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安全なMRI検査を考える会が「第1回 緊急MRI安全Webワークショップ」を開催

2020-6-19

MRI検査でのCOVID-19感染対策などを検討

MRI検査でのCOVID-19感染対策などを検討

一般社団法人安全なMRI検査を考える会は2020年6月11日(木),オンラインで「第1回 緊急MRI安全Webワークショップ」を開催した。同会は,安全で質の高いMRI検査の実現に向けた活動を展開し,国民の安全と健康増進に寄与することを目的として2011年に発足。「医療施設のためのMRI安全講習DVD」の制作や検査担当者のためのQ&Aレスキューサイト「MRI SAFETY FORUM」(https://mri-anzen.or.jp/qa/ )の運営,ワークショップの開催などを行っている。今回は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けて,テーマには「災害対応と吸引事故––COVID-19がMRIに及ぼす影響」が掲げられた。

プログラムは,第1部「MRIにおけるCOVID-19感染対策」と,第2部「MRIの感染対策が引き起こす二次災害」で構成された。司会進行を土`井 司氏(社会医療法人高清会高井病院),コーディネーターを内田幸司氏(みたかクリニック)が務め,コメンテーターとして平野浩志氏(社会医療法人抱生会丸の内病院),土橋俊男氏(日本医科大学付属病院),山本晃義氏(社会医療法人共愛会戸畑共立病院),平出博一氏(一般社団法人日本画像医療システム工業会)がリモートで出席した。また,視聴者がチャットで質問したり,アンケートに回答したり,双方向でのやりとりができる形式で進められた。

冒頭,事前に磁気共鳴専門技術者へのアンケート結果が紹介され,その後,感染対策について平野氏が解説を行った。平野氏は,COVID-19のリスクグレードに基づくモダリティの適応と検査時の感染対策について紹介した。また,土橋氏は,東京近郊のMRI検査状況について説明し,現状ではCOVID-19患者に対する検査数は少ないとの見方を示した。次に,感染者数が多い米国の状況について,中上将司氏〔GEヘルスケア・ジャパン(株)〕が報告した。中上氏は,米国放射線学会(ACR)のMRI検査のガイドラインにおける清掃や撮像時の注意点,防護道具を説明したほか,実際の検査では,消毒の影響によるアーチファクトの発生が多いこと,複数台のMRIを保有する施設は専用機を確保していることなどを紹介した。一方,米国などでは,COVID-19が脳梗塞を誘発するとの報告もあり,日本国内でも感染者に対する検査では頭部が最も多くなっている。こうしたことから,土`井氏は,COVID-19の感染が不明のまま脳梗塞などの検査をするケースもあり,十分な感染対策が必要だと述べた。

これを踏まえ,ワークショップでは,(1)標準予防策,(2)被検者のマスク着用,(3)検査後の換気,(4)検査後のクリーニング,(5)感染予防対策,(6)感染対策が引き起こす二次災害,の6項目について取り上げられた。まず,標準予防対策について,土橋氏からは,日本医科大学付属病院におけるサージカルマスク,フェイスシールドなどのアイガード装着の徹底,固定具の養生などが報告された。さらに,山本氏は,防護衣の脱衣や廃棄の方法,ゾーニングのための動線確保などを説明した。

被検者のマスク着用についての検討では,内田氏から3T装置での吸引実験結果の説明があり,金属針金のノーズワイヤー付きサージカルマスクが吸引されたことなどが紹介された。さらに,発熱実験の結果も示され,金属針金のノーズワイヤー付きのものでも発熱がないと説明があった。ただし,アーチファクトが生じることを明らかにした。また,平出氏からは,低温火傷が生じた事例などが報告された。これを踏まえ,被検者のマスクについては,(1)着用は必須,(2)ノーズワイヤーの金属は位置決め画像でほとんど検出可能,(3)ガントリ内に吸着することはない,(4)検査室内でのマスクの交換は不可,(5)実験では湿気による発熱はない,(6)念のため発熱の危険性を伝える,ことが示された。

次いで,検査後の換気について検討され,まず,強制排気装置とスイッチについて平出氏が解説した。平出氏は,ウイルスの存在する場合の強制排気装置を使った換気や,強制排気装置がない,あるいはマニュアルスイッチがない場合などの対応を説明した。また,土橋氏は,日本医科大学付属病院での対応として,換気時間を30分にしたことなどを紹介した。扉を開放した換気については,MRIの特性上避けた方がよいと述べた。

さらに,検査後のクリーニングについて,山本氏が戸畑共立病院における作業をデモンストレーションを交えて紹介した。また,装置メーカーからの意見として,山下裕市氏〔キヤノンメディカルシステムズ(株)〕が,エタノールを70%に希釈し,柔らかい布に染み込ませて装置を清拭することを推奨していると説明した。ただし,接着剤を使用している箇所や変色しやすい箇所は避ける必要があると述べた。

続く第2部では,感染予防対策について,戸畑共立病院における感染患者のMRI検査の取り組みがシミュレーション動画で紹介された。このシミュレーションでは,MRI専用ストレッチャーへの患者の移乗,金属チェック,検査室への移動,MRI寝台への移乗,検査後後のクリーニングといった一連の流れが取り上げられた。また,二次災害に関し,COVID-19患者が使用する酸素ボンベの吸着事故を防ぐための対策について土橋氏が解説を行った。

これを踏まえた総合ディスカッションでは,感染者対応時の事故防止策として,(1)救急であっても検査室内に立ち入るスタッフを制限,(2)フローチャートを用いたコロナ対策,磁性体の確認など漏れがないように紙面でチェック,(3)1人で対応せずに熟練した診療放射線技師を含む2人体制,(4)マニュアル化とスタッフのマニュアルの理解,によって危険要因を排除することが必要であるという磁気共鳴専門技術者の意見が示された。また,想定外の事象が起こっても回避できるよう,(1)徹底した繰り返し講習,(2)一連の教育後に危険性の振り返り学習,(3)KYT(危険予知トレーニング)の確実な実践,(4)予測能力を磨く,取り組みにより能力を習得することが重要であるとの提言があった。

すべてのプログラム終了後,土`井氏が,COVID-19の第2波に備えて,ワークションプの内容を参考に,安全なMRI検査を施行してほしいとまとめた。

なお,本ワークショップは,動画配信されている(https://mri-anzen.or.jp/archive2020-jun/ )。視聴にはユーザー登録が必要となる。

 

●問い合わせ先
一般社団法人 安全なMRI検査を考える会
E-mail safety@mri-anzen.or.jp
https://mri-anzen.or.jp/

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