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「iRad」シリーズを活用した放射線検査・治療の線量管理 
久野 恵梨[インフォコム(株)ヘルスケア事業本部放射線システム製品管理部]iRad-RS(インフォコム)

2020-10-5

被ばく線量管理ケーススタディ

はじめに

近年の放射線被ばくへの関心の高まりを受け,医療機関は2019(平成31)年度に公布された「医療法施行規則の一部を改正する省令」(平成31年厚生労働省令第21号)などに基づいた,線量管理体制の構築が求められている。線量管理体制を構築するためには,医療被ばくの適正化とその基となる情報,つまり線量情報の収集と検査の質の評価が必要であるのは言うまでもない。また,院内で診療用放射線安全管理のための研修の実施や,有害事象発生時の報告手順の確立・検証/改善/再発防止の活動,患者への説明など,院内の体制強化を図る必要がある。線量管理体制の構築のためには,まず日々の検査において線量情報の収集を行い,自施設の状況を把握することから始める必要があり,その収集方法はさまざまな方法が検討できる。
昨今の線量管理のニーズを受け,インフォコムは放射線情報システム(以下,RIS)「iRad-RS」を中心とした線量管理機能の強化を行い,施設の線量管理業務をサポートしている。今回,線量管理業務の体制づくりのための,弊社システムの導入事例をご紹介する。皆様の施設でのシステム構築の際の参考としていただけると幸いである。

検査画像の線量情報収集

一言で線量情報の収集と言ってもさまざまな方法が考えられるが,最近ではDICOM Radiation Dose Structured Report(以下,RDSR)を用いた方法が多く利用されている。しかし,収集方法は施設で使用している装置すべてが同じ方法で実施できるわけではなく,装置が対応していない場合は別の方法を検討しなければならない。収集目的および対象装置を決定し,そのために必要なデータは何なのか? そのデータを得るための方法にはどんな方法があるのか? などを装置ごとに検討する必要がある。iRad-RSはさまざまな方法を組み合わせて用いることが可能で,さまざまな施設でのシステム環境・ニーズに合わせたシステム構築が可能となっている(図1)。

1.DICOM RDSR/Imageの利用

図1 (1)は,RDSRを用いてモダリティやPACSと連携し,線量データをiRad-RSに取り込む方法である。すべてのモダリティと直接接続すると接続数が増え,コストやネットワーク負荷に影響を及ぼすため,PACSを経由する方法も検討できる。PACSを経由する場合,データを受信するのと同時にiRad-RSにStorageでデータを流す方法,もしくはデータを受信しておいて夜間にiRad-RSがPACSに対してQ/Rをかける方法などがある。サーバに対する負荷を考慮すると後者の方が負荷は低いが,翌日にならないとデータが反映されないというデメリットがあり,データの使用用途などを考慮して方法を検討するとよいだろう。また,装置でRDSRを出力することができない場合,検査画像から撮影条件などを取得することも可能である。

2.MPPSの利用

図1 (2)は,モダリティとiRad-RSをDICOM Modality Performed Procedure Step(以下,MPPS)接続して,照射実績情報の一部として線量情報を受信する方法である。この方法は昔から採用されており,すでに接続ずみであればもちろんそのまま採用することも可能であるが,MPPSは2017年にDICOM規格としてリタイアしている。このまま使い続けることは可能ではあるが,新規接続を検討するのであればRDSRを採用した方がよいだろう。

3.線量管理システムの利用

線量管理システムを導入している施設の場合,線量管理システムと連携して情報を取得することも可能である(図1 (3))。iRad-RSと線量管理システムを接続し,情報を取得する方法を採用した場合,RDSRにセットされている情報に加えて線量管理システムの機能で算出したパラメータ(例えばSSDEなどの値)を含めて情報を取得することも可能となる。

4.手入力

使用している装置がRDSRにもMPPSにも対応してない場合などは,手入力で記録する方法を採用してもよいだろう(図1 (4))。もし手入力を採用した場合でも,iRad-RSには撮影条件のデフォルト値反映機能が搭載されているので,情報入力の省力化を図ることができる。今回の法令改正で管理が義務づけられていない装置の管理をしておきたい場合なども,準備ステップとして入力欄の整備・事前の手入力運用をしておくことで将来の備えにつながる。

図1 ‌システム環境・ニーズに合わせて線量情報の収集が可能なiRad-RS

図1 ‌システム環境・ニーズに合わせて線量情報の収集が可能なiRad-RS

 

放射線治療分野の線量管理

近年は画像誘導放射線治療(IGRT)の技術が進歩し,高精度治療の実施のためにイメージガイドなどの用途での撮影が行われているが,これらは検査や治療のための照射ではなく,計画や位置照合のために用いられるものである。検査被ばくの線量評価は診断参考レベル(DRL)が医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)から提示されており,目安として活用することができる一方,計画や位置照合の撮影は線量指標が示されていない。しかし,米国医学物理学会(AAPM)のAAPM Report 180において「イメージング線量が治療目標線量の5%を超える場合,治療線量(治療効果)への影響を評価することを推奨する」とされており,計画や位置照合のための撮影は,被ばくの適正化・正当化に関する検討のほかに治療独自の検討が必要となる。つまり,計画や位置照合のための撮影についても検査と同様に,線量管理をする必要があると言える。特に強度変調放射線治療(IMRT)におけるコーンビームCT(CBCT)撮影は撮影回数が多くなることから必然的に被ばく線量が多くなる懸念があり,治療効果に対する影響を検討することは高精度治療を実施する上でも重要である。
iRad-RSは,治療RIS「iRad-RT」と同一データベースで動作し,同一端末上で動作させることができるシステムである(図2)。つまり,iRad-RSの線量管理機能はiRad-RTでも使用することが可能であり,治療計画CTや治療装置などから発生した線量データも検査部門で発生したデータとともに包括的に管理することが可能である。さらに,治療ビューワ「RT Image Viewer」はDICOM RTを受信し院内端末での線量分布参照をサポートするシステムであるが,このシステムはRDSRデータを受信することが可能である。放射線治療部門に関連するシステムのDICOM情報はすべてRT Image Viewerに集約し,線量情報をDICOM StorageもしくはQ/Rを用いてiRad-RSに取り込むようにすれば,治療分野の撮影に関しても検査部門と同様の管理が行える。受信したデータはiRad-RTの画面からリンクさせたiRad-RSの線量管理機能画面で確認できるため,治療計画CTや照合撮影による照射線量の放射線治療効果への影響を確認・評価するのに利用できる。

図2 iRadシリーズを活用した放射線治療における線量管理

図2 iRadシリーズを活用した放射線治療における線量管理

 

まとめ

今回,弊社が多くの施設導入の中で経験した線量管理関連のシステム接続・連携事例を中心に紹介した。iRadシリーズ製品をフル活用すれば,iRad-RSの線量管理機能を用いた検査分野での線量管理業務のみならず,同一データベースで動作するメリットを生かしてiRad-RT・RT Image Viewerを用いて治療分野も包括的にサポートすることが可能となる。すべての照射行為に対する情報を収集することは,日々の検査・治療行為における被ばくの適正化・正当化のための活動の第一歩となるだろう。また,線量管理業務が高精度治療における治療効果の適正評価にもつながり,日常業務に寄与する重要な情報となると考える。

 

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(月刊インナービジョン2020年10月号 決定版!! 被ばく線量管理ケーススタディ II)
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