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医用画像博覧会 2020 キヤノンメディカルシステムズ - MRI AI時代の “Next Standard” 技術 「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」

2020-4-13

医用画像博覧会 2020 キヤノンメディカルシステムズ - MRI 

キヤノンメディカルシステムズは,ディープラーニングを用いたノイズ除去再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」を世界に先駆けてMRI装置に実装した。2019年7月に販売を開始したハイエンドクラスの3テスラMRI装置「Vantage Centurian」への搭載を皮切りに,現在では3テスラMRI装置「Vantage Galan 3T / Focus Edition」および1.5テスラMRI装置「Vantage Orian」へとAiCEの製品化を展開している。

人工知能(AI)の医療への適用が期待される中,”Deep Learning Reconstruction(DLR)”がSNRを向上する”Next Standard”技術として注目を集めている。MRIにおけるSNR向上の歴史は,RFコイルの多チャンネル化や磁場強度の高磁場化により達成されてきたが,DLRはこれらに匹敵するSNR改善効果を示し,今後MRIの性能を語る上で必須技術となりつつある(図1)。DLRは,ディープラーニングによってノイズの多い画像とノイズの少ない画像との関係性をあらかじめ解析しモデル化させることで,新たに得られた画像からノイズ成分のみを選択的に除去できる技術である。一般的なスムージングフィルタに比べノイズ除去に伴う画像の劣化が小さく,画像にボケが生じることなく高いノイズ除去効果を実現できる(図2)。

図1

図1

 

図2

図2

 

このような背景の中,キヤノンメディカルシステムズは「次世代の超高分解イメージングの実現」を目的としていち早くDLR技術の開発に取り組み,2018年3月から順次,熊本大学やボルドー大学など国内外の複数の大学と臨床評価を進めてきた。その成果として,世界で初めて製品化しMRI装置に搭載したDLR技術が「AiCE」である。AiCEのノイズ除去効果として,頭部高分解能撮像に適用した例を図3に示す。MRIでは撮像時間と分解能,SNRにはトレードオフの関係があり,分解能向上のために収集マトリックスを増加させるほど撮像時間は延長し,SNRは低下する。通常,観察可能な1024×1024マトリックスの高分解能画像を得るには,加算回数(以下,NAQ)10で17分程度の撮像時間を要するが,1回加算の画像にAiCE を適用すれば10回加算相当のSNRが短時間で得られる。AiCEのSNR改善効果検証では,最大3.2倍の向上効果を得られることが示されており,理論上NAQ10相当のSNRとよく一致する(図4)。1.5Tと比較した3TのSNRが理論上2倍であることから,1.5TにAiCEを適用することで3Tを超えるSNRを得られるポテンシャルがある。

図3

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図4

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ただし,一般的にディープラーニングでは,1) 学習していないものは最適化できない,2) 最適化には膨大なデータ学習が必要,3) 多種データを混ぜると精度が低減するなどの問題があり,どのように学習させるかが最終的な精度に大きく依存する。特にMRI画像は,検査部位やコントラスト,撮像シーケンス,撮像条件,高速化撮像など多くの画像種が存在し,これらの問題に最も直面しやすい画像といえる。
AiCEではDLRの学習方法の問題をクリアするために,ノイズが含まれる高周波成分のみを分離して学習させている(図5)。画像種により変動する低周波成分を学習ネットワークから除外することで,画像種依存のない学習を行うことが可能となり,さまざまな撮像に対して精度の高いノイズ除去が実現可能である。実際に全身のあらゆる部位に適用可能であり,受信コイルや撮像条件の制約もなく汎用性が非常に高い(図6)。また,k-spaceベースではなくイメージベースの学習を行うことで,さまざまなシーケンスや高速撮像との組み合わせが可能であり,圧縮センシング技術“Compressed SPEEDER”と組み合わせた高い次元の高速化も実現できる。

図5

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図6

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さらに,低周波成分を除き高周波成分のみを学習させるもう一つのメリットとして,ノイズ以外の信号値を変動させないことが挙げられる。一般的なスムージングフィルタは,ノイズ除去に伴う画像の劣化が大きいため,オリジナル画像との差分においては実質信号の大きな変動が観察される。一方,AiCEでは,差分画像においてノイズ成分のみが観察される(図7)。つまりAiCEは高いノイズ除去能力を有しながら,ノイズ以外の信号値は変動させないことがわかる。そのため,解析画像にも適用可能であり,解析精度の向上も期待できる(図8)。

図7

図7

 

図8

図8

 

AiCEは3T装置をはじめ1.5T装置にも実装されており,大学病院から一般病院まで多くの医療機関で臨床活用が広がっている。実際にAiCEを導入した施設から,「高分解能画像により長年”疑い”であった病変に確定診断がついた」,「この短い撮像時間でここまでの画質が出せるのか」,「1.5T装置なのに3T装置より画質が良いのではないか?」といった驚きの声があがっている。AiCEはMRI撮像における高分解能と撮像時間のトレードオフを排し,従来非現実的であった検査を実現可能にする”Next Standard”技術である。

 
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●お問い合わせ先
社名:キヤノンメディカルシステムズ株式会社
URL:https://jp.medical.canon/