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量研,2018年度の取り組みや研究成果などを報告する第1回記者懇談会を開催

2018-6-8

平野俊夫 氏(量研理事長)

平野俊夫 氏
(量研理事長)

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)は2018年6月7日(木),TKP新橋カンファレンスセンター(東京都港区)において,「平成30年度 第1回記者懇談会」を開催した。2016年4月1日に発足し,3年目を迎えた量研の今年度の取り組みなどが紹介されたほか,がんに対する重粒子線治療や分子イメージング,標的アイソトープ治療について,臨床における最新の研究成果が報告された。

はじめに,量研理事長の平野俊夫氏が,「発足から三年目を迎える量研 / QST〜2018年度の取り組み〜」と題して,量研設立の経緯や役割,具体的な取り組みを紹介した。量研では,エネルギー(量子エネルギー理工学),いのち(放射線医学・医療,放射線被ばく・防護医療),生活(量子材料・物質科学)の3つを柱にさまざまな研究を行い,「調和ある多様性の創造」の推進をめざしている。平野氏はこのうち,「いのち」の領域における研究について,量子メスプロジェクトを紹介。重粒子線治療用加速器のさらなる小型化や,マルチイオン照射技術の採用による治療の高精度化を図り,一般病院にも普及可能な小型かつ廉価な装置を開発することで,免疫治療および標的アイソトープ治療(TRT)と併せて「がん死ゼロ健康長寿社会」の実現をめざすと述べた。また,新たな研究分野として,生命科学と最先端の量子技術・量子化学の知見を融合して生命の本質に迫る量子生命科学の創出・確立をめざすとし,近い将来,2017年に発足した量子生命科学研究会の学会化をめざすと述べた。

量研 放射線医学総合研究所(放医研)臨床研究クラスタ副クラスタ長の辻 比呂志氏は,「重粒子線がん治療の最新成果」について報告した。重粒子線治療の特徴や,臨床例における治療成績などを紹介したほか,普及に向けた成果として,2016年に骨軟部腫瘍が,2018年には頭頸部腫瘍と前立腺がんが保険収載されたと述べた。また,治療法の高度化に関する成果として治療の短期化の推進などを挙げ,末梢型肺がんでは1回照射,肝がんでは2回照射で良好な治療成績が得られていると報告した。

量研 放医研分子イメージング診断治療研究部部長の東 達也氏は,「分子イメージングと標的アイソトープ治療の最新成果」と題し,がん診療における分子イメージングの意義や,theranosticsの手法の一つとして,分子イメージングと治療を融合したTRTの原理や有用性などを詳述した。特に近年,サイクロトロンを用いて国内でもα線放出核種の製造が可能となったことでradio-theranostics(TRT,核医学治療,RI内用療法)の流れが加速していると述べ,現在進行中のα線放出核種の開発研究などを紹介した。

最後に,量研 放医研研究企画室長の北川敦志氏が,6月9日(土)にTKR東京駅日本橋カンファレンスセンター(東京都中央区)にて開催される「QSTがん死ゼロ健康長寿社会シンポジウム〜量子科学技術によるがん死ゼロ健康長寿社会をめざして〜」の概要を紹介した。

辻 比呂志 氏(放医研臨床研究クラスタ)

辻 比呂志 氏
(放医研臨床研究クラスタ)

東 達也 氏(放医研分子イメージング診断治療研究部)

東 達也 氏
(放医研分子イメージング診断治療研究部)

北川敦志 氏(放医研研究企画室)

北川敦志 氏
(放医研研究企画室)

 

●問い合わせ先
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
経営企画部広報課
TEL 043-206-3026
http://www.qst.go.jp