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キヤノンメディカルシステムズ,「Global Standard CT Symposium 2022 Web Live Seminar」を開催

2022-8-10

今後10年を見据え新たなテーマが設定されたGlobal Standard CT Symposium 2022

今後10年を見据え新たなテーマが設定された
Global Standard CT Symposium 2022

キヤノンメディカルシステムズ(株)は2022年8月6日(土),「Global Standard CT Symposium 2022 Web Live Seminar」をオンラインで開催した。11回目となる今回は,「High Resolution × AI—エビデンスに基づいた全身の画像診断とこれから」をテーマに,2セッションで6題の講演が行われた。
最初に開会の挨拶に立った同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,シンポジウムの目的の一つである国内CT医療被ばく半減プロジェクトの進捗として,国内で稼働するCTの53%に逐次近似応用再構成法“AIDR 3D”が搭載されていることを報告した。そして,11回目の今回から今後10年を見据え,シンポジウムのテーマを画像の高精細化とさらなる被ばく低減に向けた取り組みにシフトすると述べた。新たなテーマにかかわる現況として,人工知能(AI)の新ブランド“Altivity”の下に開発された,CT,MRI,PET-CTへの搭載を進めるディープラーニングを応用した画像再構成技術“Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)”は国内導入864台,高精細CT「Aquilion Precision」は国内導入42台となっていることを紹介。さらに,Aquilion Precisionの画像などを教師データに開発された超解像画像再構成技術“Precise IQ Engine(PIQE)”によるさらなる低侵襲化と高画質化が期待できると述べた。
次いで,情報提供として同社CT営業部営業技術担当の津島 総氏が,同社CTの高精細技術について紹介した。津島氏は,17年の研究開発を経て,従来CTの2倍の空間分解能により高精細化を実現したAquilion Precisionの技術概要を説明し,世界で46台が稼働,64の査読付き論文が報告されていることを紹介した。また,PIQEについては,ADCTの16cm幅の画像に対してAquilion Precisionの高精細技術を学習させて出力するという同社ならではの技術であると述べ,PIQEのワークフローを示して解説した。

瀧口登志夫 氏(代表取締役社長)

瀧口登志夫 氏(代表取締役社長)

 

津島 総 氏(CT営業部)

津島 総 氏(CT営業部)

 

Session 1では,宇都宮大輔氏(横浜市立大学大学院医学研究科放射線診断学)が座長を務め,「Canon高精細技術」をテーマに2題の講演が行われた。まず,檜垣 徹氏(広島大学大学院先進理工系科学研究科)が「PIQE:超解像DLRがもたらすprecise imagingの可能性」と題して,PIQEの物理評価について報告した。檜垣氏は,PIQEのコンセプトは通常画像に超解像処理を適用することにより日常臨床へと高精細画像のすそ野を広げることだと述べ,PIQEの原理を解説した。そして,ファントムを用いた画質特性の検証結果を紹介し,PIQEは高い空間分解能特性とノイズ低減効果を有しており,特に低周波ノイズも良好に抑制できるため粒状性の高い画像を得られることを報告した。
次いで,永山泰教氏(熊本大学病院画像診断・治療科)が「DLRが可能とする低被ばくと高画質の両立」と題して,AiCEを用いた被ばく低減とPIQEの初期使用経験を報告した。永山氏は,画質評価にてAiCE がAIDR 3DやFIRSTよりも優れていることを確認し,AiCEの線量最適化を検討した。AiCEを用いることで,小児腹部では線量を50%低減しても良好な画像を得られるなど,被ばく低減と解像度向上を同時に達成可能であることを報告した。また,PIQEについては臨床画像を供覧し,ADCTによる高精細な心臓イメージングが可能になり,ノイズ・分解能特性に優れるとともに,被ばく低減にも寄与する可能性があることを示した。

座長:宇都宮大輔 氏(横浜市立大学大学院)

座長:宇都宮大輔 氏(横浜市立大学大学院)

 

檜垣 徹 氏(広島大学大学院)

檜垣 徹 氏(広島大学大学院)

 

永山泰教 氏(熊本大学病院)

永山泰教 氏(熊本大学病院)

 

Session 2は,「高精細CTのエビデンスと臨床活用」をテーマに領域別に4題の講演が行われ,阿部 修氏(東京大学大学院医学系研究科放射線医学講座)と横山健一氏(杏林大学医学部放射線医学教室)が座長を務めた。
1題目は,岩澤多恵氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター放射線科)が「間質性肺炎の高精細CT:病理との比較」と題して,胸部における高精細CTの有用性を紹介した。岩澤氏は,高精細CTを用いた肺がん,COVID-19肺炎,間質性肺炎,気管支の描出について,論文や自験例を供覧し,病理画像とも対比しながら,1024×1024マトリックス,0.25mm厚が実現する高空間分解能画像を紹介。微細構造を把握できることで,肺がんの診断能向上や,末梢気管支拡張の検出能向上により診断や病態評価に役立つ可能性があることを示した。
次いで,三上 毅氏(北海道公立大学法人札幌医科大学脳神経外科)が「脳血管障害・頭蓋底外科シミュレーション画像の進歩」を講演した。三上氏は脳神経外科手術におけるシミュレーション画像の意義を述べた上で,脳動静脈奇形(AVM),動脈瘤,微小血管減圧術(MVD)のプランニング画像作成のポイントを解説し,高精細CTを用いて作成したプランニング画像と実際の術野映像を供覧しながら,その有用性を紹介した。
3題目として,是恒悠司氏(大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座放射線医学教室)が「腹部領域(膵癌)におけるAquilion Precisionによるイメージングの重要性」と題して発表した。是恒氏は,膵がんの早期検出の重要性や検出率について説明した上で,Aquilion Precisionによる早期膵がんの検出率の検討や画像所見について解説し,Aquilion Precisionは早期膵がんの検出や膵がんの局所浸潤評価に有用である可能性を示した。
最後に,折居 誠氏(岩手医科大学医学部放射線医学講座)が「循環器領域におけるDLRを用いた高精細CT,超解像DLRを用いた320列CTの使用経験」と題して講演した。折居氏は高精細CTによる冠動脈評価について説明し,冠動脈CTの課題である定量性,偽陽性,小径ステントの描出を解決しうると述べた。また,AiCEの導入により,検査スループットが向上したことや,高度石灰化病変も評価できるようになったことを自院の経験を踏まえて紹介した。また,320列CT画像にPIQEを適用することで,さまざまな患者で高精細画像の取得が可能になることを報告した。

座長:阿部 修 氏(東京大学大学院)

座長:阿部 修 氏(東京大学大学院)

 

座長:横山健一 氏(杏林大学)

座長:横山健一 氏(杏林大学)

 

岩澤多恵 氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)

岩澤多恵 氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)

 

三上 毅 氏(札幌医科大学)

三上 毅 氏(札幌医科大学)

 

是恒悠司 氏(大阪大学大学院)

是恒悠司 氏(大阪大学大学院)

 

折居 誠 氏(岩手医科大学)

折居 誠 氏(岩手医科大学)

 

 

●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ株式会社
広報室
https://jp.medical.canon