技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2016年4月号

Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

「Innova/Discovery IGS」シリーズにおける腹部IVR支援アプリケーションについて

柴草 高一(Interventional製品企画)

インターベンション(以下,IVR)の進化,ならびに患者の非侵襲的治療志向も相まって,IVR件数は年々増加傾向にあり,その適応範囲も拡大している。手技自体も複雑化し長時間に及ぶことも少なくなく,また各種デバイスの進化に伴い従来以上に良好な視認性やハイレベルなIVR支援機能が要求されている。
そのような背景を踏まえて,正方形40cmサイズの大視野フラットパネルディテクタ(以下,FPD)を搭載する「Innova IGS540」「Discovery IGS 740」(図1)における特徴的な腹部IVR支援アプリケーションについて解説したい。

図1 正方形40cm FPD

図1 正方形40cm FPD

 

■腹部IVRを的確にサポートする画像ワークステーション「Advantage Workstation VS7」について

そもそも,IVRを的確にサポートするために必要な画像ワークステーションとはどのようなものであるべきか? その解答は一つではないと思われるが,IVRの基本に立ち返れば,術中にDSA画像やCT/MRIなどのマルチモダリティ画像を必要なレイアウトで簡単に表示でき,かつ,血管病変を「術者が観察したい形」で表示することができるワークステーションが理想的であろうと弊社は考えている。例えば,肝臓がんの治療である肝動脈化学塞栓療法(以下,TACE)であれば,肝臓がんの淡い染まりや栄養血管を立体的に把握できる最適な断面や角度,そしてアキシャル,コロナル,サジタルの3断面画像を適宜参照しつつ,病変の詳細をいち早く把握することがきわめて重要だと思われる。
上記のような臨床シーンにおいて,弊社Advantage Workstation VS7(図2)では,2つの液晶モニタを用いて最適な状態で分割表示しつつ,必要に応じてレイアウトを1クリックで自在に変更できる。そして,すべての3D画像および各断面画像にカーソル位置が連動できるため,特定の血管や病変位置を把握するのにきわめて有効である(図3)。

図2 Advantage Workstation VS7

図2 Advantage Workstation VS7

 

図3 カーソル(←位置)が全画面に連動

図3 カーソル(位置)が全画面に連動

 

■肝臓がんの栄養血管探索をサポートする“FlightPlan for Liver”

TACEを行うためには,栄養血管が特定されないと手技自体を開始できない。アンギオ装置によるコーンビームCアームCT技術(以下,CBCT)の登場以来,DSA画像単体を用いるよりも簡便に立体的に栄養血管を特定できるようになったが,その一方で,ultra super selective TACEをめざして手技自体もさらに複雑化しており,術中により的確で,より迅速に栄養血管の特定を支援できるワンランク上の機能が求められている。FlightPlan for Liver(FPFL)はアンギオ装置で得られた3Dデータを基に栄養血管と思われる血管を自動特定し術者にセカンドオピニオン的に情報提供することで,より効率的,かつ,低被ばくでのTACEを施行いただくことを目的としている。FPFLのプロセスを以下に解説する。

1.3D撮影
3D撮影には3種類の収集モードがあるが,患者の高齢化に影響され最短の5秒回転(40°/s)による息止め撮影を用いることが一般的である。カテーテル位置や症例の特性により肝臓がんが染まるタイミングは異なり,直前のDSAでX-ray delay timeを正確に計測することが肝要である。比較的長めのdelay timeが必要なケースもあり,その場合は,患者への息止めの声掛けタイミングを十分に注意する必要がある。3D収集の成功のためには,患者の息止めが必要不可欠だからである。

2.血管と骨信号の自動分離
FPFLを起動すると,MIP画像およびVR画像,そして各断面画像が自動表示され,これらすべての画像にカーソル位置が常に連動している。おのおのの画像を相互に確認しつつ,まずはカテーテルの先端に近い肝動脈上にカーソルを置き1クリックすることで,肝動脈と椎体,肋骨の信号を自動分離することができ,骨消しなどのマニュアル作業を必要としない。

3.腫瘍濃染の選択
各種3D画像や各断面画像を適宜比較しながら,腫瘍濃染の大きさに応じて円形カーソルのサイズを調整しつつ,濃染位置を決定する。その後,濃染位置と肝動脈近位部との連続性の高い信号,すなわち,栄養血管と思われる信号を自動検出し,VR画像上で緑色に表示する(図4)。血管自体の描出能を妨げることを危惧し,あくまでも色のみを変化させ補助ラインなどは表示しない。かつ,FPFLによる探索結果とともに,MIP画像やVR画像,ならびに各断面画像を同時表示することにより,術者自身が栄養血管に関して総合的な判断が行えるように画像がレイアウトされている。

図4 FlightPlan for Liver

図4 FlightPlan for Liver

 

4.“InnovaVision”(3Dロードマップ)の起動
FPFLにより結果が表示された後は,わずか2クリックだけで自動的に3Dロードマップ機能(InnovaVision)を起動することができる。この場合,肝動脈全体,もしくは栄養血管のみの3Dロードマップ,または椎体や肋骨の3Dロードマップを瞬時に切り替えることが可能となる。また,“Back View”機能により,左右はそのまま,前後(奥行きの情報)のみを画像反転させることで,画像の奥側に隠れている血管構造を容易に表示することができる(図5)。

図5 Back View(右)

図5 Back View(右)

 

■Stereo3D

生検などの穿刺系手技は,複雑に隣接する臓器や血管を傷つけずに目的の対象物へ穿刺針を到達させることが重要であり,高い精度を要求される手技である。
“Trajectory Planning”というアプリケーションを用いると,術前CBCTのオブリーク画像上からエントリーポイントとターゲットポイントを指定することで,これらの間を結ぶ穿刺軌道が自動で算出される。そして,ターゲット位置や穿刺軌道を透視上に表示しエントリーポイントとターゲットが一直線上で重なるbull’s eye viewが自動表示され,術前に穿刺プランの確認を行うことができる。術中は穿刺プランを3Dロードマップ上に表示することができ,かつ,bull’s eye viewのtangent方向であるprogress viewをワンタッチで切り替えることも可能であり,穿刺手技をサポートすることができる。
加えて,手技中に穿刺針などの対象物が視野内にある状態で,2方向から透視画像を収集すると,これらの画像から対象物を3Dで再構成し,これを冒頭に撮影したCBCT画像上に重ねて表示可能となる(図6)。これにより,手技中2方向からの透視のみでCBCTのオブリーク画像上に現在の穿刺針の位置を表示できるため,例えば,穿刺針の深度や方向を3D画像上で自由に角度を変えながら詳細確認が可能となる。進行する手技の中で必要に応じて正確性を確認しながら,手技精度を高めるためのサポートが可能になると考えられる。

図6 Stereo3D

図6 Stereo3D

 

腹部IVRをサポートするための最新アプリケーションについて解説した。各施設において,より的確でより安全なIVRを施行するための一助となれば幸いである。

*多目的X線撮影システムDiscovery 医療機器認証番号:225ACBZX00006000号
*多目的X線撮影システムINNOVA 医療機器認証番号:21500BZY00327000号
*多目的X線撮影システム INNOVAⅡ 医療機器認証番号:219ACBZX00035000号
*アドバンテージワークステーション 医療機器認証番号:20600BZY00483000号

●参考文献
1)Deschamps, F., Solomon, S.B., Thornton, R.H., et al. : Computed analysis of three-dimensional cone-beam computed tomography angiography for determination of tumor-feeding vessels during chemoembolization of liver tumor ; A pilot study. Cardiovasc. Intervent. Radiol., 33・6, 1235〜1242, 2010.
2)Minami, Y., Yagyu, Y., Murakami, T., et al. : Tracking Navigation Imaging of Transcatheter Arterial Chemoembolization for Hepatocellular Carcinoma Using Three-Dimensional Cone-Beam CT Angiography. Liver Cancer, 3, 53〜61, 2014
3)Iwazawa, J., Ohue, S., Hashimoto, N., et al. : Clinical utility and limitations of tumor-feeder detection software for liver cancer embolization. Eur. J. Radiol., 82・10, 1665〜1671, 2013.

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
カスタマーコールセンター
〒191-8503
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