innavi net画像とITの医療情報ポータルサイト

ホーム

ステラファーマ,BNCT用ホウ素薬剤の製造販売承認申請

2019-10-15

ステラファーマ(株)は,ホウ素中性子捕捉療法(以下BNCT(※1))用ホウ素薬剤(一般名:ボロファラン(10B),開発コード:SPM-011,以下本剤)の製造販売承認申請を行った。

本剤は,同社設立以降手がけてきた初めての開発品目であり,同製剤の開発においては,親会社であるステラケミファ(株)が国内で唯一保有するホウ素同位体濃縮技術(※2)を基盤技術として,大阪府立大学,国立研究開発法人日本医療研究開発機構などの支援を受けながら,産学官連携で開発を進めてきた。また,2017年4月には,厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定された。

本申請は,頭頸部癌(※3)(切除不能な局所再発頭頸部癌及び切除不能な進行頭頸部非扁平上皮癌)患者を対象とした国内第II相試験(※4)の結果に基づいて行った。なお,本剤は,いずれの国・地域においても未承認であり,本申請は,世界に先駆けて日本で初めて承認申請を行うものである。

※1 ホウ素中性子捕捉療法について
ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy; BNCT)とは,放射線治療の一種であり,新しいがんの治療方法。患者さんにホウ素薬剤を投与することで,ホウ素(10B)ががん細胞に集まる。その後,患部に体外から中性子線を照射する。照射する中性子線は,非常にエネルギーが小さく,人体への影響はほとんどないが,ホウ素(10B)とぶつかると核反応を起こし,放射線(アルファ線と7Li核)が発生する。BNCTは,この放射線によってがん細胞を破壊する治療法。

ホウ素中性子捕捉療法について

 

※2 ホウ素の同位体濃縮技術について
自然界に存在するホウ素は質量数10の10Bと質量数11の11Bが安定に存在し,10Bは,約20%しか含まれていない。BNCTでがん細胞を破壊するために利用する中性子による核分裂反応は,10Bのみが起こす反応であり,11Bでは,この反応は起こらない。ホウ素の同位体濃縮技術は,この10Bのみを高濃度に分離・濃縮するものであり,国内ではステラケミファ(株)のみが保有しているBNCTに不可欠な技術。

ホウ素の同位体濃縮技術について

 

※3 頭頸部癌について
頭頸部癌とは,脳の下側の顔面から鎖骨までの範囲にできる癌であり,発生する部位の種類が多く,部位によって発生原因,治療法,予後がそれぞれ異なる。また,頭頸部には私たちが日常生活に必要な器官が集中しており(鼻,口,耳,あご,喉など),機能を温存できる治療法の確立が求められている。

※4 国内第II相試験について
切除不能な局所再発頭頸部扁平上皮癌又は切除不能な頭頸部非扁平上皮癌患者21例を対象に,BNCT施行90日後の腫瘍縮小効果(奏効率)を主要評価項目として国内第II相臨床試験を実施した。本試験は,BNCT用加速器を開発した住友重機械工業(株)と共同で国内2施設にて実施した。

◆BNCT 用ホウ素薬剤は,国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED)の研究成果最適展開支援プログラム(AMED・A-STEP) 委託開発(採択課題名:「ホウ素中性子捕捉療法に用いるホウ素薬剤」) の支援を受けている。

 

●問い合わせ先
ステラファーマ(株)
https://stella-pharma.co.jp/