技術解説(シーメンスヘルスケア)

2018年7月号

医療関連メーカーのAI開発最前線

医療における人工知能技術の応用

伊藤 徹也[シーメンスヘルスケア(株)デジタルサービス事業部]

人工知能(AI)の理論は古くから研究されてきたが,深層学習といった新たな手法でコンピュータが行う「学習」がより人間に近くなり,その学習速度もコンピュータの処理能力向上に伴い現実的なものになってきた(図1)。その良い例が,2012年にGoogle社が発表した猫の画像の自動認識である。
Siemens Healthineersでも,いち早く医療分野における人工知能の開発と応用に取り組んできた。当社は,学術研究機関などから提供された約2億5000万件以上の医療画像を,強力な演算能力を持つ設備を用いて研究開発および検証を進めている。
Siemens Healthineersの人工知能に関する特許数は世界でもトップレベルであり,Siemens Healthineers内の研究だけでも,機械学習分野で400件以上の特許および特許応用があり,そのうち75件が深層学習に関するものである。

図1 人工知能の概念 人工知能という大きなくくりの中に,機械学習と深層学習がある。

図1 人工知能の概念
人工知能という大きなくくりの中に,機械学習と深層学習がある。

 

■人工知能技術の臨床応用

Siemens Healthineersでは,人工知能技術の応用分野を4つの領域に分けて考えている。1つ目は検査装置やその画像再構成などの検査装置の領域,2つ目は画像自動認識による読影サポートや自動処理などの画像診断の領域,3つ目は既往歴などに基づく疾患リスクや疾患予測などの患者個人の領域,4つ目は患者を集団としてとらえた集団の領域である(図2)。すでにいくつかの応用が製品に組み込まれている。
例えば,検査装置の領域での例として,CT検査において正確なポジショニングをサポートする「FAST 3D Camera」がある。寝台の上部に取り付けたカメラにより被検者の寝ている方向を認識し,誤りがあれば正しい方向に誘導したり,アイソセンターがFOVの中心になるように寝台の高さを自動調整するなどの検査のサポートを行う。
また,画像診断の領域では,“ALPHA Technology”による検査画像の部位や臓器の自動認識技術がある。本技術はsyngo.viaにすでに組み込まれ,例えば,肩の部位を自動認識し最も適切な断面像を自動表示するなど,さまざまなアプリケーション上で利用されている。

図2 人工知能技術の4つの領域

図2 人工知能技術の4つの領域

 

■将来展望

撮像装置や画像診断装置の領域において,深層学習を用いて開発された製品の普及が進んでいる。今後数年で,さらにさまざまな新製品が深層学習を生かしたものとなるだろう。患者の臨床データと検査画像から診断レポート作成をアシストすることで読影医の業務改善に寄与したり,患者個々の検査・治療計画立案をサポートすることで個別化医療の提供を支援していくことが期待される。
加えて,患者個人や患者集団の領域で,人工知能を応用したツールなどが出てくることが期待できる。過去の診断・治療実績,最新の診断画像や他の検査情報など,複合的な情報から患者の疾患リスクを医師へ提示したり,特定の疾患において一般的に行われる検査や処置,処方を提示することで,標準化の促進や注意を事前喚起するような機能などが考えられる。集団レベルでは,生活習慣や疾患リスクなどから患者集団を特定グループに分け,その集団ごとに定期的な検査を促したり,行動変容を働きかけたりするような応用も考えられる。
医療は専門領域が深く多岐にわたり,要求される知識の量も多いため,人工知能技術の活用は診断エラーの低減に大きく貢献すると見ている。人工知能技術の医療分野への応用は,医療従事者の大きな助けになり,患者個人にとっても正確で個別化された医療というメリットをもたらすだろう。

 

【問い合わせ先】
コミュニケーション部
TEL 0120-041-387
URL https://www.healthcare.siemens.co.jp

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