技術解説(フィリップス・ジャパン)

2026年3月号

腹部領域におけるUSの最新技術

肝硬度評価のクオリティと検査効率に貢献する「Auto ElastQ」

宮本 順子[(株)フィリップス・ジャパン超音波ビジネスマーケティング]

フィリップスは「Better care for more people」をブランドメッセージに掲げ,「意味のあるイノベーション(meaningful innovation)」を通じて,医療機関やケア現場,そして患者に対し,「より多くの人」に「より良いケア」を届けることをめざしている。
フィリップス製超音波診断装置のフラッグシップモデル「EPIQ Elite Elevate」は,腹部,表在,血管など,多様な臨床領域において,患者一人ひとりに最適化された画像診断情報を,迅速かつ高精度に提供することを目的に開発が進められ,さまざまな自動化技術を搭載している。本稿では,その中でも新たに導入された2D shear wave エラストグラフィ(2D-SWE)「ElastQ」の自動計測機能「Auto ElastQ」について紹介する。

■Auto ElastQ

shear waveエラストグラフィ(SWE)は,近年,肝臓の硬さを非侵襲的に評価する手法として臨床現場で普及している。米国超音波・放射線技師会議(SRU)などの国際コンセンサス委員会によって,SWEの測定値に基づく臨床管理ガイドラインも整備されつつある1)。しかしながら,測定のバラツキを抑え,再現性の高い高品質なデータを得ることは依然として難しいとされている。バラツキは,患者の体位や呼吸管理など,測定プロトコールの標準化によってある程度抑制できるものの,検者の技量や判断に依存する部分も大きく,いかに一貫性のある測定を行うかが重要な課題となっている(図1)
こうした背景を踏まえ,Auto ElastQは,国際ガイドラインに準拠したアルゴリズムに基づき,2D-SWEによる肝硬度測定のプロセスを自動化することで,検者の主観に左右されない一貫した計測と高い信頼性を実現できるよう設計された。Auto ElastQによる 2D-SWE計測の自動化により,以下の利点が期待される。
● 測定の一貫性・客観性の向上,検者間バラツキの低減
● 施設内標準化の促進と検査品質の均質化
● 計測ステップを最大29%,検査時間を最大60%短縮*1
● トレーニング負担の軽減と導入,運用の効率化
これらの効果は,Auto ElastQが2D-SWE画像を自動的に解析し,最適な測定条件を抽出するアルゴリズムによってもたらされる。以下に,その動作原理の一部を紹介する。

図1 従来の2D-SWEによる肝硬度計測画面 a:正常肝(低硬度) b:肝硬変(高硬度) 軟らかい肝臓ではElastQ(SWE)ボックス内のカラーが均一で測定しやすいが(a),肝硬変のように硬度が高い場合は不均一となり(b),適切な測定領域の判断が検者の主観に依存しやすい。

図1 従来の2D-SWEによる肝硬度計測画面
a:正常肝(低硬度)
b:肝硬変(高硬度)
軟らかい肝臓ではElastQ(SWE)ボックス内のカラーが均一で測定しやすいが(a),肝硬変のように硬度が高い場合は不均一となり(b),適切な測定領域の判断が検者の主観に依存しやすい。

 

1.計測フレームの自動選択
Auto ElastQは,取得した2D-SWEカラー画像のシネループを解析し,以下の2つの指標に基づいて,測定に適した安定した3フレームを自動的に選択する(図2)
● 隣接するフレーム間の時間的安定性
● 2D-SWEカラーボックス内のピクセル充填率
ただし,アーチファクトの多発によって取得画像の品質が悪い場合や,動画の取り込み時間が短い場合など,カラーボックス内の充填率が不十分で,計測に適した信頼度の高いフレームが確保できない際には自動選択は行われず,検者がその状況を把握できるように表示される仕様となっている。

図2 計測フレームの自動選択 Auto ElastQは,2D-SWEカラー画像のシネループ内から最大3フレームを自動で選択,カラーボックス内に自動で計測ROIを配置し,計測結果を表示する。

図2 計測フレームの自動選択
Auto ElastQは,2D-SWEカラー画像のシネループ内から最大3フレームを自動で選択,カラーボックス内に自動で計測ROIを配置し,計測結果を表示する。

 

2.計測ROI の自動配置
Auto ElastQは,以下の3指標を統合して合成ヒートマップを作成し(図3),そのピーク位置に計測ROIを自動配置する。
(1) 一般的な硬さ(出現率):各ピクセルの硬さを解析し,画像全体で最も一般的に出現する硬さの領域を特定
(2) 均質性(局所標準偏差):局所標準偏差は均質な組織で低く,血管やアーチファクトがあると高くなる。したがって,局所標準偏差が低いほど,組織は均質で高品質な測定が期待できる。Brattainらの研究2)や世界超音波医学学術連合大会(WFUMB)ガイドライン3)でも,標準偏差の低い領域で測定することが推奨されている。
(3) 時間的安定性:フレーム間で発生する一過性のアーチファクトを検出し,安定した剪断波が得られる領域を選択
これら3つの指標を統合することで,Auto ElastQは,適切かつ再現性の高い計測ROIの配置が可能となる。
このようにして,Auto ElastQは,計測に適したフレーム選択と計測ROIの配置を自動化し,一つの2D-SWEシネループから最大3回の計測結果を提供する。
WFUMBガイドライン3)では,信頼性の高い肝硬度測定を行うための推奨プロトコールとして,2D-SWEの計測回数を3~5回と定めている。特に,初心者の場合は5回の取得が推奨され,技術の習熟に伴って取得回数を減らすことが適切とされている。
一方,主観を排したAuto ElastQの自動計測では,ROIの配置がアルゴリズムにより標準化されているため,初心者であっても熟練者と同等の計測結果を得られる可能性がある。

図3 一般的な硬さ,均質性,時間的安定性の3つの指標を組み合わせて作成した合成ヒートマップ ROIはヒートマップのピーク位置に自動配置される。

図3 一般的な硬さ,均質性,時間的安定性の3つの指標を組み合わせて作成した合成ヒートマップ
ROIはヒートマップのピーク位置に自動配置される。

 

3.自動化による計測クオリティの向上
フィリップスは,2020年8月〜2024年8月に,NAFLDおよびNASH(いずれも研究開始当時の呼称で,現在はそれぞれMAFLD,MASHに名称変更)ならびに肝硬変が疑われる,または診断された107例を対象として後ろ向き検討を実施した。
「EPIQ Elite(C5-1)」で取得した動画から,熟練者が計9回の手動測定を行い,中央値を肝硬度値とした。一方,Auto ElastQは,同じ動画をReviewモードで解析し,9つの自動測定値の中央値を算出した。その結果,Auto ElastQと熟練者手動測定の一致度は非常に高く,Linの一致相関係数は0.97 を示した(図4)

図4 同じデータに対するAuto ElastQと熟練者による測定の比較

図4 同じデータに対するAuto ElastQと熟練者による測定の比較

 

近年,生活習慣病を背景とするMASLDは増加の一途をたどっており,新規治療薬登場への期待が高まっている。それに伴い,治療効果判定や長期フォローアップにおける非侵襲的画像診断の重要性は,今後さらに高まると考えられ,なかでも超音波SWEは,コスト効率に優れた肝硬度評価手法として注目されている。
Auto ElastQは,こうした臨床ニーズに応えるべく,高品質かつ再現性の高い計測と,検査ワークフローの効率化の両立をめざす機能として進化を続ける。

*1 従来のSWE ElastQとの比較(フィリップス調べ)

販売名:超音波画像診断装置 EPIQ/Affiniti
医療機器認証番号:225ADBZX00148000
特定保守管理医療機器/管理医療機器
販売名:フィリップス 超音波診断用プローブ KeReeシリーズ
医療機器認証番号:219ACBZX00026000
特定保守管理医療機器/管理医療機器

●参考文献
1) Barr, R.G., Wilson, S.R., Rubens, D., et al. : Update to the Society of Radiologists in Ultrasound Liver Elastography Consensus Statement. Radiology, 296(2): 263-274, 2020.
2) Brattain, L.J., Ozturk, A., Telfer, B.A., et al. : 
Image processing pipeline for liver fibrosis classification using ultrasound shear wave elastography. Ultrasound Med. Biol., 46(10): 2667-2676, 2020.
3) Ferraioli, G., Barr, R.G., Berzigotti, A., et al. : WFUMB Guideline/Guidance on Liver Multiparametric Ultrasound : Part 1. Update to 2018 Guidelines on Liver Ultrasound Elastography. Ultrasound Med. Biol., 50(8): 1071-1087, 2024.

 

●問い合わせ先
株式会社フィリップス・ジャパン
TEL:0120-556-494
https://www.philips.co.jp/healthcare

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