2025-12-16
乳がんのBNCTを推進する江戸川病院
社会福祉法人仁生社江戸川病院は,乳がんに対するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に取り組んでいる。BNCTはホウ素薬剤を投与後,中性子を照射。がん細胞に取り込まれたホウ素と核反応を起こさせる。核反応により生じるα線とリチウムは飛程が短いことから,正常細胞を損傷させることなくピンポイントで選択的にがん細胞を破壊する。2020年には,住友重機械工業(株)のBNCTシステムによる切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんに対するBNCTが保険適用となっている。
江戸川病院では,2011年に(株)CICSのBNCTシステムの導入を決定し,2019年に引き渡しが行われた。その後,2023年7月から再発乳がんを対象とした特定臨床研究P1を開始して,安全性と有効性を確認してきた。さらに,2024年8月にはFDG-PET陽性の浅在性腫瘍を対象に特定臨床研究P2を実施。2024年12月からは乳がんに対するBNCTを自由診療として開始した。その費用は400万円程度としている。
BNCTの治療は2週間前に治療計画CTを撮影し,その後治療計画の作成を経て,2泊3日での治療となる。1日目は照射のリハーサルを行い,2日目には約2時間かけてホウ素薬剤を投与した後,20〜50分程度の中性子の照射を行う。翌日は診察を受けてから退院となる。患者が切除術を希望しない場合や短期間での治療を望む場合などにBNCTを検討することが考えられる。QOLの維持,向上の観点から今後ニーズが高まるであろう。
同院は長年がん治療に注力しており,外科・放射線・化学療法を組み合わせた集学的治療によって,信頼と実績を築いてきた。BNCTがより多くのがん患者の新しい治療の選択肢となることが期待される。
江戸川病院で稼働するCICSのBNCTシステム
ホウ素薬剤を投与する処置室
高精度の治療計画を作成するためにガントリ移動型の治療計画用CTを導入
BNCTシステムのコンソール
