innavi net画像とITの医療情報ポータルサイト

ホーム

日本メドトロニック,条件付きMRI対応植込み型除細動器「Evera MRI® XT SureScan® ICDシリーズ」の薬事承認を取得〜MRIでの全身スキャンが可能〜

2014-9-29

植込む部位がより自然に滑らかな形状になるPhysioCurve®(フィジオカーブ)デザインを採用した「Evera MRI ICDシリーズ」

植込む部位がより自然に滑らかな形状になる
PhysioCurve®(フィジオカーブ)デザインを
採用した「Evera MRI ICDシリーズ」

日本メドトロニック(株)は,2014年9月25日,一定の条件を満たした場合にMRI(磁気共鳴画像法)検査が可能となる,「条件付きMRI対応」*の植込み型除細動器(以下ICD)「Evera MRI® XT SureScan® ICD(エヴェラ エムアールアイエックスティー シュアスキャンアイシーディー) シリーズ」(以下「Evera MRI ICDシリーズ」),(医療機器承認番号:22600BZX00404000)の薬事承認を取得した。本製品は,2013年7月に発売を開始した「Evera ICDシリーズ」の次世代製品で,一定の条件を満たしたうえで,MRI装置での全身撮像を可能にする製品である。

MRI検査は,人体の軟部組織の撮像において,超音波,X線,コンピュータ断層撮影(CT)検査などではとらえることができない情報が得られるため,特に脳卒中・がん・整形外科疾患などの早期検知,診断および治療のための標準的手段として,重要な役割を果たしている。実際,ICDを植込む患者さんのうち,52%から63%の患者さんが,植込んでから10年以内にMRI検査が必要になると推測されている1。しかし従来,ICDを植込んだ患者さんは,MRI装置によって発生する強力な磁場により,ICDの動作への干渉や部品の損傷といった影響がもたらされる可能性があるため,MRI検査は禁忌とされてきた。

「Evera MRI ICDシリーズ」は,メドトロニックが1997年より約10年かけて開発し,2008年に世界で初めて製品に導入した,条件付きMRI対応テクノロジー「SureScan®(シュアスキャン)」を採用している。MRI検査に耐えうることを前提として組み立てられた本システムは,一定の条件下で,全身のどの部位についても,安全なMRI撮像を可能にする。

「SureScan」採用の機器を植込んだ患者さんがMRI検査を受けるためには,一定の条件を満たす必要がある。まず装置側には,MRI装置が1.5テスラのトンネル型であることなどの条件があり,また患者さん側の条件として,植込まれている心臓デバイスとリードが「SureScan」採用の機器のみであることなどが挙げられる。

さらに,2013年に販売を開始した,MRI非対応の「Evera® ICDシリーズ」と同様に,体の表面と同じように曲線を描き,植込み部の圧迫を軽減する滑らかなデバイス形状(PhysioCurve® デザイン),不適切なショック作動を防ぐ独自のアルゴリズム(SmartShock® テクノロジー2.0),優れた耐久性を実現したリード(Sprint Quattro® ICDリード)などの特長を備えている。

メドトロニックが開発した不適切作動防止のための独自アルゴリズム「SmartShock テクノロジー」の検証を目的として行われた実臨床試験「PainFree SST 試験」2の運営委員のひとりである,近畿大学医学部附属病院心臓血管センターの栗田 隆志教授は,次のように述べている。
「昨年,PainFree SST 試験の中間報告で示された,SmartShock テクノロジーの優れた臨床成績は,ICD治療の大きな課題であった不適切作動の低減において,抜群の結果でした。今回,MRI での全身スキャンが可能となりましたが,ICDを植込む患者さんは心房細動を合併することも多く,心原性脳梗塞のリスクが高いため,脳梗塞の診断に有用なMRI 検査を安全に実施できることは,臨床上大きな意味を持つといえます。これらの特長が,ICD患者さんのQOL の向上に総合的に貢献することを期待しています。」

メドトロニックは,世界中の第一線の医師,研究者,科学者と連携して,心血管疾患と不整脈のインターベンション治療及び外科治療に,多くの革新的医療技術を提供している。「Evera MRI ICDシリーズ」は,滑らかな形状の採用と不適切作動を減らすことで患者さんの負担を軽減することに加え,安全にMRI検査を受けられるテクノロジーによって,さらなる医療ニーズに応えることを目指す。

「Evera MRI シリーズ」は,欧州では2014年3月にCEマークを取得しており,米国とカナダでは現在グローバル治験を実施中。

【植込み型除細動器(ICD)について】
植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator:ICD)は1996年に国内で保険収載され,2013年3月末までに累計約44,000人に植込まれている治療法3。ICDは患者の心拍を感知し,命を危険にさらす「致死性不整脈」と呼ばれる「心室頻拍」や「心室細動」を検知すると即座に治療を行い,心臓の働きを正常に戻すことで突然死を予防する。ICDのリード線は血管(静脈)を通って心臓内にその先端がおかれ,心臓が発する電気情報を絶え間なく本体に送りモニターすると共に,拍動が異常に早くなった場合には,本体からの電気刺激を心臓内に伝えることにより治療を行う。ICDは,症状に合わせて,通常のペースメーカのような弱い電流による刺激を与えて不整脈を停止させる「抗頻拍ペーシング」と,AEDのように電気ショックを与えて発作を止める「電気ショック治療」の,ふたつの治療方法を選択する。

【PainFree SST試験について】
PainFree SST試験とは,メドトロニックが開発した不適切作動防止のための独自のアルゴリズム「SmartShockテクノロジー」の性能について検証を行うことを目的とした実臨床試験で,2013年5月の第34回米国不整脈学会においてその中間報告が行われた。ICDの一般的な自動診断機能においては,致死性不整脈の識別が難しい場合には治療を優先させるため,ときには治療が不必要な場合にも「不適切作動」と呼ばれるショック治療が行われることがあり,不適切作動を経験する患者の割合は植込み後約2~5年間でおよそ1~2割と報告されている4。電気ショックに伴う痛みによる患者のQOLの低下や,心筋へのダメージがもたらす長期的な生命予後への悪影響の可能性に対する懸念から,ICDの心拍感知と治療精度の向上および不適切作動の低減は,ICD治療における課題とされてきた5。先述の米国不整脈学会におけるPainFree SST試験の中間報告では,SmartShockテクノロジーを搭載した従来品のデュアルチャンバICDおよび両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)植込み患者1,308例について検討がなされ,その結果,植込み後一年間で不適切なショック作動を受けない患者の割合が98.2%であったことが示された。

*「条件付きMRI対応」とは,限定された種類のMRI装置を使用する,限られた設定下で撮像する,などの一定の条件を満たしたうえで,MRI装置での撮像が可能になるデバイスを指す。

1 Turakhia M, Reynolds M, Wolff S, et al. Medtronic Data on File 2013. Data from 2011 MarketScan® Commercial and Medicare database, Truven Analysis, Inc. were used for this research. Patient cohort represents ICDpatients in terms of age, gender, and major comorbidities (N = 10,778).
2 E.J. Schloss et al. Painfree sst trial primary results low shock rates in patients with dual and triple chamber icd's using novel detection algorithms late breaking clinical trial session - May 10, 2013 at HRS 2013
3 不整脈デバイス工業会調べ
4 Kadish A, Dyer A, Daubert JP, et al, for the Defibrillators in Non-Ischemic Cardiomyopathy Treatment Evaluation (DEFINITE) Investigators. Prophylactic defibrillator implantation in patients with nonischemic dilated cardiomyopathy. N Engl J Med. May 20, 2004;350(21):2151-2158. Daubert JP, Zareba W, Cannom DS, et al, for the MADIT II Investigators. Inappropriate implantable cardioverter-defibrillator shocks in MADIT II: frequency, mechanisms, predictors, and survival impact. J Am Coll Cardiol. April 8, 2008;51(14):1357-1365. Poole JE, Johnson GW, Hellkamp AS, et al. Prognostic importance of defibrillator shocks in patients with heart failure. N Engl J Med. September 4, 2008;359(10):1009-1017.
Mitka M. New study supports lifesaving benefits of implantable defibrillation devices. JAMA. July 8, 2009;302(2):134-135.
5 Poole JE, Johnson GW, Hellkamp AS, et al. Prognostic importance of defibrillator shocks in patients with heart failure. N Engl J Med. September 4, 2008;359(10):1009-1017. Daubert JP, Zareba W, Cannom DS, et al, for the MADIT II Investigators. Inappropriate implantable cardioverter-defibrillator shocks in MADIT II: frequency, mechanisms, predictors, and survival impact. J Am Coll Cardiol. April 8, 2008;51(14):1357-1365.

 

●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
http://www.medtronic.co.jp/