innavi net画像とITの医療情報ポータルサイト

ホーム

AMED,岡山大学で開発した医療用針穿刺ロボット(Zerobot®)の医師主導治験開始

2020-6-26

●発表のポイント

 

●概要

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の平木隆夫研究教授,大学院ヘルスシステム統合科学研究科の亀川哲志准教授,大学院自然科学研究科の松野隆幸准教授らのグループは,6月から,岡山大学で開発した医療用針穿刺針穿刺ロボット(Zerobot®)を用いた医師主導治験を開始した。治験では,術者とロボットによる穿刺精度の比較やロボットを用いたがんの治療(アブレーション)も行う。このような穿刺ロボットを用いた治験は国内では初。
本ロボットの開発は,2012年より岡山大学が医工連携で行っているもの。2018年には初めての臨床試験を特定臨床研究として実施し,10例全例でロボットによる針穿刺が成功した。今回の治験は,ロボットの製品化に向けて日本医療研究開発機構(AMED)の「革新的がん医療実用化研究事業」として実施するものである。

●発表内容

研究の背景
医師が,CT撮影しながら腫瘍に針を穿刺して行う検査や治療のことをCTガイド下IVR(日本語名:画像下治療)と言う(図1)。針を刺すだけで検査や治療を行うことができ,手技は短時間で終わり,患者の体への負担が小さく,超高齢社会におけるがん医療として需要が高まっている。しかし,CT装置の近くで穿刺手技を行う医師は,CT撮影の放射線により被曝してしまうという欠点がある。そこで2012年から,放射線の届かないCT装置から離れた場所で遠隔操作により針を穿刺できるロボット(図2)を開発した。2018年には,10例の患者に対して,医療用針穿刺ロボットを用いた初めての臨床試験(図3)を実施し,腫瘍への針穿刺は10例全例で成功した1)。また,針穿刺後の術者への放射線被曝線量を測定したが,線量計による検出限界以下であった。

図1.CTガイド下IVR中の様子 術者はCT装置の近くに立ち,CTを撮影しながら針(矢印)を穿刺している。 

図1.CTガイド下IVR中の様子
術者はCT装置の近くに立ち,CTを撮影しながら針(矢印)を穿刺している。 

 

図2.岡山大学で開発したロボット ロボットアーム先端(矢印)に針を取り付けて使用する。

図2.岡山大学で開発したロボット
ロボットアーム先端(矢印)に針を取り付けて使用する。

 

図3.臨床試験中の様子 医師はCT装置から離れた場所でコントローラ(白矢印)を用いてロボット(黒矢印)を遠隔操作している。 

図3.臨床試験中の様子
医師はCT装置から離れた場所でコントローラ(白矢印)を用いてロボット(黒矢印)を遠隔操作している。 

 

●研究の目的

本研究の目的は,開発した医療用針穿刺ロボットで医師主導治験を実施することである。日本医療研究開発機構(AMED)の「革新的がん医療実用化研究事業」として実施し,2年以内の治験終了を目指す。ロボットを用いた針穿刺が術者による針穿刺と比較して劣っていないか,針穿刺用ロボットを用いたがんの治療であるアブレーションを有効かつ安全に行うことができるかを確認する。なお,このような針の穿刺を行うロボットの治験は国内では例がない。

●社会的な意義

医療用針穿刺ロボットを用いることで,医師は被曝することなく,手ブレのない高精度な針穿刺が可能となる。また,医療用針穿刺ロボットによる穿刺手技の自動化も可能であり,手技時間の短縮,患者さんの被曝の低減,さらには経験の少ない医師でも簡単に針穿刺手技を行うことが期待できる。その他にも,遠隔医療への応用も考えられ,実現すれば医師の少ない僻地においても最先端のがんに対する低侵襲医療が可能となる。また,ロボットの普及により,安価に行うことができ,患者さんの体に負担の少ないIVRが更に普及すれば,患者の生活の質(QOL)の向上や医療費の削減も見込まれる。

●今後の予定

医師主導治験終了後には,本医療用針穿刺ロボットの製品化に向けた準備を行っていく。

参考文献
1. Hiraki T, Kamegawa T, Matsuno T, et al. Robotic Needle Insertion during Computed Tomography Fluoroscopy-guided Biopsy: Prospective First-in-Human Feasibility Trial. Eur Radiol 2020; 30(2):927-933.

●ロボットの情報

「CTガイド下IVR用IVR針穿刺ロボット:Zerobot(Projected by Okayama University)」
詳細は,岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 のwebページ参照。

●研究資金

本研究は,日本医療研究開発機構の革新的がん医療実用化研究事業の支援を受けている。また,ここに至るまで本ロボットプロジェクトは,以下の支援を受けて実施してきた。
・岡山大学研究推進産学官連携機構プレ共同研究支援事業
・日本医学放射線学会Bayer研究助成金
・日本学術振興会科学研究費助成事業
・岡山県が実施する特別電源所在県科学技術振興事業
・日本医療研究開発機構医療機器開発推進研究事業
・ちゅうごく産業創造センター新産業創出研究会
・キヤノンメディカルシステムズとの共同研究

 

●問い合わせ先
岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科
研究教授 平木隆夫
(電話番号)086-235-7313 (FAX)086-235-7316
(E-mail)hiraki-t"AT"okayama-u.ac.jp

●事業に関する問い合わせ先
日本医療研究開発機構 医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課
革新的がん医療実用化研究事業事務局
(E-mail)cancer"AT"amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変更。