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上尾中央総合病院における「DOSE」を用いた線量管理の実際 
佐々木 健(医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院放射線部)上尾中央総合病院 × DOSE(販売元:東陽テクニカ/開発元:Qaelum)

2019-11-20

被ばく線量管理ケーススタディ

はじめに

現在,2020年4月1日施行の「医療法施行規則の一部を改正する省令」に対応するために,おのおのでさまざまな準備がなされていると推察するが,その一つでもある,記録した被ばく線量を管理するということは,(1) 線量の多寡を画質と併せて評価する,(2) 安全な放射線診療であったか確認する,(3) 放射線診療の標準化を推進する,であると考えている。
本稿では,医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院での上記3つの取り組みについて紹介する。

施設紹介

当院は,埼玉県上尾市で地域に密着した医療を提供する総病床数733床,44標榜科の施設である。
主な放射線関連装置は,一般撮影装置7台,X線移動装置6台,外科用X線撮影装置4台,マンモグラフィ3台,X線TV装置6台,血管撮影装置3台(ハイブリッドORを含む),CT3台,MRI3台,核医学装置2台,放射線治療装置1台で,診療放射線技師は常勤60名である(2019年4月1日現在)。
また,日本診療放射線技師会が認定する「医療被ばく低減施設認定」を2010年2月に,全国17番目に取得しており,線量管理システムは2015年1月にGE社「Dose Watch」を導入している。さらに,2019年度より東陽テクニカ社が販売する線量管理システム「DOSE」(Qaelum社)の試運用を開始した。

線量の多寡を画質と併せて評価する

2015年に公表された日本の診断参考レベル(以下,DRLs 2015)は,全国調査の75パーセンタイル値を採用しているため,DRLs 2015以下の線量であることを確認し安心するのではなく,国際放射線防護委員会(ICRP)が示すALARAの原則にあるとおり,合理的に達成可能なかぎり低い放射線量で検査を遂行することが求められる。ただし,線量が低すぎて診断能を損なってしまうことがないよう注意が必要である。
このことを施設で恒常的に実践するためには,線量管理業務を一つのモダリティとしてとらえ,担当者を配置することが望ましい。当院では,日勤業務時間内に集計作業を行う時間をつくり,日本診療放射線技師会が認定する放射線管理士を担当者とし,毎月集計と分析を報告している(図1)。
線量管理システム導入のメリットとしては,この作業が簡素化されることにある。従来は,毎月のCT検査の線量情報を,PACSに保存してあるDose Reportを参照し分析していたが,線量管理システム導入後は転記,集計作業がなくなり,分析に時間をかけられるようになった。このことにより,より詳細な分析が可能となり,現場にフィードバックできている。線量が高かった要因の中で,多い項目である,「ポジショニング不適」や「体動による再撮影」に関しては,技術的指導が必要であると考え,別途対策を取っている。

図1 線量集計結果報告

図1 線量集計結果報告

 

安全な放射線診療であったか確認する

本稿での安全な放射線診療とは,放射線による傷害(確定的影響)が合理的に抑えられ,確率的影響が許容できるレベル以下であることとする。現在の放射線診療では,事故がないかぎり,放射線障害が発生することはないと考えるが,血管撮影装置を用いた一部の治療手技では皮膚障害が報告されている。したがって,皮膚障害を管理することが安全な放射線診療であると言える。管理方法としては,照射野ごとに透視線量と撮影線量を合算し,初期紅斑の閾線量である2Gy以下であるかを評価することが必要であるが,多くの手技が行われる施設では,1手技ごとに照射野ごとの皮膚を評価することは非常に困難であると考える。当院では,総線量が3Gyを超えた場合は照射野ごとの皮膚線量が2Gyを超えたかを評価している。線量管理システム導入前は,照射角度の割合を算出し,透視時間をその割合で補正し,透視線量率に乗じて求めていたが,DOSEでは,照射角度割合と皮膚線量マップをRadiation Dose Structured Report(RDSR)から求めることができるため,簡便に評価することが可能となった(図2)。
視覚的に皮膚線量を評価することが可能となり,患者の背部を観察する際,どこに注目して診察をすればよいかが一目瞭然で,皮膚障害の有無を精度良く検出することが可能である。

図2 DOSEの入射皮膚線量マップ機能

図2 DOSEの入射皮膚線量マップ機能

 

放射線診療の標準化を推進する

診療放射線技師は放射線の専門知識を生かし,医療現場で画像検査,検査説明,読影の補助,放射線治療,放射線機器管理,被ばく線量管理などを行っている。なかでも,診療放射線技師法第2条第2項から,放射線による撮影が最も重要であると解釈できる。撮影を行い,作成された画像は,いわば診療放射線技師にとっての商品であり,品質が問われる。高い品質の画像とは患者の診断に必要な情報を含んだ画像である。ここで問題となるのが被ばくであり,薬の“効果”“副作用”同様に“画質”“被ばく”を天秤にかけ,より少ない被ばくで高い診断能を持った画像を提供できるように診療放射線技師は心がけなければならない。
単に線量管理システムを導入し,集計を行っているだけでは,残念ながら管理しているとは言えず,集計データを基に質を管理することが求められる。
質を管理することとは「いつ,だれがやっても,同じ結果」を管理することと考えられ,撮影時にベテランの診療放射線技師がその知識と勘で体位を決め,撮影線量を決定し,被ばく低減をするのではなく,組織として撮影条件の決定方法を定めておくことが望まれる。
また,再撮影を管理することは,組織の総被ばく線量を低減することに大きく寄与するため,大変重要である。再撮影の原因を大きく2つに分けると,(1) 医師の望む診断能を有していない,(2) 機器不良による画像作成エラー,と考えられる。
(1) は体位不良や障害陰影,線量不足などヒューマンエラーの要因が強いため,再撮影となった原因を集計し,それに対する対策案を作成していくことが望まれる(図3)。

図3 小児CT検査における再撮影件数の把握

図3 小児CT検査における再撮影件数の把握

 

(2) は機械的要因なので防ぐことは難しいが,日常点検の徹底や不具合時の対応フロー作成,不具合や故障状況の周知などにより減らすことはできる。日常点検記録簿の集計も大切だが,線量管理システムで管理することにより,線量データと見比べることができ,いつから不具合が発生したか把握しやすくなる(図4)。
少々面倒なことであっても現場で実施してもらうことが質の向上につながり,DOSEは効率化に一役買うことができる。

図4 DOSEのログブック機能

図4 DOSEのログブック機能

 

まとめ

「働きアリの法則」や「2・6・2の法則」などの考え方にあるように,すべてのスタッフが高い意識を持って仕事に携わる組織をつくることは非常に困難である。したがって,質の向上を目的としたマニュアル整備が併せて必要である。下位の2割でもある「やるべきことがわからない人」「ルールを軽視する人」「自分の本来の仕事がわからない人」たち全員を戦力化できるよう行動管理と業務管理を徹底し,そこにあるのが“常識”となるようマニュアルを通じてマネジメントして,全体の平均値を上げることが望ましい。
撮影技術の習得や読影補助の能力向上は業務遂行に大変重要であるが,診療放射線技師の仕事の観点から考えれば,被ばく線量の管理も重要な業務である。ALARAの原則を基に,組織の環境において工夫を凝らし,被ばく低減のためにどのような活動をするか,しているかを明確にし,評価できるシステムづくりが求められる。
「医療法施行規則の一部を改正する省令」に対応するために,線量管理システムを導入するだけではなく,医療における放射線の専門家として,診療放射線技師の仕事として,被ばく線量を管理することが望ましいと考えている。
本稿では,管理の視点から取り組みの一部を紹介した。組織の被ばく線量低減活動の一助になれば幸いである。

 

 ヘルスケアIT展

 

●関連リンク
東陽テクニカ 線量管理システム『DOSE』製品紹介ページへ

(月刊インナービジョン2019年12月号 決定版!! 被ばく線量管理ケーススタディ)