技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2021年12月号

技術から見えるDRシステムの最前線

変わる診療スタイルを共に実現する新しいデジタルX線TVシステム「Astorex i9」

播摩谷紀彰[キヤノンメディカルシステムズ(株)X線営業部]

医療の進歩に伴い,各診療科のさまざまな手技に対応するよう,X線TV装置に求められる機能・性能は大きく変化してきた。キヤノンメディカルシステムズは,多くの声を聴き,見つめ,お客様とともに時代が求めるX線TV装置の新たなスタイルを創造する取り組み“Beyond”を通じて,患者さんに配慮した寝台と新たなプラットフォームを採用したデジタルX線TVシステム「Astorex i9(アストレックス アイナイン)」(図1)を販売開始したので紹介する。

図1 デジタルX線TVシステムAstorex i9

図1 デジタルX線TVシステムAstorex i9

 

■さまざまな手技に対応する新開発多目的寝台

奥行き方向が173cmとコンパクトな寝台であるため,広いワークスペースを確保でき,壁付け設置も可能で,さまざまな検査室状況に対応できる柔軟性を有している。また,flat panel detector(以下,FPD)が天板端から9cmまで移動するため,頭足方向205cmの幅広い観察範囲を実現した。これにより,天板の端で手技を行う泌尿器科検査や内視鏡併用検査など,さまざまな診療科の手技により対応しやすい環境を実現している。

■天板も映像系も動かない視野移動“i-fluoro”

17インチFPD内を,コリメーションにより視野移動するi-fluoroを搭載した(図2)。天板や映像系の機械的移動を伴わずに視野移動し,従来どおり,視野拡大や観察領域をモニタに全画面表示することができる。穿刺手技や内視鏡併用検査で天板・映像系を動かさずに視野移動を行えるため,スムーズな手技と患者さんに優しく安心な検査環境を提供する。

図2 天板も映像系も動かない視野移動i-fluoro

図2 天板も映像系も動かない
視野移動i-fluoro

 

■高画質・低線量検査コンセプト“octave i”

パルス透視のフレームレートによらず,高画質と従来比で照射線量約65%低減を実現した高画質・低線量検査コンセプト“octave”は,キヤノン製17インチFPD「i-FPD」と,新開発画像処理装置「i-DR」によってoctave iに進化し,さらなるノイズ低減とコントラスト分解能の向上を実現した。また,通常の透視像に加え,高精細透視モードを搭載したことにより,ガイドワイヤなど各種デバイスがより見やすい透視像を提供する。

■低線量検査を実現する機能

X線量をワンタッチで切り替えることができる透視線量モード,また,グリッド制御方式X線管を採用した波頭・波尾の短い理想的なパルス透視は,豊富なフレームレート(30,20,15,10,7.5,5,3,2,1fps)を選択でき,octave iに加え,さらに低線量検査の実現と取り入れやすさを提供する。

■広いカバレッジを提供する長尺撮影“i-stitch”

長尺撮影i-stitchは,異なる部位間に生じるX線の吸収差を考慮するモード,大きなFPDサイズを活用して画像内の統一性を高めるモードなど,撮影モードを選択できる。また,撮影後,画像はi-DR上で自動的に貼り合わせ,確認できるため,検査のスループット向上に寄与するワークフローデザインとなっている。

■複数の断層像が得られるトモシンセシス撮影“i-slice”

トモシンセシス撮影は,一連の投影データから,任意の位置の断層像を再構成する技術であり,前後の重なりを避けた画像が得られる。また,数秒間の1回撮影で終了するため,患者さんの拘束時間や被ばくが軽減され1),立位での撮影もできるため,荷重をかけた状態の評価が可能である。i-sliceは,i-DRで自動的に画像を再構成し確認できるため,i-stitchと同様のワークフローデザインとなっている。

Astorex i9は,さまざまな環境や診療ニーズに応えられるよう,システムとしての基本性能である高画質・低線量と,さまざまな用途に応える寝台を兼ね備え,大幅な進化を遂げたX線TV装置である。キヤノンメディカルシステムズは,これからも多くのお客様の声を聴き,時代が求めるX線TV装置のあり方を求め,スローガンである“Made for Life”のもと,人々の健やかな生活の実現のために,日々“いのち”と向き合っていくことを目標としていく。

*Astorex,octaveは,キヤノンメディカルシステムズ株式会社の商標です。

一般名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名:デジタルX線TVシステム Astorex i9 ASTX-I9000
認証番号:302ADBZX00081000

●参考文献
1) 日本医用画像工学会 : 1.6トモシンセシスシステム. 医用画像工学ハンドブック. pp184, 日本医用画像工学会, 東京, 2012.

 

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