技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2014年3月号

US Today 2014 領域別超音波最新動向

XDclear Transducer Technologyの概要
相反する分解能とペネトレーション向上の両立をめざして

臼井 洋史(プローブ技術部)

超音波診断装置の性能に大きく影響を及ぼす超音波プローブの音響特性を向上させることが,画質を改善する有効な手段であることは明らかである。「XDclear Transducer」として開発されたC1-6-Dプローブ,C2-9-Dプローブ,M5Sc-Dプローブ(図1)は,“Single Crystal”“Acoustic Amplifier”“Cool Stack”という3つの技術を融合することで性能を向上させ,かつ高い品質を確保するために国内で製造されている“Made in Japan”のプローブである。本稿では,XDclear Transducerの3つの技術について概要を述べる。

図1 XDclear Transducer

図1 XDclear Transducer
左からC1-6-D,C2-9-D,M5Sc-D

 

■Single Crystal

超音波プローブは,トランスデューサ(変換器)とも呼ばれる通り,圧電現象を利用して電気エネルギーと超音波エネルギーを相互に変換するデバイスだが,今日では圧電セラミックであるPZTが広く利用されている。しかし,PZTはセラミックであるがゆえに多結晶構造を有しており,それぞれの結晶の圧電方向は一致しておらず,よって変換効率も理想的な値とはなっていなかった。今回採用したSingle Crystal(単結晶圧電材料)は,単結晶構造であるため,その圧電方向は完全に一致しており,非常に高い変換効率を有する(図2)。

図2 PZTとSingle Crystalの比較

図2 PZTとSingle Crystalの比較

 

■Acoustic Amplifier

一般的な超音波プローブは,圧電材料の背面にバッキング材を設け,振動子の共振を抑制することで短いパルス波を発生させるとともに,背面方向に発生する不要な超音波を吸収,減衰させている。しかしこれは,電気から超音波へ変換されたエネルギーの一部が,バッキング材により抑制,減衰されていることを意味する。そこで,Acoustic Amplifierは,従来とは正反対の発想で,背面方向への超音波エネルギーを生体方向に反射させ,有効に利用することを意図した技術である(図3)。

■Cool Stack

前述の2つの技術によってエネルギー変換効率の向上を達成できたものの,例えばプローブ内を超音波が伝搬する際の損失などは避けられず,その損失は熱となって現れ,プローブ表面の温度を上昇させることで超音波エネルギーを発揮させる際の障害となる。そこで,Cool Stackは,その損失熱を背面方向に排出することでプローブ表面の温度上昇を抑え,超音波エネルギーを最大限発揮させることをめざした技術である(図3)。

図3 Acoustic AmplifierとCool Stack

図3 Acoustic AmplifierとCool Stack

 

■XDclear Transducer Technologyによる画質向上

以上述べた通り,3つの技術が融合されたXDclear Transducerは,高い電気・音響エネルギー変換効率を実現した。これにより,広帯域かつ高感度なプローブの設計を可能としている。そのため,画質の面では,分解能とペネトレーションという相反する性能の向上を両立している。図4は,C1-6-Dプローブによる肝臓の造影画像であるが,深部においても高い分解能を維持していることがわかる。

図4 C1-6-Dプローブによる臨床イメージ

図4 C1-6-Dプローブによる臨床イメージ

 

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