innavi net画像とITの医療情報ポータルサイト

ホーム

日本医工ものづくりコモンズ,年1回の交流会「コモンズ年次フォーラム2025」を東京・日本橋で開催

2025-11-13

各ブースでは参加者が出展者に質問を行い,賑わいを見せた

各ブースでは参加者が出展者に
質問を行い,賑わいを見せた

医学と工学の融合をめざし,全国の医工連携を支援する一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ(理事長:谷下一夫慶應義塾大学名誉教授)は,年1回の交流会「コモンズ年次フォーラム2025」を2025年11月7日(金)に日本橋ライフサイエンスビル(東京都中央区)で開催した。日本医工ものづくりコモンズは,医学・工学系の学会の連携により,医療現場とものづくり現場とを融合するプラットフォームの形成を目的に,2013年に一般社団法人としての活動を開始。医療ニーズと技術シーズのマッチングによる医工開発支援や情報発信,医工学ネットワークの形成,医療機器開発に関わる規制に関するシンポジウムなどを開催している。今回,コロナ禍を経て数年ぶりの対面形式で交流会が行われ,多くの企業やアカデミア関係者が交流を深めた。

フォーラムには,慶應義塾大学CRIK信濃町や北里研究所などのアカデミア関係者のほか,ソフトウエア開発や製品開発・製造受託などを行う企業など9団体が出展した。そのうち,ソニーグループ(株)とソニーマーケティング(株)が「マイクロサージャリーロボット技術開発」や「業務DXへのチャレンジと共通課題」についてミニセミナーを行った後,各出展者によるショートプレゼンテーションが行われた。

開会の挨拶を行う日本医工ものづくりコモンズの谷下理事長

開会の挨拶を行う日本医工ものづくりコモンズの
谷下理事長

 

出展者のショートプレゼンテーションの様子

出展者のショートプレゼンテーションの様子

 

ソニーグループ社のブースで紹介されたマイクロサージャリーロボット技術

ソニーグループ社のブースで紹介されたマイクロサージャリーロボット技術

 

続いて,医工連携による医療機器の開発を紹介する特別講演が2演題行われた。まず,特別講演1として,山岡哲二氏(公立小松大学保健医療学部臨床工学科学科長・教授)が「組織由来バイオマテリアルの高機能化と次世代医療機器」と題して講演を行い,自身が取り組む内径3mm未満の人工血管の開発について解説した。現在,臨床的意義のある開存性を有する内径6mm以上の人工血管は存在するものの,3mm未満の人工血管の開発には至っていない。そこで山岡氏らは,ダチョウの頸動脈に超高圧処理を行って細胞を破壊・除去し内腔処理で循環血管内皮前駆細胞(EPC)を捕捉,内皮化を促進し内膜を再構築することに成功。2025年10月に(株)ディセリンク・バイオを設立,2026年度には京都大学と共同で医師主導治験を行う計画であることを紹介した。

山岡哲二 氏(公立小松大学保健医療学部)

山岡哲二 氏(公立小松大学保健医療学部)

 

続いて,特別講演2として長谷部光泉氏(東海大学医学部医学科専門診療学系画像診断科教授)が「医工連携に基づく膝下以下の新しいBioStealthステントの開発・医師主導治験」と題してオンラインで講演した。下肢動脈疾患(LEAD)に伴う下肢切断は5年生存率が低い。現在,治療を必要とする患者数は全世界で1900〜3800万人に上る(2024年時点)が,特に膝下動脈領域ではステント自体の異物反応が激しく,長期的に有効な治療法が存在しないことが課題となっている。そこで長谷部氏は,ステント留置後再狭窄を防ぐため,血小板活性化から平滑筋細胞の増殖,内皮化に至る再狭窄のカスケードに基づいた新しいステント設計を検討,ダイヤモンドナノコーティングなど3つの技術により,異物反応を起こさず血液成分を付着させないステルス材料の開発に取り組んだ。長谷部氏らは,化学・素材・医療機器エンジニアと専門医が一体となって開発を行う共同研究グループを慶應義塾大学とともに立ち上げ,生体になじみやすい「BioDiamond」技術を開発。民間企業に実用化部門を設置してコア技術を導出,製造ラインを確保するとともに,米国GLP施設での動物実験などを経て国内治験届を提出しており,2028年に国内販売開始を実現し,アカデミアおよび日本初の医療機器ユニコーンをめざしていることを紹介した。

長谷部光泉 氏(東海大学医学部)

長谷部光泉 氏(東海大学医学部)

 

そのほかに,来賓として野村由美子氏(厚生労働省医薬局医療機器審査管理課課長),門川員浩氏(経済産業省医療・福祉機器産業室),松本謙一氏〔サクラグローバルホールディング(株)代表取締役会長〕が挨拶を行った。また,フォーラム終了後には,かつて東京女子医科大学で開催されていた梁山泊交流会(主催:コモンズ理事の伊関 洋氏)が行われ,幅広い世代の参加者が歓談した。

野村由美子 氏(厚生労働省)

野村由美子 氏(厚生労働省)

 

門川員浩 氏(経済産業省)

門川員浩 氏(経済産業省)

 

松本謙一 氏(サクラグローバルホールディング)

松本謙一 氏(サクラグローバルホールディング)

 

●問い合わせ先
一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ
https://www.ikou-commons.com/