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沼津市立病院 × DigitalDiagnost(フィリップスエレクトロニクスジャパン)
DigitalDiagnostの使用経験

2015-12-1

図1 散乱線補正のファントム実験

図1 散乱線補正のファントム実験

はじめに

当院は,「市民のために 共に歩む病院」を基本理念に,静岡県東部地域の基幹病院として医療を行っている。
一般撮影は,すべてCRにて撮影を行っていたが,2014年12月にフィリップス社製「DigitalDiagnost」を導入した。
装置の構成は,多目的撮影装置「VM」,臥位撮影装置「TH」,カセッテ型ワイヤレスポータブルディテクタ「SkyPlate(35cm×43cm,24cm×30cm)」FPD4枚のハイパフォーマンスモデルとなっている。

選定の具体的な案

装置の更新に当たり,次の要件を挙げた。
(1) FPDを導入すること。
(2) 従来,積極的に使用されていなかった撮影室の装置を更新すること。
(3) 救急外来に対応すること。
(4) 煩雑で撮影枚数の多い整形領域で威力を発揮できるような撮影システムを選定すること。
以上の条件を満たす装置に更新を行うことで,問題点であった患者待ち時間の短縮を図り,一般撮影全体の作業効率向上をめざした。

多目的撮影装置VM

当院が導入したDigitalDiagnostはリリース4であるが,それ以前より多目的撮影装置VMは撮影室内を水平方向移動が可能(ホリゾンタルムーブメント機能)であり,今回の選定の大きな決め手となった。現在,クロステーブル撮影,立位撮影,長尺撮影の主に3点の異なったポイントでの撮影が可能である。特に,整形外科領域では,立位撮影やクロステーブル撮影などが非常に容易になった。

散乱線補正処理“SkyFlow”

DigitalDiagnostに搭載されたSkyFlowは,散乱線除去用グリッドを使用せずに,胸部X線画像において,グリッド使用時と同等の画像コントラスト強調を患者ごとに実現する新たなデジタル画像処理である。コントラスト強調度は患者に合わせて自動調節され,グリッドを使用して撮影した画像とほぼ同等の高コントラストな画質が得られると言われている。
そこで,胸部ファントムとアクリル板を使用して,散乱線補正処理の挙動を確認した。胸部ファントムの前面に何も置いていない状態とアクリル板12cmを置いた状態を図1のように設置し,グリッドを使用しないときとSkyFlowをかけた画像のプロファイルカーブの比較を行った。測定のジオメトリも図1にまとめた。
図2aのグラフはファントムの前に何もない散乱線の影響の少ないときのグラフであり,図2bがアクリル板12cmをファントムの前に置いたときのグラフである。散乱線の少ないと思われるアクリル板のないときは,グリッドを使用しないときと比べSkyFlow画像のプロファイルカーブにあまり変化は見られないが,散乱線量が増えていると思われるアクリル板12cmのときのSkyFlow画像は,縦隔の辺りで大きくコントラストが改善されている。このことより,散乱線の量によって画像コントラスト強調を調節していることが確認できる。SkyFlowは,基本的に散乱線量が多いと画像コントラスト強調を強める傾向にあることがわかる。

図2 ファントム実験の結果

図2 ファントム実験の結果
a:アクリル板なし,b:アクリル板あり

 

おわりに

DigitalDiagnostを導入したことにより,整形外科領域のクロステーブル撮影などが新しいワークフローとして確立し,煩雑な撮影を担うことでほかの撮影室に余裕ができ,一般撮影全体の作業効率が大幅に向上した。1台の撮影装置に大きな期待をかけて導入したが,十分に応えてくれている。
SkyFlowは,技術的にまだまだ未知の部分もあるが,胸部グリッドレス撮影などでは問題なく使用でき,線量低減の可能性も示唆されるため,積極的に使用していこうと考えている。

髙城 正行(沼津市立病院放射線科)

 

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