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東邦大学医療センター大森病院がデジタルペンを用いた災害医療訓練を実施

2013-12-2

デジタルペン

デジタルペン

東邦大学医療センター大森病院は,2013年11月16日(土)に秋季防災訓練を実施した。この訓練において,デジタルペンを用いたトリアージの実証実験を行った。同院では,年2回,防災訓練を開催しているが,デジタルペンの使用は初の試みとなる。当日は,医師・看護師のほか,受傷模擬患者に扮した医学科・看護学科学生と職員が参加し,2回に分けてシミュレーションした。

このデジタルペンは,(株)日立製作所が提供するもの。デジタルペンを使って,デジタルペン対応用紙に記入すると,ペンに内蔵されたカメラが対応用紙上のドットパターンを撮影し、そのデータをペン内のメモリに保存。このペンをPCに接続されたクレードルに差し込むと,PC経由でデジタルペンデータ処理用サーバにデータが取り込まれ、手書き情報の電子化が行われる。入力の容易さといった利便性,効率性を理由に,製造業の品質管理システムなどで導入されている。

デジタルペンに対応した大量傷病者発生時診療記録用紙

デジタルペンに対応した大量傷病者発生時診療記録用紙

今回の訓練では,第一,第二の2回のトリアージで計5台のデジタルペンが使用された。まず,第一トリアージでは,トリアージ担当の医師・看護師がデジタルペンを使用し,今回の訓練用に作成した「大量傷病者発生時診療記録」に,患者氏名やバイタルデータ,重症度などの情報を記載する。大量傷病者発生時診療記録は,クリアファイルに入れられ,患者の首にかけられる。一方,デジタルペンに保存された情報は,ペンをクレードルに差し込むと,無線LANからインターネットを経由してクラウド型で提供されるデジタルペン処理サーバに送られて電子化され、同じく訓練用に開発した院内のトリアージシステムに自動的に取り込まれる。トリアージシステムは,対策本部やトリアージエリアにあるPCから参照でき,大量傷病者発生時診療記録の記載内容や,軽症=緑,中等症=黄,重症=赤に色分けされたリストを表示でき,集計などが可能になる。また,第一トリアージ後には,デジタルペン,クレードルを接続したPCを第二トリアージエリアに移動させて,第二次トリアージ情報の入力に使われる。

 

デジタルペンによる入力

デジタルペンによる入力

 

大量傷病者発生時診療記録を表示

大量傷病者発生時診療記録を表示

 

第一トリアージ場所

第一トリアージ場所

 

対策本部にあるモニタでもトリアージ情報を表示

対策本部にあるモニタでもトリアージ情報を表示

クレードルで情報をPCに取り込む様子

クレードルで情報をPCに取り込む様子

 

PC上にトリアージ状況を表示

PC上にトリアージ状況を表示

 

第二トリアージ場所(中等症)

第二トリアージ場所(中等症)

 

松裏裕行 氏(東邦大学)

松裏裕行 氏
(東邦大学)

トリアージにデジタルペンを使用するねらいについて,防災訓練へのIT利用発案者である同院小児科の松裏裕行氏は,「多数の傷病者が発生する災害では,紙の記録では集計することが困難で,情報管理に支障が出ます。デジタルペンを使うことで,災害時でも適切な情報管理が可能になると考え,検証することにしました。また,デジタル化することで,処方や検査における患者の取り違えのリスクを低減するという効果も期待できます」と説明する。今回の実験の評価について,松裏氏は,「初めてデジタルペンを使うスタッフでも簡単に使用でき,スムーズにトリアージを行うことができました。課題としては,災害医療では多数の患者が発生するので,数量の限られたデジタルペンを効率的に使用することだと考えます」と述べている。

実証実験では,災害医療のトリアージにおけるデジタルペンの有用性が示された。今後は,「コストとのバランスを図るという観点からも,日常診療でも患者の問診などにデジタルペンを使用するといったことも重要です。将来的には、電子カルテシステムとの連携も検討していければと考えています。」と松裏氏は指摘する。今回,良好な結果を得られただけに,同院では,今後も災害医療などにおけるデジタルペンの活用に向けて検討していく。

 

●問い合わせ先
学校法人東邦大学
法人本部経営企画部
TEL 03-3762-4151
http://www.toho-u.ac.jp

株式会社 日立製作所
公共システム営業統括本部
カスタマ・リレーションズ センタ
■お問合せフォーム
http://www.hitachi.co.jp/Div/jkk/inquiry/inquiry.html