2025-12-3
新製品の空冷半導体TOF-PET/CT「BIOGRAPH Trinion.X」
Siemens Healthineersの核医学のコーナーでは,2025年11月に薬機法認証を取得したばかりの空冷半導体TOF-PET/CT「BIOGRAPH Trinion.X」が展示の中心となった。また,PET/CTの「Biograph Vision Quadra」とSPECT/CTの「Symbia Pro.specta」の小型のモックアップが展示された。
BIOGRAPH Trinion.Xは,既存装置である「BIOGRAPH Trinion」の空冷式デジタルLSO検出器や高速time-of-flight(TOF),AIを活用したワークフローという特長を継承しつつ,検出器幅が18cmと24cmに加え,36cmと48cmが搭載可能となった。検出器のTOF性能は,従来の239psから197psに向上しており,空冷式のPET/CTで200psを切るのは世界初となる(同社調べ)。TOFは,2つの消滅ガンマ線の検出器への到達時間差を測定し,消滅ガンマ線の発生位置を同定する技術であるが,TOFの時間分解能が向上することで,同定精度,実効感度が向上する。検出器の拡大によって撮像視野が広がるため,近年新たに使用可能となった前立腺がん診断用トレーサーを用いた撮像などにおいて,広範囲をカバーできるメリットは大きい。また,BIOGRAPH Trinion.X には,既存装置と同様に速度可変型寝台連続移動技術「FlowMotion」が搭載されており,寝台を連続移動させながら体軸方向視野の制限なく広範囲を撮像できるが,1ベッドでの撮像視野が広がることで,撮像時間の短縮も期待できる。さらに,感度が向上することで,放射性薬剤の投与量を低減しても良好な画像が得られるため,従来は検査が避けられがちであった妊婦や小児などにも検査適応が広がる可能性がある。
核医学領域においては近年,同じ化合物を用いて診断画像化と分子標的治療を一貫して行うセラノスティクスが注目されており,治療対象者の選択や,治療後の効果判定に定量値が重要視されていることから,Siemens Healthineersでは定量性を意識した製品作りを行っているとのことである。
さらに,BIOGRAPH Trinion.XにおけるAIの活用としては、体内金属や臓器の自動認識による撮像時のサポートや、脳や心臓領域における適切な角度の自動画像出力が紹介された。また、Trinion.X以外にも,syngo.viaの読影支援端末で、AIによる生理的な集積か特異的な集積かを判断する機能もあり,撮像から読影までの一貫したAIサポートがSiemens Healthineersの開発の方針だとのことである。
なお,BIOGRAPH TrinionはPET/CTプラットフォームという位置づけであり,装置の背面を開けて検出器モジュールを入れ替えることで,BIOGRAPH Trinion.Xへのアップグレードが可能である。
PET/CT「Biograph Vision Quadra」
SPECT/CT「Symbia Pro.specta」
