NAEOTOM Symposium 2025
2026年4月号
NAEOTOM Alphaの臨床アドバンテージ
頭部領域 PCD-CTで拓く脳血管イメージング:Flow Diverter内腔評価とdAVFの診断支援
西川 祐介(名古屋市立大学医学研究科脳神経外科学分野)
フォトンカウンティングCT(PCD-CT)「NAEOTOM Alpha」は,金属アーチファクトの効果的な低減が可能なことや高分解能であることなどが特長である。これらを生かし,当院ではNAEOTOM Alpha導入後,金属アーチファクトを低減した画像を用いて,脳動脈瘤に対するflow diverter stent治療の術後評価を行うようになった。また,高分解能を生かし,微細な血管の評価が求められる硬膜動静脈瘻(dAVF)の診断および治療戦略を支援する動脈相 / 静脈相分離撮影に役立てている。本講演では,当院におけるPCD-CTの活用の実際を報告する。
こまで見える!flow diverter stentの内側と外側
1.PCD-CTを用いた術後フォローアップの検討
脳動脈瘤に対するflow diverter stent 治療は,動脈瘤の根元(ネック)を覆うように編み目の細かいflow diverter stentを留置し,動脈瘤内の血流を停滞させて血栓化を促す手法である。動脈瘤内の血流は,治療直後から流速が低下し,約半年後には完全に途絶する。術後フォローアップでは通常,血管撮影(DSA)を行うが,PCD-CTを活用できると考え,ファントムを用いて検討を行った。
ステントおよびステント周辺部の描出能についてPCD-CTと従来CT (SOMATOM Force)の画像を比較したところ,PCD-CTの方が明らかに高分解能であり,コーンビームCT(CBCT)と遜色のない画質が得られた1)。そこで,術後フォローアップにおいて,PCD-CTがCBCTと同等の診断能を有するかを評価した。
flow diverter stent治療の治療効果判定は,OKMスケールを用いて,動脈瘤内の血流の有無を血流あり(A〜C)と血流なし(D)の4段階で評価する。OKM:A〜C群とOKM:D群の血管内および動脈瘤内のCT値と動脈瘤コントラスト(動脈瘤CT値−脳実質CT値)を比較したところ,血管内CT値は両群間に差がないが,動脈瘤内CT値はOKM:D群で明らかに低下しており,血管撮影の所見とほぼ一致していた1)。PCD-CTは,術後フォローアップにおいて優れた診断性能を有すると考えられることから,当院では現在,PCD-CTをコイル非併用症例全例に施行している。
2.症例提示:ステント外側の評価
症例1は,非常に大きな内頸動脈瘤の症例である。治療半年後の血管撮影では動脈瘤内の血流が完全に消失していたが,2年後の画像ではわずかな残存血流を認めた(図1a 右→)。PCD-CTでも同様に描出されており(図1b↑),金属アーチファクトの影響を受けることなく,ステント外側のわずかな変化を評価可能であった。また,翌年にもフォローアップを行ったところ,血管撮影にて前回とは別の場所に微細な残存血流を認め,PCD-CTでも同様にとらえられていた(図2→)。
症例2は,治療後のCBCTにてステントは十分に血管壁に圧着していると思われたが,翌日のMRIにて比較的大きめな無症候性の脳梗塞を認めたため,急遽PCD-CTを施行した。ステント近位端の圧着不良が確認できたため(図3 a),経皮的血管拡張術(PTA)を施行。治療後のPCD-CTにてステントの圧着を明瞭に確認でき(図3 b↑),その後の経過も良好であった。
図1 症例1:ステント外側の残存血流の評価
図2 症例1の術後3年のフォローアップ
図3 症例2:ステントと血管壁への圧着の評価
3.症例提示:ステント内側の評価
症例3は,ステント留置後のフォローアップの血管撮影にて,術直後と比べてステント内腔のわずかな狭窄を認めた。CBCTでは内膜の肥厚を認め(図4 a→),PCD-CTでも同様の所見であった(b→)。
PCD-CTを用いることで,造影CTでもこのようなわずかな異常をとらえられることは,大変有用である。そのため,当院では,以前は必ず術後6か月と2年に血管撮影を施行していたが,最近では術後6か月にPCD-CTを併用し,問題がないと判断した場合は,2年後はPCD-CTで異常を認めた症例のみ,血管撮影を施行するという運用に変更した。
図4 症例3:ステントの内膜肥厚の評価
dAVFの診断・治療戦略を支援する動脈相 / 静脈相分離撮影
dAVFは,本来つながりのない硬膜動脈と脳の静脈に連絡が生じ,静脈還流障害を生じる疾患である。そのため,dAVFの治療方針の決定においては,静脈の詳細な評価がきわめて重要となる。血管撮影では通常,内頸動脈撮影を行うと静脈洞が描出されるが,シャントによって血流が高速になると静脈洞が描出されづらいことがある。そこで,当院では,PCD-CTにてマスク画像用の単純CT,造影CT動脈相(CTA:上行大動脈prep直後に撮影)および静脈相(CTV:CTA撮影4秒後に頭頂部〜大動脈弓部を撮影)を全例で撮影し,これらの比較,および血管撮影を併せて評価を行うことで,dAVFの診断に役立てている。
症例4は,medial側とlateral側のテント部にシャントのあるdAVFの症例である。図5はPCD-CTの画像であるが,サブトラクション動脈相の画像では,動脈のCT値と,逆流している静脈のCT値はほぼ一致している(a○)。一方,静脈相の画像では,順行性に還流する皮質静脈と,本来正常な還流静脈のCT値は一致するのに対し,病変部の静脈もしくはシャント部位のCT値は低下している(図5 b○)。この差を利用することで,正常に還流する静脈と逆流している静脈を見分けることが可能となる。シャント部位近傍の静脈は逆流している可能性があるが,動脈相の画像(図5 a)ではCT値は高くなく(▲:右側),逆に静脈相の画像(b)ではシャント部位よりCT値は高く(○:左側),正常還流であることがわかる。
当院にて,正常および逆流還流の血管内CT値を比較して検討したところ,動脈相では正常還流よりも逆流還流の方がCT値が高く,逆に静脈相では正常還流の方が逆流還流よりもCT値が高いという逆転現象が起きていることがわかった2)。また,CT値を基に,逆流還流,正常還流,シャント部を色分け表示した画像を作成することで,複雑な還流の状態の理解を深めることができる。
図5 症例4:PCD-CTによるテント部dAVFの静脈の評価
まとめ
PCD-CTでは金属アーチファクトが大幅に低減されるため,flow diverter stent治療の術後評価において,従来CTでは判別しづらかったステント内外の詳細な評価が可能となる。
また,PCD-CTは,空間分解能はもとより時間分解能にも優れているため,読影の難しいdAVFの静脈の診断を支援するとともに,治療方針の検討においても非常に有用なツールである。
●参考文献
1)木寺信夫,他,第39回日本脳神経血管内治療学会学術集会,2023.
2)山下航弥,他,第39回日本脳神経血管内治療学会学術集会,2025.
西川 祐介(Nishikawa Yusuke)
2003年 名古屋市立大学医学部卒業。2008年 国立循環器病研究センター脳神経外科専門修練医。2010年 名古屋市立大学脳神経外科。2019年 ロスチャイルド病院神経放射線科に留学。2024年~名古屋市立大学脳神経外科講師。
