技術解説(シーメンスヘルスケア)

2019年6月号

US Today 2019 超音波検査・診断最前線

高度肥満患者の肝硬度計測を可能にする超音波トランスデューサの開発

斎藤 雅博[シーメンスヘルスケア(株)超音波事業本部ジェネラルイメージング超音波マーケティング推進部]

■臨床適応が進む肝硬度計測

超音波エラストグラフィによる肝硬度計測は,肝炎患者の肝線維化の程度を非侵襲的に,簡便に測れることから臨床適応が進んでいる。
一般に,肝臓疾患といえばウイルス性肝炎やアルコール性肝障害が中心であったが,近年はそれらに関係なく発症する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が増加している。これらの疾患では,線維化が進行すると予後が不良となり,発がんリスクなども高まるため,肝硬度計測の適応が期待されている。
ところが,こうした疾患を持つのは肥満者が多く,皮下から肝臓までの距離が3〜5cmを超えることもある。こうなると分厚い腹壁が超音波パルスの伝播を阻害するため,従来のエラストグラフィの装置では計測が困難となっていた。

■超深部用トランスデューサの開発

腹部深部用トランスデューサ(Deep Abdominal Xducer:DAX)は,高度肥満患者を検査するために開発された。これは,従来の2倍近い開口を有し,超音波の送受信効率を高めている(図1)。最大視野深度は40cmである。そして,ポイント・シアウェーブエラストグラフィによる肝硬度計測は,最大14cmの深部まで可能になっている。
従来の装置では,皮下厚が2.5cmを超えるほどの肥満患者に肝硬度計測を行うと,計測値のバラツキが大きくなったり,計測不能となる場合が多かった。ところがDAXを用いた肝硬度計測では,皮下厚4.5cmの例でも安定した肝硬度計測が可能になった(図2)。

図1 通常の腹部用 トランスデューサ(a)とDAX(b)との比較

図1 通常の腹部用
トランスデューサ(a)とDAX(b)との比較

 

図2 高度肥満患者(NASH,皮下厚4.5cm)におけるDAXを用いた肝硬度計測 a:ポイント・シアウェーブエラストグラフィ b:2Dシアウェーブエラストグラフィ (画像ご提供:岩手医科大学消化器内科・黒田英克先生)

図2 高度肥満患者(NASH,皮下厚4.5cm)におけるDAXを用いた肝硬度計測
a:ポイント・シアウェーブエラストグラフィ b:2Dシアウェーブエラストグラフィ
(画像ご提供:岩手医科大学消化器内科・黒田英克先生)

 

■デュアル送信パワーユニットを採用した「ACUSON Sequoia」

分厚い皮下組織を貫いて深部の計測を可能としたのは,DAXの寄与によるところだけではない。これほどのスケールのトランスデューサを駆動するためには,従来の超音波診断装置のプラットフォームを一新する必要があった。
新開発のACUSON Sequoia(図3)では,高電圧の応答性の良いデュアル送信パワーユニットを採用し,発生させる超音波パルス波形の忠実度を高めることで,DAXの駆動を実現した。特に,シアウェーブエラストグラフィにおいては,生体深部の組織に力学的変位を与えてシアウェーブを発生させるためのプッシュパルスの形成が重要な要素となる。ACUSON Sequoia は,電圧降下のない理想的なプッシュパルスの生成が可能であり(図4),高度肥満患者の肝硬度計測を実現させた。

図3 デュアル送信パワーユニットを採用したACUSON Sequoia

図3 デュアル送信パワーユニットを採用したACUSON Sequoia

 

図4 ACUSON Sequoiaのプッシュパルス 従来のプッシュパルスは後半に音圧が低下していた(a)。ACUSON Sequoiaでは強靭なプッシュパルスを生成できる(b)。

図4 ACUSON Sequoiaのプッシュパルス
従来のプッシュパルスは後半に音圧が低下していた(a)。ACUSON Sequoiaでは強靭なプッシュパルスを生成できる(b)。

 

【問い合わせ先】
コミュニケーション部
TEL 0120-041-387
URL https://www.siemens-healthineers.com/jp/

TOP