定位照射を実施する。その特長として,(1) 短時間で照射が完了,(2) ターゲットへの線量集中性を高め,正常組織への被ばくを大きく低減させる,の2点を有する。Versa HDは,広い照射範囲を有しているため,単一アイソセンタで脳全体にわたる複数個の腫瘍を同時にVMAT照射ができる。別述の“IntelliBeam”によりアーク数を減らし,flattening filter free(FFF)との組み合わせにより短時間での照射が可能であり,15分枠での定位照射も実現できる。

定位照射では極小ターゲットの照射も多いが,HDRSでは“Virtual Leaf”という技術によって,極小ターゲットへの照射にも最適化している。Virtual Leafは,治療計画装置「Monaco」との組み合わせにより実現する,リーフのみならず絞りも照射中にダイナミックに動かし強度変調に利用することで,物理的なリーフ幅に対して見かけ上のリーフ幅をより細くする技術である。結果的に,見かけ上リーフ幅は最小1mmの解像度として高精細線量分布やビーム形成ができる。これにより,多発転移性脳腫瘍のような極小腫瘍に対しても,2.5mmマルチリーフコリメータ(MLC)と同等以上のターゲットへの線量集中性が実現可能である。正常組織に対しても,自由度の高い強度変調やリーフの最大透過率が0.5%ときわめて低いことにより,被ばく線量を大きく低減できる。

HDRSでは,これらの技術を利用し高品質な定位照射プランを短時間で実施できるシステムである(図1)。

図1 多発性転移性脳腫瘍に対するHDRSの線量分布

図1 多発性転移性脳腫瘍に対するHDRSの線量分布

 

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