Intelligent CT:SOMATOM X.cite Exciting Report(2021年11月号)

月刊INNERVISION AI特集 AI技術を用いたモダリティ,ソフトウエア,サービスの実力

ニューノーマルCT—AI活用技術搭載「SOMATOM X.cite」の使用経験

山下 礼(遠賀中間医師会おんが病院放射線科)

導入の背景

遠賀中間医師会おんが病院は,2007年に急性期病院として開院し,病院の建設とともに高次医療機器も新規購入することとなった。その際に,シーメンス社製Dual Source CT「SOMATOM Definition」を導入した。
それから13年経過した2020年,SOMATOM Definitionの更新を検討した際,2つの点を重視することとなった。1つ目は,Dual Source CTという非常に高性能な装置を導入していたため,更新する装置でも同等以上の画像診断の質を保持できる必要があった。具体的に述べると,dual energy imagingや心臓領域の画質を担保可能な装置が求められた。2つ目は,保守契約についてであった。SOMATOM Definitionは,Dual Source CTであるからこそのメリットと引き換えに,2個分のX線管を含む保守契約を結んでいたため,Single Source CTと比べるとどうしても維持費が高額となりがちであった。今後10年以上使用していくことを考えると,これらのコスト削減は病院においても非常に重要な選定要素であった。
医療技術の進歩とともに,各メーカーさまざまなdual energy imagingの手法,検出器の多列化,人工知能(AI)技術を搭載していた。その中でも,画像のノイズ低減といった部分だけではなく,検査全体にAI技術を用い,診療放射線技師個人間の検査の差をなくすことが可能で,さらに上記2点の問題をクリアできるCTとしてシーメンス社製「SOMATOM X.cite」が選定された。そして,2020年8月,ヨーロッパ,アメリカ,オーストラリアに続くアジア1号機として,当院に導入されることとなった。

製品の特徴

SOMATOM X.citeに搭載されているX線管は,シーメンス社製のフラッグシップモデルであるDual Source CT「SOMATOM Force」と同じ「Vectron」が搭載されている。管電圧は70〜150kVまで10kVごとに設定が可能であり,造影剤量を低減した検査や,150kgを超えるような大柄の患者でも画質に妥協することなく撮影を行うことが可能である。最大管電流は1200mA,常時0.5mm2以下という非常に小さい焦点サイズで撮影可能である。SOMATOM Definitionに搭載されていた,当時最高峰であったX線管「Straton」をはるかに上回るスペックのX線管である。
また,検出器は可能なかぎりノイズを低減した「Stellarinfinity Detector」,逐次近似再構成は“ADMIRE”を搭載することにより,空間分解能,低コントラスト検出能,撮影時間など,すべてにおいて向上し,画質の向上につながっている。
ガントリのボア径と最大再構成FOVは820mm,テーブルの最大荷重は307kgと,体格,体位に制限されることのない設計になっている(図1)。

図1 SOMATOM X.citeとSOMATOM Definitionの仕様比較

図1 SOMATOM X.citeとSOMATOM Definitionの仕様比較

 

検査準備段階のAI技術について

検査準備段階では,AI技術を活用した「FAST 3D Camera」による患者ポジショニングの自動化から始まり,患者ごとに画質と被ばくを最適化したCT検査を実現することができるようになっている。FAST 3D Cameraによって,患者の三次元情報が取得され,検査部位に応じて適切なテーブル高が決定される。この時,位置決め画像取得のための撮影範囲も自動的に設定されるため,精度良くガントリ中心にポジショニングされるだけでなく,撮影開始位置へのテーブル送りも同時に行われる。患者ポジショニングについては,一貫性のある診断結果を導くためにも,線量不足・過多による画像ノイズの増減やCT値の不確実性を最小限に抑えることが重要となっている。
FAST 3D Cameraは,ディープラーニングを利用したAIを採用することで,人による患者ポジショニングと比較して誤差やバラツキが少なく,腹部領域に関しては平均数mmの誤差で,正確に患者ポジショニングが可能となっている1),2)。加えて,安全機構として,撮影プロトコールに設定されているヘッドファーストやフィートファースト,および仰臥位や腹臥位などの患者ポジションとの相違があった場合に,アラートを通知する機能が搭載されている。造影検査においては,誤った方向へのテーブル移動によってチューブが引っ張られるなどの危険を回避し,また,再撮影による被ばくの増大を防ぐことができる。体動検知機能もあり,ポジショニング中に患者が動いた場合でも対応する。また,テーブル高に影響されることなく使用できるため,さまざまなシーンで確実に精度良く検査が行える。
AIによって患者を認識し,最適なポジショニングで撮影することは,診療放射線技師間での位置合わせによる被ばく差をなくすことにもつながり,従来と比べて線量管理システム上での被ばくの最適化が保たれていることも確認できている。

検査中のAI技術について

専用のWi-Fi接続されたタブレット端末を使用したワークフローは,RISから取得した患者情報を表示できることはもちろん,さまざまな要素が盛り込まれている。コンソールとリンクしており,患者選択・登録から撮影プロトコールの選択,撮影範囲の設定や画像確認を行うことが可能である。聴覚障害にも対応しており,タブレットにて呼吸タイミングをイラストにより説明が可能である。さらに,呼吸タイミングはガントリ本体に表示されるので,患者もわかりやすい。患者情報,画像表示もワンタップで非表示設定になるので,個人情報の漏洩も守られている。
経験した中で最もAIを活用した検査の有用性を感じたのが,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)患者の対応・撮影である。軽症患者での検査の際,操作室での操作は以下のようになる。
(1) タブレットを用いて,FAST 3D Cameraにて寝台上の患者の様子を操作室内で確認
(2) コントロールボックスにて移動ボタンを押し,患者を撮影開始位置まで移動
(3) 撮影(撮影中のAI技術は,次項「検査全体を通して活用されるAI技術について」に記載)
撮影終了後はコントロールボックスの移動ボタンを押し,ホームポジションに戻す。
以上の手順により検査が完了する。
検査室内のスタッフは寝台に寝かせるだけでよいので,患者に触れる回数を最低限にでき,また,CTガントリ本体には一切触れずに検査が施行できる。機械への接触を最低限にできる上,準備時間も大幅に短縮できる。COVID-19患者の検査では非常に重要な要素をクリアできる運用であると感じた。

検査全体を通して活用されるAI技術について

装置の導入では,初期トレーニングでの習熟度が問題となる。当院では,待機体制であるため,導入直後より科員全員がCT装置を使用できることが条件となった。SOMATOM X.citeでは,最新のAI技術により,そのような初期トレーニングが大幅に短縮できた。
SOMATOM X.citeでは,“myExam Companion”と名づけられたAI技術により,CT装置側から出される質問に答えていくだけで最善の検査方法に導いてくれる。管電圧,管電流,ローテーションタイム,ピッチなど,さまざまな設定は,新人やCTを専門に操作していない診療放射線技師には非常に難しい。その設定をAI技術により自動化し,誰が撮影しても熟練の診療放射線技師が撮影したのと同等な結果を提供することを可能としている。これらの人が悩む時間がなくなることで,従来と比べても大幅な検査時間短縮,および患者への手厚いケアにもつながっている。
検査開始後も,FAST 3D Cameraでの位置把握により,最適な範囲のみの位置決め画像が撮影されるため,スキャン過多なども抑制される。本スキャンの撮影範囲も“FAST Planning”により推奨撮影範囲が設定される。金属の有無などもCT装置が位置決め画像から認識し,アーチファクトの低減につながるように検査をナビゲートする。検査後の画像作成段階では,“Inline technology”により患者ごとの解剖学的体位をCT本体が自動で認識した上で,最適な断面の画像を自動再構成する。Inline technologyはこれらの過程を完全自動化,もしくは一部のみ手動といったように,施設に合わせた設定が可能になる。フォローアップ検査で前回と異なる診療放射線技師が撮影を行ったとしても,スムーズに前回と同じ断面の画像を提供できる。従来はワークステーションで行い,個人間の差が問題となっていた心臓の解析や頭部のパーフュージョン解析,dual energyの処理なども,CT本体で自動作成し転送ができるため,検査終了後の作業時間を大幅に短縮し,より安定した結果の提供が可能となる。これらの機能は,シーメンス社が開発したAI技術の一つである“ALPHA Technology”3)が基となり,ポストプロセスの大幅改善に貢献している(図2)。

図2 myExam Companionの概念図

図2 myExam Companionの概念図

 

心臓撮影時のAI技術について

心臓検査については,タブレットを用い,呼吸停止練習ごとに心電図(ECG)をAIが自動解析し,最適なプロトコールを選択する。検査終了後はInline technologyによって,冠動脈のCPR画像,全体3D画像が自動的に再構成される。これにより,検査終了後,すぐに緊急治療の必要の有無が判定できる。
以前のDual Source CTと比べると時間分解能は落ちているが,心拍数を考慮した上で最適な撮像プロトコールを選択してくれるため,画質向上,被ばく低減,造影剤量低減などのさまざまなメリットが得られることとなった。特に,低管電圧撮影は優れており,被ばく低減,コントラスト向上,造影剤量低減の効果を確認することができた。以前に比べ,平均で被ばく線量は50%減,造影剤量は30%減を達成している(図3)。
今後もSOMATOM X.citeが可能なさまざまな撮影方法を検討し,患者に負担の少ない検査を提供していきたい。

図3 SOMATOM X.citeによる低管電圧撮影(心臓CT)

図3 SOMATOM X.citeによる低管電圧撮影(心臓CT)

 

Dual energy撮影時のAI技術について

dual energy撮影については,解析はすべてCT本体にてできるようになった。また,これらの解析は前述のAI技術であるALPHA Technologyも活用されているため,dual energyだからといって後処理に時間がかかるといったことはなくなった。
以前は,80kVと140kVのイメージデータを専用の端末にて解析していたが,dual energy撮影によって得られる各種スペクトラル情報をコンパクトに1つのファイルにまとめたSPP(Spectral Post Processing)データフォーマットにより,通常のCT画像を観察するのと同様に,これまでのワークフローを変更することなく,スペクトラル画像の画像表示と解析が可能になった。シーメンス社のSPPデータフォーマットは,ビューイングツールに読み込むだけで,mixed画像,“Monoenergetic Plus”によってノイズ低減された仮想単色X線画像や,ヨード密度画像,仮想非造影画像を自由に観察することができる。スライス厚やウインドウレベル,mixed画像の混合率,仮想単色X線画像のエネルギーレベル,画像の表示方向は任意にリアルタイムで変更可能となった。
従来と比べて,検査後の確認・解析の有用性が格段に向上している上,短時間で行えることにより,検査の合間での解析も可能になった。

救急撮影時のAI技術について

救急撮影時では,2台あるタブレット端末の1台を救急医に渡し,検査を開始する。タブレット端末は,FAST 3D Camera,myExam Companionなどの表示機能だけではなく,リアルタイム画像表示機能も有しているため,撮影時の画像確認用としても活用している。
救急時の画像の確認は急務であるが,迅速な画像再構成も同様に重要である。コンソールが1台であれば,だいたいは救急医の画像の確認が優先されるため,画像処理は後になる。確認と処理が同時に行えることは,次の処置への大幅な時間短縮につながる。
頭部領域では“ASPECTS Scoring”,胸部領域では“Lung CAD”,心臓領域では“CaScoring”などの自動化されたAI技術も搭載されており,医師の主観による見落としやバラツキを少なくするため,診断の助力になっている。

まとめと将来展望

今回は,AI技術搭載CT SOMATOM X.citeの使用経験を紹介した。この装置には,まだまだ多数の可能性があり,組み合わせによりさらに有用な検査方法を構築できる。アプリケーション,サービスはリモート対応,また,ソフトウエアも含めさまざまなリモートアップデートを行っており,今のCOVID-19拡大の状況下にも非常にマッチしていて,今後さらに活用されるところであると感じた。
今後の開発の展望としては,AI搭載のFAST 3D Cameraや撮影寝台を利用して,身長・体重の計測などができるようになると,治療開始までの時間短縮,患者の取り違い防止などに有用であると感じた。また,全世界のシーメンス社製装置の情報が共有されることにより,疾患に最適なプロトコールをAIが選択し,検査ができることも期待する。
一方,AI技術により自動化されるとはいえ,有用な検査方法を構築するためには,基本の操作・設定をしっかりと理解し応用していく必要があることも実感した。最終的な判断はAI任せではなく,人間で行うというのはどの分野でも重要なことだと考える。
さまざまなAI技術により,検査時間,解析時間の効率化を図れ,業務時間の改善にも貢献できる。このような技術が標準化されることにより,医療現場でのCT検査の必要性をさらに高めることができる装置である。2021年は,SOMATOM X.citeが新しいCT様式になることを予想している。

●参考文献
1)Saltybaeva, N., et al. : Precise and Automatic Patient Positioning in Computed Tomography : Avatar Modeling of the Patient Surface Using a 3-Dimensional Camera. Invest. Radiol., 53(11): 641-646, 2018.
2)Booij, R., et al. : Accuracy of automated patient positioning in CT using a 3D camera for body contour detection. Eur. Radiol., 29(4): 2079-2088, 2019.
3)Yan, Z., Zhan, Y., Peng, Z., et al. : Body part recognition using multi-stage deep learning. Inf.
Process. Med. Imaging, 24 : 449-61, 2015.

(月刊INNERVISION 2021年1月号 掲載)
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