技術解説(フィリップス・ジャパン)

2018年11月号

Nuclear Medicine Today 2018

「Vereos(ベレオス)PET/CT」─デジタルフォトンカウンティング技術のインパクト

樋口  江((株)フィリップス・ジャパンAMIフィールドマーケティング)

「Vereos PET/CT」(図1)は,2017年10月5日より販売を開始したデジタルsilicon-photomultiplier(以下,Si-PM)検出器を実装したプレミアムPET/CT装置である。本稿では,Vereosの特長であるデジタルフォトンカウンティング技術を中心に概説する。

図1 Vereos PET/CTの装置外観

図1 Vereos PET/CTの装置外観

 

■デジタルフォトンカウンティング技術

従来,検出器には光電子増倍管(photo-multiplier tube:PMT)が用いられ,シンチレーション光はPMTを通じ増幅されたアナログ信号として,A/D変換器を経てデジタル信号として検出される。その際,温度ごとのPMTのゲイン調整やシステムの直線性には改善が望まれていた。
一方,デジタルフォトンカウンティング技術(図2)では,1つのクリスタル4×4mm2あたり3200個のデジタル半導体素子が,シンチレーション光を増幅することなく直接デジタル値としてカウントし,高速にイベントを処理することでアナログ由来のノイズを排除し,理想的なデジタル信号を検出する。結果として優れた温度特性とシステムの直線性を達成した。

図2 デジタルフォトンカウンティング技術の概要

図2 デジタルフォトンカウンティング技術の概要

 

■1:1カップリング方式

旧来は,少ない検出器数で効率の良い信号処理を目的とし,Anger-Logic方式と呼ばれるクリスタル1つにつき複数の検出器で信号を検出し,1:1カップリング方式では,デジタルSi-PMとクリスタルを同数用い,完全に1:1で配置することで重心演算を不要とし,優れた空間分解能を獲得するとともにAnger-Logic方式からの完全な脱却に成功した(図3)。

図3 アナログ型検出器とデジタル型検出器の比較

図3 アナログ型検出器とデジタル型検出器の比較

 

■2倍超の感度,空間分解能,定量性向上による臨床への期待

種々の技術革新により,time-of-flightの時間分解能は310ピコ秒まで短縮され,システム感度・空間分解能・定量性共に(従来比)2倍超にスペックアップした。
これにより,画質/投与量/収集時間に妥協しない戦略的なPET検査(図4,5)の完遂にとどまらず,近い将来の応用が待たれる新規PET薬剤やtheranostics,人工知能(AI)といった研究分野にも大きな貢献が期待される。

図4 アナログPET画像とデジタルPET画像の比較(頭頸部)

図4 アナログPET画像とデジタルPET画像の比較(頭頸部)

 

図5 アナログPET画像とデジタルPET画像の比較(体幹部)

図5 アナログPET画像とデジタルPET画像の比較(体幹部)

 

【問い合わせ先】
お客様窓口
TEL 0120-556-494
URL www.philips.co.jp/healthcare

TOP