技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2020年5月号

腹部領域におけるCT技術の最新動向

腹部領域イメージングにおけるCT最新技術─デュアルエナジーとディープラーニング画像再構成

Hao Zhong[GEヘルスケア・ジャパン(株)CT営業推進部Clinical Leader]

1970年代にCTが登場して以来,CTの発展は目覚ましく,ハードウエア・ソフトウエア共に新たな技術が次々と開発されてきている。近年においては,特に特徴的な技術として,デュアルエナジーやディープラーニングを使った画像再構成技術などが挙げられる。
GEは,10年以上にわたってfast kV switching方式によるデュアルエナジーである“Gemstone Spectral Imaging(以下,GSI)”を提供してきた。GSIは,従来のシングルエナジーと比較し,任意のエネルギー画像,また,各種密度値画像や実効原子番号画像などが作成可能である。2017年には,GSIを進化させた“GSI Xtream”を発表した。GSI Xtreamは,従来のGSIと比較し,画質,被ばく,ワークフローそれぞれを進化させることにより,従来研究的要素の強かった技術であるデュアルエナジーを,日常の臨床においても広く使用できる技術に落とし込んだ。
画像再構成技術については,2019年に,ディープラーニングを使用した新世代の画像再構成技術である“TrueFidelity Image”を発表した。TrueFidelity Imageは,大幅にノイズを低減させながらも,従来のノイズ低減技術で指摘されていた画像テクスチャの変化を抑え,読影医に読みやすい画像を提供することが可能となっている。世界初のディープラーニングを用いて開発されたCT画像再構成技術として,米国Food and Drug Administration(以下,FDA)の承認を受け,今後の実臨床での適用が期待される技術である。
本稿では,上記それぞれの技術について,腹部領域における臨床例を交えながら解説する。

●デュアルエナジー

GEのデュアルエナジーであるGSIは,fast kV switching法を採用することにより,デュアルエナジーに求められるさまざまな要素を高いレベルで提供し,実臨床におけるGSIの使用を可能としている。デュアルエナジーを撮影する方式として,rotate-rotate方式や2管球方式,また,2層検出器方式,そしてGSIが採用しているfast kV switching方式などが原理的に挙げられる。それぞれの方式において,原理的なメリット・デメリットがあるが,デュアルエナジーを臨床で使用していくために求められる大きな要素である,各管電圧を収集する際の時間的・空間的ズレの少なさや,各管電圧のエネルギー差の大きさ,また,FOVの制限の少なさなどをトータルで考慮した結果,GEとしてそれぞれの要素を高いレベルで提供できるfast kV switching方式を採用した。
GSIは,80kVp/140kVpのエネルギーを,0.25msという非常に高速で切り替えながら,50cm FOVの範囲におけるエネルギー収集を行う。得られたデータより,まずはじめにすべての物質が水とヨードで構成されていると仮定し,それぞれにおける密度値を求める。従来のCT画像は一般的に水を基準としてビームハードニングの補正を行うのに対し,GSIでは水およびヨードそれぞれの密度値を求めることにより,それぞれにおいてビームハードニング補正が可能となり,従来より高い精度での補正が可能となる。その補正によって求められた正確な水およびヨードの密度値から,各エネルギーの仮想単色X線画像や任意の物質の密度値画像,また,実効原子番号画像を計算することにより,精度の高い画像を提供することが可能となる(図1)。
GSIを使用した腹部領域の臨床画像を提示する。図2は,脾動脈瘤コイルisolation後の評価として,GSIで撮影された症例である。従来,コイル周辺は,コイルからのアーチファクトにより評価が困難であるケースが多かった。本症例は,GSIで撮影し,40keVと140keVの画像をエネルギーサブトラクションすることにより,コイルからのアーチファクトを除去し,残存血流(図2)を評価でき,エンドリークとして診断された。また,volume rendering画像作成も容易であり,GSI画像で指摘された残存血流は,アンギオグラフィでも同様の所見であった。

図1 GSIの計算プロセス

図1 GSIの計算プロセス

 

図2 脾動脈瘤コイルisolation後の評価

図2 脾動脈瘤コイルisolation後の評価

 

●ディープラーニング画像再構成法

CTが登場して以来,約40年経過する中で,画像再構成技術は大きく3つの時代に分けられる。当初の約30年間は,filtered back projection(以下,FBP)が主に画像再構成法として採用されていた。FBPは,一定の線量で撮影された際には非常に読影のしやすい画像を提供できるメリットを持つ一方で,低線量で撮影された際のノイズおよびアーチファクトの発生が課題として挙げられていた。それらを解決するために,2008年に,GEが世界で初めて逐次近似応用画像再構成法を発表した。逐次近似応用画像再構成法により,低線量時でもノイズおよびアーチファクトの発生を抑えることが可能となったことで,臨床において大きなメリットを提供し,その後の画像再構成法のスタンダードとなっている。一方で,従来の線量をかけて撮影したFBP画像と比較して画像テクスチャが変化してしまい,読影者から違和感があると指摘されるケースがあった1)
そこでGEは,従来の画像再構成法のメリットを維持しつつデメリットを解決する方法として,ディープラーニング画像再構成法であるTrueFidelity Imageを開発した。TrueFidelity Imageは,ディープラーニングを用いて開発することにより,低ノイズかつ読影のしやすい質感を両立した画像を再構成することが可能で,米国FDAに承認された世界で初めてのディープラーニングを利用したCT画像再構成法となっている。
ディープラーニングは,計算能力の向上とネットワーク位相幾何学や効率的なトレーニングを行うための新しいアルゴリズムの開発が進んだことによって,近年注目を集めている技術である。ディープラーニングの有益性は,複雑なモデルを処理できること,また,人間のエンジニアの能力をはるかに超えるパラメータを処理できることにある2)。従来のアルゴリズムは,最適な解決法を把握できるようにパラメータの管理を人間の力に依存しており,多くの場合において,管理できるパラメータの数は100未満である。逐次近似応用画像再構成法は,パラメータの数が増えると,アルゴリズムに必要な収束性質を保つことが難しくなることから,特にこの点において課題があると言われている。それに対し,ディープラーニングのアプローチでは,実際のシステムをいくつかのパラメータに単純化した明確なモデルを構築する必要はない。これらのモデルは,複数のコンピュータを同時に使用してトレーニングが行われるため,非常に高い次元,かつ数百万の単位で処理可能なパラメータによるトレーニングプロセスによって,直接作成することが可能である。TrueFidelity Imageでは,このディープラーニングの特性を利用し,高品質のFBP画像を教師画像として学習させることにより,低線量での撮影においても,読影医にとって違和感のない画像を提供し,読影効率を向上させることが可能となっている(図3)。
TrueFidelity Imageを用いた腹部領域の画像を提示する。図4は,28歳,女性の骨盤内腫瘤の症例である。患者背景よりコントラスト向上および低線量を目的に撮影されており,管電圧80kVp,被ばく線量1.75mSvで撮影された。また,画像スライス厚は0.625mmで表示されている。従来,このような低線量で撮影され,かつ薄いスライス厚の画像のノイズを低減する場合,画像のテクスチャも変化してしまう傾向があったが,TrueFidelity Imageで再構成することにより,画像テクスチャを変化させることなくノイズのみを低減し,石灰化を伴う骨盤内腫瘤(図4)をクリアに描出できた。

図3 TrueFidelity Imageの開発プロセス

図3 TrueFidelity Imageの開発プロセス

 

図4 骨盤内腫瘤の評価(80kVp,1.75mSv)

図4 骨盤内腫瘤の評価(80kVp,1.75mSv)

 

本稿では,近年臨床応用が広がってきているデュアルエナジーとディープラーニング画像再構成法について,腹部領域の臨床例を交えながら解説した。今後,CT技術の発展の中心となっていくこれらの技術について,GEとして引き続き精度,機能を向上させていくことによって,新たな臨床的アウトカムを出せるよう努めていく。

マルチスライスCTスキャナ Revolution
医療機器認証番号:226ACBXZ00011000号
(デュアルエナジー,Deep Learning画像再構成)
マルチスライスCTスキャナ LightSpeed類型Revolution
医療機器認証番号:21100BZY00104000号(デュアルエナジー)

●参考文献
1) Geyer, L.L., et al. : State of the Art : Iterative CT Reconstruction Techniques. Radiology, 276(2): 339-357, 2015.
2) LeCun, Y., Bengio, Y., Hinton, G. : Deep learning. Nature, 521(7553): 436-444, 2015.

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
イメージング本部CT営業推進部
〒191-8503
東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:0120-202-021(コールセンター)
http://www.gehealthcare.co.jp

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