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医用原子力技術研究振興財団が創立20周年記念公開講演会を開催

2016-9-30

会場風景

会場風景

公益財団法人医用原子力技術研究振興財団は2016年9月28日(水),学士会館(東京都千代田区)にて創立20周年記念公開講演会を開催した。
医用原子力技術研究振興財団は,1996年の創立以来,原子炉や加速器から発生する粒子線などを利用した先端的がん治療,各種放射線による疾病の診断・治療といった医用原子力技術の研究を推進・普及活動を行ってきた。今回,創立20周年を迎え,「人にやさしい放射線医療・切らずに治す粒子線治療」をテーマとして,同財団がこれまで行ってきたがん検診,最新の放射線治療,粒子線がん治療,中性子捕捉療法(BNCT)などの活動を紹介する公開講演会が企画された。

講演会では,はじめに同財団の理事長である垣添忠生氏が「人はがんとどう向き合うか?」と題して基調講演を行った。垣添氏は,自身が見てきた患者,また自身や家族ががんを患った経験から,医師として患者にどう向き合っていくべきかを述べ,がん経験者を特別視せず受け入れる社会が必要であると訴えた。

続いて「ここまできた粒子線治療」と題し,同財団の副理事長である辻井博彦氏が重粒子線治療を中心に,粒子線治療の歴史と概要を講演した。辻井氏は,HIMACなどの国内最新施設の導入事例を挙げ,日本は世界の粒子線治療施設の約2割が集中している粒子線治療大国であり,粒子線治療におけるインバウンド・アウトバウンド事業は今後も展開が期待できる分野であることを強調した。その上で,粒子線治療患者数の増加に伴い,厚生労働省から求められているエビデンスの蓄積という要望に応えていくことが重要ともなるとしめくくった。

同財団フェローの河内清光氏は,「これからの中性子捕捉療法─原子炉から加速器へ」と題した講演を行った。BNCTは,ホウ素を中性子捕獲物質として用いるがん治療法。原子炉を使用する治療法であるため,普及が難しく,福島第一原子力発電所の事故以来臨床実験が中止されていた。しかし,その後技術開発が進んだことで病院設置型の加速器で臨床試験を行うことができるようになり,最近改めて注目を浴びている治療である。講演では,各施設で開発が進められているBNCT装置の概要が紹介され,今後病院設置型の加速器BNCTが普及し,悪性腫瘍治療の一手段として展開されることに期待を示した。

最後に同財団常務理事の遠藤真広氏が登壇し,「放射線治療をささえる─正確な線量を処方された部位へ」として,放射線治療の品質管理についての活動を紹介した。遠藤氏は,線量の精度管理で同財団が行っている線量計の校正と出力線量の郵送測定の概要を説明し,今後はこの経験に基づいたIMRTの線量と線量分布の検証などに事業展開を図り,品質管理の第三者監査機関としてがん医療の発展に貢献したいとの意欲を見せた。

垣添忠生 氏(理事長)

垣添忠生 氏
(理事長)

辻井博彦 氏(副理事長)

辻井博彦 氏
(副理事長)

 
     
河内清光 氏(フェロー)

河内清光 氏
(フェロー)

遠藤真広 氏(常務理事)

遠藤真広 氏
(常務理事)

 

 

●問い合わせ先
公益財団法人医用原子力技術研究振興財団
TEL 03-5645-2230
http://www.antm.or.jp