技術解説(コニカミノルタ)

2019年7月号

企業における医療向けAI技術の開発動向

コニカミノルタにおけるプライマリケア向けAI開発への挑戦

●当社のこれまでの取り組み

コニカミノルタでは,プライマリケアを重点事業領域と位置づけ,flat panel detector(FPD)や超音波診断装置などの製品を市場に展開している。画像解析の研究開発も,この事業ドメインと親和性が高いアプリケーションの優先度を上げ,市場に投入してきた。例えば,胸部単純X線画像用には,鎖骨や肋骨の信号を画像解析により減弱する“Bone Suppression処理”や同一患者の経時的な変化を強調する経時差分処理,乳がんの検出に対しては,マンモグラム用コンピュータ支援診断システムなどである。コニカミノルタでは,近年の人工知能(AI)技術の進化に際し,上記のような長年の画像解析に関する研究開発の技術力,経験と対象ドメインへの知見を生かし,プライマリケア領域で早期診断や診断価値の向上に貢献できるAI(プライマリケアAI)の開発に注力している。

●プライマリケアAIの開発

コニカミノルタのプライマリケアAIでは,検査のAI,検出のAI,診断のAIに分類し,診療放射線技師による画像の撮影から医師による診断までの各ステップをカバーするAIを開発し,順次,市場投入していく予定である。例えば,検査のAIでは,X線撮影に関し,医療安全/ワークフロー改善をキーワードに,AI技術を利用したポジショニング不良の検出による再撮影の減少や,ワークフローの改善に取り組んでいる。検出のAIでは,世界で最も撮影数が多い胸部単純X線画像をターゲットとして,画像所見の有無に関する尤度に基づいて優先順位づけを行うことや,医師による診断を支援するquality assurance(QA)の目的で使用することなどを視野に入れた開発を進めている。本開発においては,深層学習(ディープラーニング)技術を活用した医用画像解析技術にたけ,100万症例以上の症例を用いた学習が可能なEnlitic社と共同開発を進めている。最後に,診断のAIでは,2018年度,製品化したX線動画解析ワークステーション「KINOSIS」に搭載するAIとして,動きや機能の解析精度を上げることを目的に開発中である。特に,精度良く動きや機能の情報をとらえるため,AI技術を用いて胸部内の構造物をトラッキングする技術は重要な役割を担っている。

●遺伝子などを含めたマルチモーダルなAI開発への発展

コニカミノルタでは,将来的には,今回紹介したプライマリケアAIに加え,遺伝子などバイオ関連の情報と融合したAI開発により,治療において個別化医療に貢献することも視野に入れており,プライマリケアから治療までを対象としたAIを開発していく予定である。

 

【問い合わせ先】
ヘルスケア事業本部X線事業統括部臨床開発部
TEL 042-660-8157
URL https://konicaminolta.com/jp-ja/

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