2025-12-2
世界初の3.0TヘリウムフリーMRI
「BlueSeal Horizon」を発表
Philips（フィリップス）のMRIは，世界初の3.0TヘリウムフリーMRI「BlueSeal Horizon」（510 k Pending，薬機法未承認）と1.5TヘリウムフリーMRI「BlueSeal XE」（日本国内では「BlueSeal」の名称で2025年4月に発売）のモックアップの展示とソフトウエアの最新アップデートが紹介された。
初日にアンベールされたBlueSeal Horizonは，ヘリウムフリーMRIのパイオニアであるフィリップスが世界で初めて実現したヘリウムフリーの3.0T MRIで，510 k Pendingのため詳細は明らかにされていないが，1.5Tと比べて技術的ハードルが高い3.0Tでのヘリウムフリー化をいち早く発表した形だ。フィリップスが，2018年にわずか7Lの液体ヘリウムで超電導状態を維持する1.5TヘリウムフリーMRIを発表後，各社がヘリウムフリーMRIを市場に投入し，「超電導MRIには大量の液体ヘリウムが必須」という概念が変わりつつある。North Hallに展示した「BlueSeal Mobile Truck」のようなモバイルMRIや柔軟な設置性，Green Radiologyの観点からもヘリウムフリーがMRIにもたらす効果は大きく，3.0T装置がラインアップされることで臨床へのさらなる価値の提供が期待される。
ヘリウムフリーMRIのパイオニアであるフィリップスが他社に先駆けて3.0Tでもヘリウムフリーを実現
BlueSeal XEは，AI読影支援アプリケーションの統合によるワークフローの改善，高速撮像技術「SmartSpeed AI」やDual AIエンジンで高画質化を図るRSNA初披露の「SmartSpeed Precise」を実装できるなど，次世代のヘリウムフリーMRIとしてアピールした。BlueSeal マグネットを搭載した1.5TのヘリウムフリーMRIは，これまでに全世界で2000台以上がインストールされ，1日に約5万人の検査が行われている。
世界2000台以上の実績を持つ1.5TヘリウムフリーMRIの最新機種「BlueSeal XE」
ソフトウエアのアップデートとしては，心臓関連で多くのソフトウエアが紹介された。AIを活用した検査サポート機能「SmartHeart」は，1回の3DスキャンからAIが自動で最大14断面を再構成するほか，関心領域の設定（SmartShim），横隔膜同期におけるナビゲータエコーの設定（SmartNavi），心臓の大きさによって変わるスライス枚数の設定（SmartCoverage）を自動化し，従来は煩雑で手間のかかっていた心臓MRIの検査を支援する。さらに，動き補正機能も搭載され，非剛体による高精度な動き補正を定量マッピングや心筋パーフュージョン，遅延造影などに幅広く適用できる。
また，解析においては「CardiacQuant Perfusion」により心筋パーフュージョンの定量化が可能になった。非造影のデータから単位時間あたりや単位心筋グラムあたりの血流量を数値化する。遅延造影，マッピングに加えて，心筋パーフュージョンも定量化できるようになったことで，心臓MRI検査全体の定量化が可能となった。
スライス断面を自動設定する「SmartHeart」
動き補正により定量化の精度が向上
3.0T研究用システム「MR 7700」で可能な多核種イメージングについてもアップデートが紹介された。新たにキセノン（Xenon）に対応したコイルがFDA認可を受けたことで，hyperpolarization（超偏極）処理をしたキセノンガスを用いて肺換気の様子を直接的に可視化可能になった（薬機法未承認）。キセノンコイルはジャケットタイプで，患者はこれを着用して寝台に乗り，約10秒の息止めで撮像が可能。また，デュアルチューンコイルであり，キセノンとプロトンを受信できる点も特長となっている。
FDA clearとなったキセノン（Xenon）コイル
キセノンMRIでは肺換気の様子を直接的に可視化可能