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被ばく線量管理システム「DOSE MANAGER」の使用経験 
小谷野匡章(社会医療法人社団慈生会 等潤病院診療技術部)等潤病院 × DOSE MANAGER(販売元:富士フイルムメディカル/開発元:キュアホープ)

2019-12-4

被ばく線量管理ケーススタディ

被ばく線量管理システムの検討

医療被ばくの管理を意識し始めたのは,2018年8月に,2020年度からの医療被ばく管理義務化に向け,「中小規模」の医療施設において,「どのように医療被ばくを管理するか」,という検討会への参加が当院に依頼され,本会議に出席したことが契機だった。この義務化に向け,どのような準備をすべきか,また被ばく線量の結果を病院としてどのように扱うか,を考える必要があると考えた。
当初は,CT,血管撮影装置の被ばく線量の値をDose Reportとして画面キャプチャし,PACSサーバに取り込めばよいと考えていた。しかし,それでは被ばく線量の値を“記録”するだけとなり,“管理”することには限界がある点,将来的にそのほかの放射線モダリティを網羅できる機能性が必要であると考えた。各方面に相談をしたところ,多くのベンダーが被ばく線量管理システムを扱い始めていた時期ではあったが,義務化の詳細について明示化されていない時期だったことから,現時点,そして将来的にどのような機能が必要かの判断がつかなかった。
そこで,まず当院としての方向性を明確に定めるべく,“医療被ばく”の管理に求める機能性を以下のように定めた。

○全検査の医療被ばく管理(CT,血管撮影装置,一般撮影装置,マンモグラフィ,X線TV装置などを一元管理)
○希望に応じて医療被ばく結果を患者に公開できる仕組み

特に,患者に公開できる仕組みは,さまざまな意見があることは理解していたが,当院理念の下,すでに地域の連携機関には「ID-Link」(NEC社),患者には「カルテコ」(メディカル・データ・ビジョン社)を使って診療情報を公開しているため,医療被ばくデータについても公開することを前提とした仕組みが必要だと判断した。上記の方向性に沿うためには,単純な被ばくの“記録”ではなく,被ばくを“管理”できるシステムが必要であると判断した。
並行して当院の各モダリティ側のDICOM Radiation Dose Structured Report(以下,RDSR)の対応状況について調査した。CT,血管撮影装置,X線TV装置,外科用X線撮影装置は,RDSR出力が可能だったが,一般撮影装置,マンモグラフィはRDSR出力に対応していなかった。システム側も,一般撮影装置の被ばく線量管理には未対応のものが多く,マルチモダリティに対応できる被ばく線量管理システムは,選定時点では限られていることがわかった。RDSRに対応していない機器について,どのようにデータを管理するかを調査したところ,RISに蓄積されたModality Performed Procedure Step(MPPS)の値をシステム側に反映させ,numerical dose determination(NDD)法に基づいて管理する方法が妥当だと判断した。また,マンモグラフィについては,CR撮影であったため,出力できないことが判明した。主流であるFPDであれば発生装置とコンソール装置が統一されているため,本課題は対応できると考えている。
さらに,厚生労働省医政局長通知「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行等について」(医政発0312第7号,平成31年3月12日)を確認すると,ガイドラインが変更になった場合,「必要に応じて」見直しが必要であると記載されている。これは,将来的に「ガイドラインの見直し」と「管理方法の変更」を示唆していることから,これらの動向に柔軟に対応できるシステムが,選定基準として必要であると考えた。
次に,レポートの機能について調査を行ったところ,レポートの機能自体が備わっていないベンダーが多数あることがわかった。Web形式での機能をもって配信できるシステムであっても,検査と紐づけるオーダ番号が保持できない,画像のレイアウト変更を受け付けないなど,不十分な点もあった。院内に公開するということは,説明責任が発生するため,院内の医療従事者にとってわかりやすい画面が必要である点,先に記載した今後のガイドライン変更にも対応できる機能が必要なことから,レポートにも柔軟性があるシステムが必要であると感じた。結果,さまざまな要因から,富士フイルムメディカル社の「DOSE MANAGER」(開発元:キュアホープ社)を選定することとした(図1)。

図1 DOSE MANAGERの画面例

図1 DOSE MANAGERの画面例

 

被ばく線量管理システムの構築

被ばく線量管理システムに対しての接続について,モダリティと直接接続する方法も検討したが,長期的な接続費用などを考慮し,PACSとのQ/R接続とした。この場合は,「自院のPACSがRDSRに対応しているか」を事前に確認する必要があり,対応していない場合は可否を確認し予算化が必要となる。その後,当院にて接続を行ったが,1台1台の装置がスムーズに完了したものはほとんどなく,どの接続内容もベンダーと協力して,何とか安定してデータ管理ができるまで多くの時間と運用の工夫,判断が必要となった(表1)。

表1 モダリティのRDSR対応の検証結果

表1 モダリティのRDSR対応の検証結果

 

RDSRに対応していると言われたモダリティも,接続の当日となって自動送信ができない,PACSに保管したRDSRの値が影響し,遠隔読影システムや他院画像入出力システムがエラーを起こすなど,想定し得ないトラブルが続出した。ユーザーもベンダーも経験が浅いことから,致し方ないとは言え,今後義務化される時期までには,双方にて知識および経験を増やしていきたいと思うところである。
接続終了後,毎日データチェックを行い,全検査,抜けなくデータが入っているのか確認することにした。精査して気づいた点は,“身長”および“体重”のデータがないことだった。診断参考レベル(diagnostic reference level:DRL)と当院の線量データを比較分析するために,標準体重の患者データを抽出する必要があり,患者の体重データがどうしても必要となる。どのように“身長”および“体重”を,極力漏れがないように入力していくかの検討を実施し,当初はモダリティ側で入力しようとしたが,一般撮影装置やマンモグラフィなど,モダリティ側においてそもそもデータの入力ができない仕様になっているものがあった。今までに必要のない運用であったため致し方ない部分だが,今後DRLをベースに管理するのであれば,上記機能は必要ではないかと考える。結果,当院では,検査時にRISで直接“身長”および“体重”を入力することができた。
次に,被ばくレポートへの反映時間だが,最大で90分発生することが判明した。これは被ばく管理システムがQ/Rを行う時間間隔が発生するためである。院内で公開することを想定するには時間がかかりすぎるのではないかと考えている。ぜひ,即時に反映される仕様を今後構築していただきたい。
データは正常範囲内であったが,血管撮影装置の経皮的冠動脈形成術(PCI)となると,1~2Gyとなる検査もあった。このような検査は,リストが黄色・赤色で表示されているため,瞬時にデータを確認,精査できることはシステム化される部分の最大のメリットであると考える。今後,ガイドラインに沿って,一定以上の被ばくが発生する検査は,指示医に通知する運用を検討したいと考えている。
被ばくレポートについては,医療従事者が患者に簡単に説明できるように意識したフォーマットを検討した。等価線量の値を追加表示し,自然被ばくガイドを記載することで照合できるように改修した。また,DRLs 2015の値についても撮影する診療放射線技師側の意識向上のため,2枚目に表示することとした。
長期間にわたる被ばく線量管理システム構築を経て,安全管理責任者,安全利用指針の策定を行い,研修会については医療安全研修会のプログラムに組み込み,2019年10月に4日間に分けて開催することができた。医療被ばくのレポート配信の準備も整い,迫る義務化に向けて院内の体制もおおむね整ったと感じている。

被ばく線量管理システム導入後・まとめ

被ばく線量管理システム導入を踏まえたポイントが3つある。
(1) ユーザー,ベンダーとの協力体制と情報の共有,そして事前の入念な機器状況の確認
(2) 収集したデータ値が安定するまでの,日々のチェック
(3) 被ばく線量に対する医療従事者への周知による意識向上
また,データの“精度”を上げるには,相応の労力と時間,部門を超えた運用調整が発生する。医療被ばくへの医療従事者の意識向上はまさにそれである。
撮影に携わる診療放射線技師は,システム管理することで医療被ばくへの意識が確実に高まり,院内の医療従事者にも医療被ばくの正しい事実を認知してもらうことができた。
この医療被ばく管理システムは,導入だけでは終わらない。医療被ばくというものをどのように病院として管理していくかが重要であり,特にここについては,システム構築が進むにつれて痛感したところである。
迫る医療法施行規則の改正省令施行への対応について,当院の被ばく線量管理システムの使用経験は以上となる。

 

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(月刊インナービジョン2019年12月号 決定版!! 被ばく線量管理ケーススタディ)