GE Healthcare Japan Edison Seminar 2020

2020年12月号

GE Healthcare Japan Edison Seminar 2020

【特別シンポジウム セッション2】これからのチーム医療 診療放射線技師に求められるもの

上田 克彦(公益社団法人 日本診療放射線技師会 会長 / 国際医療福祉大学 成田保健医療学部 放射線・情報科学科 副学科長 教授)

上田 克彦(公益社団法人 日本診療放射線技師会 会長 / 国際医療福祉大学 成田保健医療学部 放射線・情報科学科 副学科長 教授)

本講演では,日本診療放射線技師会(JART)と国際医療福祉大学の紹介をした上で,多職種連携のあり方,そして診療放射線技師の専門性についての課題を述べる。

日本診療放射線技師会の紹介

日本診療放射線技師会は,1947年に設立された職能団体である。その役目としては,関係省庁との窓口になり,診療放射線技師がかかわる法令や施策への提言などを行っている。また,各都道府県には別法人として(診療)放射線技師会が存在しており,一体となって医療を支える活動をしている。2020年9月現在の会員数は3万1162人である。わが国の診療放射線技師数は5万5421人であり,入会率は56.2%となっている。
私は,会長としてのスローガンとして,「対話と協調の時代」を掲げている(図1)。これは,診療放射線技師の職能団体として,関連団体と協調して放射線診療を盛り上げて,それを国民に還元することをめざすという思いを込めている。

図1 対話と協調の時代

図1 対話と協調の時代

 

国際医療福祉大学の紹介

国際医療福祉大学は,1995年に設立された。現在,6つのキャンパスに11学部26学科が設置されている医療福祉の総合大学である。成田保健医療学部の放射線・情報科学科は,2020年4月に開設された。
本学の特色として挙げられるのが,関連職種連携教育である。関連職種連携教育とは,学部の垣根を越えて学生が一緒に学ぶ独自のカリキュラムである。医学部,看護学部,保健医療学部などの学生が一堂に会して,グループワークを行う。さらに,病院実習もグループで実施する。このように,本学は医療福祉の総合大学として,チーム医療と多職種連携を大切にしている。

多職種連携

多職種連携においては,放射線診療に求められる役割,診療放射線技師に求められる役割がある。本学の関連職種連携教育もこの観点から行われている。また,多職種連携を進めていくには,各職種の専門性が求められる。医療関連の職能団体が参加するチーム医療推進協議会のホームページでも,チームの一員として専門性を高めることの重要性が示されている。
一方,現在進められている医師の働き方改革では,医師の負担を軽減するためにタスクシフティングが求められており,診療放射線技師の業務の拡大も計画されている。これは,法令を改正して診療放射線技師の実施可能な行為を増やすものである。さらに,診療放射線技師の業務拡大としては,読影の補助業務もある。読影の補助については,どのように行うべきか,まだ課題も残されているが,日本診療放射線技師会としては,放射線科医の指導を受けて進めていきたいと考えている。
チーム医療は,患者と家族もチームの一員である。患者と家族が検査や放射線被ばくについて理解し,治療を選択できるよう力を貸すことも,診療放射線技師に求められている重要な役割である。2020年4月には,診療用放射線の安全管理について規定した医療法施行規則の改正省令が施行された。これにより,多職種連携の中で被ばく線量管理など放射線診療にかかわるさらに多くの役割を,放射線科医と診療放射線技師は担っていくことになる。

専門性の課題

チーム医療では,それぞれの医療職の専門性が重要であるが,診療放射線技師に求められている専門性を考えると,いくつかの課題がある。これまで診療放射線技師の育成では,CTやMRIなどのモダリティごとに特化したスキルの向上が求められていた。しかし,現在は,PET/MRIなどのような「複合機器の時代」であり,専門性について改めて考える必要がある。また,診療放射線技師は専門が多岐にわたり,専門技師認定制度も数多く存在し,複数の資格を持つ者も少なくない。日本診療放射線技師会でも認定資格や生涯教育システムを設けているほか,新しい生涯教育システムも計画している。
このような多数の専門技師認定制度や資格認定が存在するのは,ほかの医療職にはない珍しいことである。これらの制度や資格が国民から必要とされているのか,改めて考えなければならない。そして今後は,国民にとってわかりやすく,かつ役に立つ仕組みを検討する必要があるだろう。

まとめ

本講演では,日本診療放射線技師会と国際医療福祉大学の紹介をした上で,多職種連携におけるタスクシフティングのための診療放射線技師の業務拡大について述べた。さらに,専門技師認定制度などの専門性の課題を提示した。課題解決に向け,皆さんと力を合わせて取り組んでいきたい。

 

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