Intelligent CT『SOMATOM X.cite』Exciting Report

2021年10月号

松阪中央総合病院 Intelligent CT導入で検査の自動化・高画質化を図り大学病院と連携した質の高い画像診断で地域に貢献 ─「FAST 3D Camera」によるポジショニング自動化で検査の標準化と時間短縮を実現

後列右から浅野小葉技師,坪井茂樹技師長,村嶋秀市部長。後列左から2人目が大倉雄斗技師。

後列右から浅野小葉技師,坪井茂樹技師長,村嶋秀市部長。
後列左から2人目が大倉雄斗技師。

 

Siemens Healthineers(シーメンス)が,これまでの知見と技術に人工知能(AI)技術を融合することで,最適な検査の実施と一貫性のある結果の提供を可能にした「SOMATOM X.cite」。本シリーズでは,この“Intelligent CT”が臨床現場をどのように革新しているかを紹介してきた。最終回となるScene 6では,大学病院との連携による質の高い画像診断で地域医療を支える松阪中央総合病院における,検査の標準化とスループット向上,Dual Energy CTの臨床活用などを紹介する。

三重大学放射線科と連携し心臓CTの取り組みを本格化

松阪中央総合病院は,地域医療支援病院や地域がん診療連携拠点病院などの指定を受け,開業医と連携しながら地域医療を支えている。心臓血管・消化器・乳腺領域のセンター化で専門性の高い医療を提供するほか,救急医療にも注力している。市内の基幹3病院で輪番制としている夜間救急は月の約半分を同院が担当する。2020年は救急車受け入れが約6100件(時間外が約4200件),応需率は98%と断らない救急を実践しており,さらなる救急体制強化のために現在,救急外来の拡張,救急病棟の新設などの増改築工事が進められている。
放射線部門は,放射線科医4名,放射線治療科医2名,診療放射線技師26名で構成される。三重大学放射線科の関連病院として,大学と密に連携して診療を行っていることが特徴だ。診療部長も務める村嶋秀市放射線科部長は,「大学からは毎日医師を派遣してもらい,高いレベルの画像診断を担保しています。また,三重大学放射線科は心臓領域に力を入れて先進的に取り組んでいますので,当院でもそれを引き継いで,心臓CT,心臓MRIを行う環境や体制を整えているところです」と述べる。
同院では2台のCTが稼働し,64列CTで心臓検査を行ってきたが,心臓検査への取り組みを本格化するに当たり,より確実に心臓CTを施行できる装置が求められた。そこで,16列CTのリプレイスとして2021年3月に導入されたのが「SOMATOM X.cite」である。

検査の標準化と時間短縮を図る「FAST 3D Camera」

装置選定について坪井茂樹技師長は,「心臓CTへの対応に加えて,医師からはより低線量で撮影できる装置が求められました。また,救急の受け入れも多いことから,息止めができないなど,さまざまな条件の患者に対応できることもポイントでした」と話す。SOMATOM X.citeは,息止め不可にも対応可能な回転速度を有し,最大管電流1200mAを実現する大容量X線管「Vectron」による低管電圧撮影や,独自の“Tin filter technology”で低被ばく撮影が可能となっている。ガントリ開口径は82cmと広く,体格の大きい患者だけでなく,体位に制限がある救急や高齢の患者の検査も安全に施行できる。
現在は2台のCTを臨機応変に運用しており,SOMATOM X.citeでの検査件数は,造影検査を中心に行う日は約30件,単純CTのみの日は70件ほどになる。SOMATOM X.cite専任の大倉雄斗技師が中心となって操作しながら,ほかのスタッフのトレーニングを進めている。SOMATOM X.citeは,AI技術の活用でワークフロー改善や技師の経験レベルに依存せず一貫性のある検査を行えることが大きな特長であり,同院では患者ポジショニングを自動化するFAST 3D Cameraを導入した。大倉技師は,「FAST 3D Cameraはほぼ全例で使用しており,ポジショニングが非常に楽になったとスタッフからも高評価を得ています。自動で高精度にポジショニングされるため,新人でもトポグラムの撮り直しが大幅に減少し,技師間の差がなくなり検査が標準化されました」と話す。
ポジショニング自動化に加え,タブレット端末を用いた患者登録や位置決め,画像確認などによりトータルの検査時間が短縮しており,当日の飛び込み検査が多い日にも患者を待たせることが少なくなっている。

高画質化と自動化で画像処理・読影の効率が向上

SOMATOM X.citeによる検査では従来よりも撮影線量を下げ,再構成スライス厚も1.25mmから1mmへと変更した。村嶋部長は画質について,「線量を落とし,スライスを薄くしているにもかかわらず,ノイズが少なく画質が大きく向上しました。CTは撮影後1時間以内にレポートを作成するため次々と読影するのですが,高画質のためストレスなく読影できています。また,心臓CTについても大学の心臓専門の医師から高く評価されています」と評価する。
心臓検査はボーラストラッキング法を使用できることで,確実かつ迅速な撮影が可能になり,検査スループットが向上した。撮影後は,自動解析される冠動脈主要3枝のCPRで静止具合をチェックしている。そのほか,“ALPHA(Automatic Landmarking and Parsing of Human Anatomy)Technology”による自動画像再構成について大倉技師は,「技師が手作業で行っていたOMラインに合わせた頭部画像の作成や各部位での3断面MPR画像の作成が自動で行われるため,すぐに次の検査に移ることができます。作成し忘れるというヒューマンエラーもなくなり,スループットが向上しています」と話す。
また,人間ドックの低線量胸部CTではTin filter technologyにより画質の向上を図るなど,SOMATOM X.citeをスクリーニングから診断まで活用することで,画像診断のレベルアップを実現している。

SOMATOM X.citeが臨床にもたらす付加価値

新たにDual Energy CTが可能になったことも,臨床に大きなメリットをもたらしている。脳神経外科からは,血管内治療後の仮想単純画像(DE Virtual Non Contrast)による出血と造影剤の鑑別が高く評価されており,術後の検査項目に加えられた。また,物質弁別画像による尿管結石の成分推定や,圧迫骨折の新鮮/陳旧性の鑑別にも活用している。村嶋部長は,「特に尿管結石の診断では,尿酸結石と非尿酸結石を明確に弁別できるため信頼性が高く,迷わずに診断できます。当院ではDual Energy CTはまったく新たな取り組みでしたが,その有用性を実感していますし,技師のモチベーションも向上しています」と述べる。また,被ばく低減のために単純撮影を省略して造影CTのみでオーダされる小児検査において,仮想単純画像を併せて提供していくことを検討しているという。
このほか,低管電圧撮影による造影剤量低減にも取り組んでいる。浅野小葉技師は,「腎機能低下例では造影剤を半減しながらノイズの少ない良好な画像を得られています」と話す。血管病変に関しては,腎機能正常例でも造影剤低減を検討中で,検査のさらなる低侵襲化に期待が集まっている。

症例

■症例1:左下肢急性動脈閉塞症例(a)
左下肢のしびれ感,疼痛,感覚障害で救急要請。エコーで左下肢動脈近位部,左心耳内に血栓の所見を確認。胸部~下肢の造影CTで評価をしたいがeGFR 28.6mL/min/1.73m2と腎機能が悪く,検査後Angioになる可能性もあるため,造影剤低減の相談あり。管電圧 80kVを使用することで造影剤量を従来の50%減で対応。大動脈のCT値は350HUと十分に診断可能なコントラストが得られ,腹部大動脈~左総腸骨動脈,および心耳内に血栓とみられる増強不良域が確認された。この心内血栓が下肢動脈の塞栓源になっていると考えられた。
■症例2:左大腿骨転子部骨折症例(b)
救急外来にて左大腿骨骨折疑い。一般撮影では骨折線がはっきりせずDual Energy CTにて撮影(100kV/Sn150kV)。左大腿骨転子部骨折あり。DE Bone MarrowのVirtual Non Ca画像にて浮腫成分の比率の高い画像を提示したところ,当直帯で専門外の医師への読影補助となり喜んでもらえた。

 

装置のポテンシャルを引き出し質の高い診療で地域に貢献

SOMATOM X.citeの導入から約5か月,同院では次のステップとして検査ガイド機能“myExam Companion”の運用をめざして準備を進めている。大倉技師は,「“検査を標準化するAI技術の活用”というSOMATOM X.citeの特徴を生かして,スタッフの誰もが均一で高い品質の画像を提供できるようにしたいと思います」と述べる。村嶋部長は,「今はまだフル活用をめざす途上段階ですが,装置性能を十分に引き出して大学との連携を強化し,さらに検査のレベルを上げていきます」と意気込む。SOMATOM X.citeを活用した質の高い診療が,これからも地域を支えていくだろう。

(2021年8月3日取材)

myExam Companion Use Case

エキスパートの思考に沿って一貫したクオリティの検査を実現

CT検査を行う際には,患者ごとに最適な撮影条件の選択が必要となる。この「最適な撮影条件の選択」はさまざまな経験値のオペレーターに日々求められるタスクであるが,熟練のオペレーターが経験値を基に無意識にさまざまな判断を行っている一方で,不慣れなオペレーターにとっては負荷を感じるものでもある。これに対してmyExam Companionでは,エキスパートの思考に沿ってディシジョンツリーを設定することで,不慣れなオペレーターも質問に答えるだけで容易にエキスパートと同様の運用が可能になる(下図)。myExam Companionでは撮影条件だけでなく,撮影後の再構成条件,解析内容なども設定して自動化することが可能だ。
松阪中央総合病院では現在,myExam Companionの運用開始に向けて,大倉技師がエキスパートの思考回路を組み立てて準備を進めている。心臓CTでの活用も予定しており,本格化する心臓検査に貢献することが期待される。

CTエキスパートの思考

 

松阪中央総合病院

三重県厚生農業協同組合連合会
松阪中央総合病院
住所: 三重県松阪市川井町字小望102
TEL:0598-21-5252
URL:http://www.miekosei.or.jp/1_mch/
病床数:440床
診療科目:22科

 

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