NAEOTOM Symposium 2025

2026年4月号

NAEOTOM Alphaの臨床アドバンテージ

循環器領域

酒井孝志郎(昭和医科大学医学部内科学講座循環器内科学部門)

酒井孝志郎(昭和医科大学医学部内科学講座循環器内科学部門)

本講演では,循環器領域,特に冠動脈疾患におけるフォトンカウンティングCT(PCD-CT)「NAEOTOM Alpha」の臨床的アドバンテージについて報告する。

冠動脈CTの臨床的位置づけ

本邦のガイドラインでは,冠動脈病変の検査前確率が中等症以上の患者に対する診断確定目的での冠動脈CTについて,エビデンスレベルA,クラス1で非常に高く推奨している1)。これは欧州,米国を含め世界各国でも同様である。その中で,CT保有大国である本邦は恵まれており,欧米諸国と比較して日常臨床の中で冠動脈CTを施行することが容易な環境にある。このような状況により,冠動脈CTによる診断を行い,冠動脈病変が疑われた場合には,さらに光干渉断層撮影(OCT)や血管内超音波(IVUS),冠血流予備量比(FFR),非高負荷圧比(NHPR)などの侵襲性の高い精査を経て,冠動脈インターベンション(PCI)を施行することが日常臨床でのワークフローとなっている。
近年,このワークフローがホットトピックとなっており,冠動脈CTが従来の侵襲性の高い検査を置き換える可能性について検討が進んでいる。主なものとして,冠動脈CTデータを多様なアプリケーションで解析し有用な情報をまとめた「CTパッケージ」を作成し,それに基づいた治療戦略を策定する「CT-guided PCI」という概念が欧米を中心に広がっている。本邦においても,治療戦略を立案するためのツールとして冠動脈CTの活用が注目されている。このような中で留意すべきなのは,CTはイメージングデバイスであり,画質がその後の評価の質にも影響することである。そのため,冠動脈CTの最適な撮影プロトコールを作成し,高精度な画像を取得することが重要である。高精度な画像を取得する上で課題となるのが,アーチファクトである。冠動脈CTの場合,モーションアーチファクトや石灰化に起因するブルーミングアーチファクト,ノイズなどが,詳細な評価を妨げる一因になる。

PCD-CTの革新的な技術進歩とクリニカルインパクト

冠動脈CTの活用に関心が高まる中,PCD-CTのNAEOTOM Alphaが登場した。PCD-CTは非常に高い空間分解能を有しており,従来のEID-CTでは250〜500μmであるのに対し,110〜240μmに向上している。これは血管撮影装置の200〜300μmを上回り,IVUSの100〜200μmに迫る空間分解能である(図1)。この優れた空間分解能によりノイズやアーチファクトの低減を図れ,高精度で詳細な画像の取得が可能となる。
そこで,われわれは,冠動脈領域におけるPCD-CTのクリニカルインパクトについて検討を行った2)。本研究では,実臨床におけるPCD-CTによる冠動脈評価のクリニカルインパクトについて,EID-CTと比較している。シングルセンタースタディとして7833例の冠動脈CTをレトロスペクティブに解析した大規模コホート研究である。
本研究では,鑑別困難症例が, EID-CTの12.9%と比較してPCD-CTでは8.9%と有意に低減した。また,診断能が向上したことで,冠動脈カテーテル検査の施行率が,EID-CTの13.1%から9.9%へと有意差をもって減少した。さらに,追加の検査とPCIを実施した患者の割合が,EID-CTの35.5%に対して,PCD-CTは43.4%と有意に高い結果となった。これらの結果から,PCD-CTは診断の精度を向上させて,不要な冠動脈カテーテル検査を減らすことができる可能性が示唆された。
本研究におけるPCD-CTとEID-CTの診断能について,冠動脈カテーテル検査の定量的冠動脈造影(QCA)解析との一致率を見ると,κ係数がEID-CTの0.70に対してPCD-CTは0.85で有意に向上していた。また,感度と陰性適中率に大きな差は見られなかったものの,特異度と陽性適中率はPCD-CTの方が有意に優れていた(図2)

図1 冠動脈イメージングにおける空間分解能

図1 冠動脈イメージングにおける空間分解能

 

図2 冠動脈病変におけるPCD-CTとEID-CTの診断能の比較(参考文献2)より引用改変)

図2 冠動脈病変におけるPCD-CTとEID-CTの診断能の比較(参考文献2)より引用改変)

 

PCIにおけるPCD-CTの可能性

PCD-CTは,冠動脈病変に対するEID-CTの課題を解決する可能性を有している。

1.石灰化病変評価
その一つが石灰化病変の評価である。PCD-CTは,EID-CTと比較して血管内腔を高精度にトレースし,石灰化も明瞭に描出することが可能である。Koonsらは,PCD-CTでは狭窄率が低くなる傾向があり,EID-CTと比較して10%程度低いと報告している3)。PCD-CTは空間分解能が向上したことで血管内腔を正確にトレースできるようになり,EID-CTでは狭窄率を過大評価していた可能性を指摘している。また,別の報告では,EID-CTでCAD-RADS(Coronary Artery Disease - Reporting and Data System)分類を行った症例に対して,PCD-CTで撮影して再分類すると,ダウングレードする症例が認められ,アップグレードする症例はなかったとしている4)。本報告では,QCA解析との比較でも,EID-CTよりPCD-CTの方が誤差が少ないという結果が得られた。
そこで,われわれは石灰化のある血管に対するPCD-CTの診断能を評価した2)。PCD-CTは狭窄率の高い石灰化を明瞭に描出できており,EID-CTと比較して特異度,陽性適中率が高く,診断能も優れていた(図3)。このように,石灰化病変の評価において,PCD-CTはEID-CTよりも優れたパフォーマンスを有している。

図3 石灰化に対するPCD-CTとEID-CTの診断能の比較(参考文献2)より引用改変)

図3 石灰化に対するPCD-CTとEID-CTの診断能の比較(参考文献2)より引用改変)

 

2.ステント内腔評価
われわれは,ステント内再狭窄(ISR)に対するPCD-CTの診断能について検討した5)。本研究では,シングルセンタースタディとして398例に施行した冠動脈CTをレトロスペクティブに解析した。その結果,陰性適中率が96.4%を示すなど,ステント内再狭窄に対して高い診断能を確認した(図4)。このことから,日常臨床においてもPCD-CTはステントの内腔評価に適応可能であると考える。また,ステントの内腔評価では,ステント径のサイズも重要となる。本研究では,ステント径3.0mm以上,3.0mm未満で診断能の評価を行い,κ係数,診断能いずれも有意差はなく,サイズによる影響はなかった(図5)

図4 ステント内再狭窄に対するPCD-CTの診断能(参考文献5)より引用改変) 

図4 ステント内再狭窄に対するPCD-CTの診断能(参考文献5)より引用改変) 

 

図5 ステント径のサイズによるPCD-CTの診断能(参考文献5)より引用改変) 

図5 ステント径のサイズによるPCD-CTの診断能(参考文献5)より引用改変) 

 

3.FFR-CTによる機能評価
FFR-CTにおいても,PCD-CTはEID-CTよりも高精度に解析できる可能性がある。PCD-CTとEID-CTのFFR-CT値に関する報告では,両者は良好な相関を示しており,PCD-CTの方が高値を示している6)。PCD-CTの高い空間分解能によってEID-CTよりも狭窄率を低く算出しており,EID-CTでは過大評価していた可能性がある。

まとめ

冠動脈CTの高度な解析技術を活用し,PCIの治療戦略に応用するCT-guided PCIが注目されている。EID-CTよりも空間分解能が向上したPCD-CTは,ノイズやアーチファクトを低減し,冠動脈病変に対して,優れた診断能を有している。PCD-CTは従来のEID-CTで限界があるとされていた石灰化病変やステント内病変の評価においても,限界を克服する可能性があり,CT-guided PCIの有用なツールとなりうる。

●参考文献
1)Nakano, S., et al., Circ. J., 86(5): 882-915, 2022.
2)Sakai, K., et al.,  J. Am. Coll. Cardiol., 85(4): 339-348, 2025.
3)Koons, E. M., et al., J. Cardiovasc. Comput. Tomogr., 18(1): 56-61, 2024.
4)Vecsey-Nagy, M., et al., Cardiovasc. Imaging, 17(10): e017112, 2024.
5)Shin, D., et al., EuroIntervention, 21(19): e1137-e1146, 2025. 
6)Vecsey-Nagy, M., et al., Eur. J. Radiol., 181 : 111797, 2024.

 

酒井孝志郎(Sakai Koshiro)
2012年 昭和大学(現・昭和医科大学)卒業。2014年 同大学医学部内科学講座循環器内科学部門入局。2021年 Onze-Lieve-Vrouw ziekenhuis Cardiovascular Center Aalst,Research fellow。2023年 St. Francis Hospital and Heart Center, Senior research fellow。2025年〜昭和医科大学医学部内科学講座循環器内科学部門講師。

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