技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2016年9月号

MRI技術開発の最前線

GE MRI技術開発の最新動向

貝原  雄(GEヘルスケア・ジャパン(株)アジア・パシフィックMRマーケティング)

近年のMRI技術開発においては,メーカーの提示する技術的な先進性だけでなく,いかに開発段階で実臨床での広い活用法を考慮できるか,さらには最新技術の活用の幅を広げるために,臨床の現場とともにエビデンスをつくっていくことがますます重要になってきている。
本稿では,GEの最新アプリケーションと国内知見,併せて国内外の学会における最新の技術トピックスについても触れる。

■“MAGiC”“SILENT SCAN”の国内臨床応用

MAGiC(MAGnetic image Compilation)は,1回の撮像から7つのコントラストを同時に再構成可能な画期的なアプリケーションであり,2015年に販売を開始した「SIGNA Pioneer」を皮切りに,現在では3Tで販売されている全機種に搭載可能,また,今後1.5Tの臨床機にも搭載予定と臨床使用の幅を広げている。FSE-IRベースの“MDME(Multi Delay Multi Echo)”シーケンスによって収集されたデータからT1値,T2値,PD値を計算,さらにB1マップ補正を加味することで,任意のコントラストと定量マップが自動的に再構成される(図1)。このアプリケーションは,SyntheticMR社の画像計算アルゴリズムと,GEのMDMEシーケンス,インライン画像再構成を融合することで,実際の臨床現場で幅広く活用されることを目的として開発されたアプリケーションであり,GEでは3つの活用法“Faster”“Further”“Deeper”を提唱している。例えばT1強調,T2強調,FLAIRなど複数コントラストが診断上必要な場合,特に多発性硬化症などの白質性病変の診断などでdouble IR(DIR)コントラストを撮像する場合は,MAGiC1回の撮像で時間短縮(Faster)が可能であり,また,その短縮された時間を活用して3D ASLやDTIなどの追加の検査を同じ検査枠内で行う(Further)といった臨床活用も実際に行われている。

図1 MAGiCのパルスシーケンスと再構成画像

図1 MAGiCのパルスシーケンスと再構成画像

 

また,造影後にMAGiCを使用することで,造影T1強調だけでなく造影FLAIRや造影DIRを追加撮像なしで診断に用いることも可能であり,T1マップ,T2マップなどを用いた定量的診断の試みも始まっている(Deeper)1),2)
SILENT SCANは,3D収集のグラディエントエコー法である“Silenz(サイレンツ)”を中心とした音のしない撮像法であり,国内でもすでに100施設以上に導入されているアプリケーションである。
臨床活用上の目的は大きく分けて2つあり,1つ目は「ルーチン検査の無音(静音)化による患者適用の拡張」である。
位置決めからT1,T2,FLAIR, MRA,DWIなど,頭部ルーチン検査のほとんどをSILENT SCANで実施できるため,実際に閉所恐怖症の患者がSILENT SCANでは検査可能だった例や,小児検査はすべてSILENT SCANで行っている例,結果として小児への鎮静剤使用量がSILENT SCANにより大幅に減少したという報告3)もあり,国内での活用も広がっている。
2つ目の目的は「ゼロTEによるMRAの臨床的アドバンテージ」である。
“SILENT MRA(zero TE MRA)”は,スピンエコーやグラディエントエコー法のようなリフォーカスパルス/グラディエントを使用せず,FID信号をそのまま収集しているため,TEが限りなくゼロ(〜16μs)に近い(図2)。そのため,MRAにおいては血流信号の位相分散の影響を最小限にし,動脈瘤内の乱流の影響や,金属クリッピング/コイリングによる画像劣化の影響を大幅に抑えることが可能である4)

図2 ゼロTEを実現するSilenz パルスシーケンス

図2 ゼロTEを実現するSilenz パルスシーケンス

 

■圧縮センシング:次世代の高速撮像技術

MRIの高速化技術としてまず挙げられるのはパラレルイメージングによる高速化だが,近年では圧縮センシング(compressed sensing:CS)技術,マルチバンド技術,局所撮像技術など,新たな高速化アプローチが開発されている。本稿では圧縮センシング技術の概要について触れる。
圧縮センシング(以下,CS)は,JPEGのような「必要ない情報を間引く」画像圧縮の原理を応用した技術であり,ランダムにアンダーサンプリングされたデータから,残りのデータを推測して画像再構成を行うことで,CTやMRIのような医用画像においては,撮像時間を大幅に短縮することが可能である(図3,4)。

図3 Compressed sensingの概念

図3 Compressed sensingの概念

 

図4 Compressed sensingによる時間短縮例

図4 Compressed sensingによる時間短縮例

 

10年ほど前からISMRMにおいてCSに関するさまざまな研究が発表され,その後国内外での研究が進み5),6),長らく臨床応用が期待されていたが,長い画像再構成時間が大きな課題の一つであった。CSの画像再構成時に,ノイズ除去を行うために逐次近似法を使って繰り返し複雑な計算を行う必要があるが,この問題は再構成アルゴリズムやハードウエアの進歩により,早い臨床応用が期待される。
ローデータの収集を間引いて撮像時間を短縮するという点では,パラレルイメージングと類似しているが,パラレルイメージングはreduction factorやコイルのgファクターに依存してSNRが低下するが,CSは原理的にSNRの低下がないという点で大きく異なる。パラレルイメージングとCSとの組み合わせにより,画像劣化の少ないさらなる高速撮像に期待が持たれる7)図5)。

図5 Compressed sensingとパラレルイメージングを併用した高速化

図5 Compressed sensingとパラレルイメージングを併用した高速化

 

■4D flow:さらなる高速化とクラウド解析への拡張

“4D flow”は,3D phase contrast cine法をベースとした撮像と,ワークステーションを用いた定量解析によって構成される技術であり,血流を三次元で可視化・定量化することで弁機能の評価など,特に循環器領域における臨床有用性が期待されている。
最近ではk-t(三次元空間+時間軸)方向のパラレルイメージングを応用した,新たな4D flowの撮像高速化技術も報告され,循環器領域のルーチン検査における普及が期待される。

新たな撮像技術の臨床適用が期待される一方で,膨大なデータのハンドリングについては大きな課題が残っている。
今後期待される一つのソリューションは,クラウドサーバを用いた効率的なデータマネジメントと,クラウドアプリケーション上での人工知能・ディープラーニングを活用した自動解析技術であろう。
これら大容量データを対象としたデジタル技術開発は,ヘルスケアに限らずGEが今最も力を入れている分野であり,臨床現場への早期普及を実現したい。

●参考文献
1)Hagiwara, A., Nakazawa, M., Andica, C., et al. : Dural Enhancement in a patient with Sturge-Weber syndrome revealed by double inversion recovery contrast using synthetic MRI. Magn. Reson. Med. Sci., 15・2, 151〜152, 2016.
2)Andica, C., et al. : The Advantage of Synthetic MRI for the Visualization of Early White Matter Change in an Infant with Sturge-Weber Syndrome. Magn. Reson. Med. Sci., 2016(Epub ahead of print).
3)渡邉嘉之 : 患者に優しい音のしないMRI検査「Silent Scan」の臨床経験. 第119回日本小児科学会学術集会, 教育セミナー29, 2016.
4)Irie, R., Suzuki, M., Aoki, S., et al. : Assessing Blood Flow in an Intracranial Stent ; A Feasibility Study of MR Angiography Using a Silent Scan after Stent-Assisted Coil Embolization for Anterior Circulation Aneurysms. Am. J. Neuro. Radiol., 36, 967〜970, 2015.
5)Lustig, M., et al. : Compressed Sensing MRI. IEEE Signal Processing Magazine, 25, 72〜82, 2008.
6)増井孝之・他 : 圧縮センシング─臨床MRI検査への応用. INNERVISION, 29・9, 61〜63, 2014.
7)竹井直行・他 : Compressed sensingとParallel Imaging併用3D TOFを用いた頚部MRAの検討. 第43回日本磁気共鳴医学会大会, 2015.

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
MR営業推進部
〒191-8503
東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:0120-202-021(コールセンター)
www.gehealthcare.co.jp

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