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日本医師会ORCA管理機構が次世代医療基盤基盤法下でのデータ利活用をテーマにしたシンポジウムを開催

2019-2-18

生涯保健情報統合基盤研究の現状を報告

生涯保健情報統合基盤研究の現状を報告

日本医師会ORCA管理機構(株)は2019年2月12日(火),JPタワー ホール&カンファレンス(東京都千代田区)において,シンポジウム「健康・医療・介護データが駆動するHealthcare Society 5.0—次世代医療基盤法下での匿名加工医療情報の利活用—」を開催した。このシンポジウムは,2018年5月に「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(次世代医療基盤法)」が施行されたことを受け,研究開発における医療情報の利活用ついて考える機会として設けられた。公益社団法人日本医師会は,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業」として,SS-MIX2規格の医療情報による生涯保健情報統合基盤構築に向けて取り組んでいる。また,日本医師会は今後,一般財団法人を設立して,次世代医療基盤法に示された医療情報の匿名加工を行う認定事業者の申請を予定している。シンポジウムでは,これまでのAMED事業の研究成果の報告に加え,次世代医療基盤法の概要や,医療情報データベースを研究に活用するための要件などについて講演が行われた。

開会に当たって,日本医師会常任理事で,同社代表取締役会長の石川広己氏が挨拶した。石川氏は,医療情報を医薬品や医療機器の開発に利用するための公益性の高いデータベースが必要であるが,国民の個人情報に対する意識などの観点から,現状では構築が困難であると指摘。そして,この課題を乗り越え,情報活用基盤の構築にチャレンジすることが求められており,実現しなければ日本は世界から取り残されてしまうと強調した。次いで,AMEDスーパーバイザーの酒巻哲夫氏が,来賓挨拶として登壇した。酒巻氏は,医療ビッグデータの活用には生涯保健情報統合基盤の構築が重要だと述べ,日本医師会が進めている診療所を中心としたSS-MIX2規格の医療情報の収集などの研究成果に期待を示した。

石川広己 氏(日本医師会/日本医師会ORCA管理機構)

石川広己 氏
(日本医師会/日本医師会ORCA管理機構)

酒巻哲夫 氏(AMED)

酒巻哲夫 氏
(AMED)

 

 

この後,同社代表取締役社長の上野智明氏が,「生涯保健情報統合基盤の研究計画報告」と題して発表した。同社は,日本医師会の分担研究開発機関として生涯保健情報統合基盤構築に向けたて取り組んでいる。すでに,滋賀県のびわ湖あさがおネットや沖縄県のおきなわ津梁ネットワークなどデータ出力システムを構築しており,医療,健診,介護などのサンプルデータを収集している。また,日本医師会では,医療情報の利活用に向け,認定事業者運営研究会を設置し活動している。これらを紹介した上で,上野氏は,日本医師会が設立する予定の認定事業者の説明をしたほか,認定事業者間の連携を図るための認定事業者連絡協会(仮称)について言及した。

上野智明 氏(日本医師会ORCA管理機構)

上野智明 氏
(日本医師会ORCA管理機構)

   

 

次に登壇した内閣官房健康・医療戦略室参事官の田中謙一氏は,「なぜ『次世代医療基盤法』か」と題して講演した。田中氏は,NDBはレセプトなどの実施情報(インプット)のデータが基本で,診療行為の実施結果(アウトカム)のデータの利活用が困難なこと,個人情報保護法の改正によって病歴などのデータがオプトアウトでの第三者提供が禁止されたことなどの課題を指摘した。その上で,次世代医療基盤法は,医療情報の利活用を通じて患者に最適な医療を提供するものだと述べ,データの流れなどを解説した。

田中謙一 氏(内閣官房健康・医療戦略室)

田中謙一 氏
(内閣官房健康・医療戦略室)

   

 

続いて,大学共同利用機関法人情報・システム研究機構統計数理研究所医療健康データ科学研究センターセンター長の伊藤陽一氏が,「データベースの構築や観察研究をどう進めていけばいいか」をテーマに講演した。伊藤氏は,データベース構築で重要となる疾患・患者レジストリについて概説。さらに,米国のガイドラインを基に,レジストリの構築のポイントして,目的の明確化や計画書の作成,組織・運用体制などを挙げ,説明を行った。

伊藤陽一 氏(統計数理研究所)

伊藤陽一 氏
(統計数理研究所)

   

 

最後に「『ビッグデータを活用した事業創造』SOMPOホールディングスの取り組み」と題して,SOMPOホールディングス(株)チーフデータサイエンティストの中林紀彦氏が講演した。中林氏は,ビッグデータや人工知能(AI)などにより,保険会社のサービスが変革していると言及。「デジタルヘルス2.0」として,外部サービスと連携しデータ分析を高度化して競争力のあるサービスの提供をめざす同社の取り組みを説明した。また,中林氏は,同社が開設した介護分野の最新技術などを検証する「Future Care Lab Japan」や,ビッグデータ・AI利活用のためのデータサイエンティスト育成の取り組みを紹介した。

中林紀彦 氏(SOMPOホールディングス)

中林紀彦 氏
(SOMPOホールディングス)

   

 

すべての講演を終えた後,日本医師会ORCA管理機構事業推進部長の伊藤伸昭氏が挨拶し,シンポジウムは閉会した。

伊藤伸昭 氏(日本医師会ORCA管理機構)

伊藤伸昭 氏
(日本医師会ORCA管理機構)

   

 

●問い合わせ先
日本医師会ORCA管理機構株式会社
TEL 03-5981-9681
https://www.orcamo.co.jp