2025-11-14
医療画像診断AI開発のプラスマン合同会社は2025年11月14日,同社のPlus.Lung.Nodule AIシステムに関する臨床研究結果を発表した。長崎大学病院の研究チームにより実施され,2025年日本肺癌学会学術集会で発表された本研究では,AI使用時に全ての読影医の肺結節検出感度が有意に向上し(症例毎:87.8%→93.8%,結節毎:52.3%→73.8%),特異度が維持されることが示された。特に注目すべき知見として,AI支援を受けた非専門医の症例毎感度(93.4%)が,AI未使用の専門医(91.0%)を上回る結果となった。
主要な研究成果
本研究では75例の低線量CT画像(結節あり61例・196結節,結節なし14例)を9名の読影医(専門医4名,非専門医5名)が評価し,以下の結果が得られた:
1. 低線量CTスクリーニング環境での検証
実際の低線量スクリーニングプロトコルを使用し,実臨床での使用条件下でのAI性能を評価した。低線量CTは標準線量CTと比較してノイズが多く,より困難な画像条件となる。
2. 診断精度の向上
AI支援読影により,症例毎の感度が87.8%から93.8%へ(p<0.0001),結節毎の感度が52.3%から73.8%へ(p<0.0001)向上し,結節検出能が41%相対的に改善された。
3. 保守的な研究デザイン
本研究では,読影医がAI「あり」で読影した後に「なし」で読影する手法を採用した。この手法は記憶バイアスによりベースライン性能を実際より高く評価する可能性があるため,公表された改善値は実際の効果を過小評価している可能性があると考えられる。
4. 特異度の維持
感度が向上した一方で,特異度は約90%で安定(p=0.51)し,偽陽性による読影医の業務負担増加がないことが確認された。
5. 経験レベルを超えた有用性
・専門医:結節毎感度 61.4% → 78.7% (+28%改善)
・非専門医:結節毎感度 45.1% → 71.6% (+59%改善)
・AI支援を受けた非専門医(93.4%)が,AI未使用の専門医(91.0%)を上回る結果を達成
臨床ワークフローへの統合
AI統合方式
本研究では,実臨床への実装を見据えた2つのAI統合方法を評価した:
1. セカンドリーダー型
医師が単独読影後,AIで見落とし確認(品質保証型)
2. コンカレントリーダー型
AIを参照しながら診断(リアルタイム支援型)
両方の方法で診断精度が向上し,いずれも臨床現場で有効であることが確認された。コンカレントリーダー型はセカンドリーダー型と比較してより効率的で,特に経験の少ない医師において高い感度向上効果を示した。一方,経験豊富な放射線科医はいずれの方法でも同等の高い診断能を達成した。
結節タイプ別の性能
肺結節は臨床的にSolid nodule,Pure GGN(すりガラス影), Part-solid noduleに分類され,Fleischner Societyが発行する「Guidelines for Management of Incidental Pulmonary Nodules Detected on CT Images(CT画像で検出された偶発的肺結節の管理に関するガイドライン)」や日本CT検診学会が発行する 「低線量CTによる肺がん検診:肺結節の判定と経過観察」において,それぞれ異なる管理方法が推奨されている。本研究では,全てのタイプでAI支援による検出感度の向上が認められた:
・Solid nodule(充実性結節):51.9% → 72.1% (+39%改善)
・Pure GGN(すりガラス影):44.8% → 73.5% (+64%改善)
・Part-solid nodule(部分充実性結節):94.9% → 97.4% (高い感度を維持)
参考:MacMahon H, Naidich DP, Goo JM, et al. Guidelines for Management of Incidental Pulmonary Nodules Detected on CT Images: From the Fleischner Society 2017. Radiology. 2017;284(1):228-243. / 日本CT検診学会「低線量CTによる肺がん検診:肺結節の判定と経過観察 第2版」
専門家のコメント
「本研究は,低線量CTスクリーニング画像を用いてAI支援の有効性を検証した重要な臨床研究です。AI支援により,読影の経験年数に関わらず全ての読影医の検出感度が有意に向上しました。特筆すべきは,特異度が維持されたことで,これは,AIが偽陽性を増やさず,読影医の業務負担を増加させないことを意味します。低線量CTによる肺がん検診の普及が進む中,本研究はAI支援が実用的なツールとなり得る可能性を示す重要なエビデンスであると考えられます。」
芦澤和人 氏
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学分野 教授
長崎大学病院 がん診療センター長
「独立した臨床研究でAI支援の有効性が検証されたことは,開発者として大変嬉しく思います。今回の研究結果は,読影医の先生方を支援し,患者さんの早期発見に貢献できることを示すものです。今後も実臨床で真に役立つ製品開発を続けてまいります。」
大塚裕次朗 氏
プラスマン合同会社 代表社員
Plus.Lung.Noduleについて
Plus.Lung.Noduleは,CT画像を解析し読影を補助するプログラム医療機器。日本国内の医療機関で使用されている。
・一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム
・販売名:Plus.Lung.Nodule(プラスラングノジュール)
・認証番号:301AGBZX00004000
研究参照:福島文,村山貞之,筒井伸ほか「低線量CT画像の肺結節診断に対する人工知能を用いた診断支援ソフトの読影者に及ぼす影響についての検討」日本肺癌学会学術集会2025年発表
●問い合わせ先
プラスマン合同会社 広報担当 半澤
https://plusmanllc.co.jp/contact
