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画像の臨床的価値を共有するキヤノンメディカルシステムズの「画論33rd The Best Image」開催

2025-12-18

「画論33rd The Best Image」には403件の応募があり,上位入賞の40施設が参加

「画論33rd The Best Image」には
403件の応募があり,上位入賞の40施設が参加

キヤノンメディカルシステムズ(株)の「画論33rd The Best Image」が,2025年12月14日(日),東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催された。画論 The Best Imageは,キヤノンメディカルシステムズのCT,MR,超音波で撮影された臨床画像をのユーザーが持ち寄り,診断・治療に有用な画像のクオリティ,被検者へのメリット,テクニックの創意工夫などを総合的に判断して優秀画像を選定し,「画像診断技術の発展と医療への貢献に役立つ画像」としてユーザー間で共有して,さらなる質の向上や医療への貢献をめざすイベント。この日は会場で,最終審査プレゼンテーションと審査結果発表式,および特別講演が行われた。今年は全国から403件の応募があり,その中から40件の上位入賞施設が最終審査に進んだ。
イベントの締めくくりに挨拶した同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,「2025年はX線CTの国内臨床使用50年,X線発見から130年という節目の年であり,この歴史に臨床の先生方と共に成長してきた当社にとっても非常な重要な1年となった。特にX線CTについては,国内における画像診断の発展に寄与してきたと自負しているが,同時にこの先の未来も担う責任の重さも感じている。4月には臥位だけでなく、座位、立位の撮影を可能とした全身用マルチポジションCTを上市し,これまでにない病態の解析,病変の発見に寄与できると期待している。また,昨今さまざまな効率化が求められAIを活用した画像診断が注目されているが,われわれはいち早く画像再構成にAI技術を導入し,CTからMRI,超音波,X線へと適用を広げてきた。この画論という場を含めて,先生方と共に臨床に役立つ技術や製品の提供を通して,さまざまなイノベーションを起こし新たな進歩に貢献できるように努力していきたい」と述べた。

最終審査プレゼンテーションの様子(MR部門)

最終審査プレゼンテーションの様子(MR部門)

 

最終審査結果発表式では各部門の最優秀賞施設に瀧口社長から記念品が授与

最終審査結果発表式では各部門の最優秀賞施設に瀧口社長から記念品が授与

 

瀧口登志夫 氏(代表取締役社長)

瀧口登志夫 氏(代表取締役社長)

 

午前の上位入賞施設からのプレゼンテーションを受けて,最終審査を行う時間を使って特別講演が行われた。今年の特別講演は,「CT国内導入50年を迎えて」と題して,粟井和夫氏(広島県立病院機構理事長)を座長として2演題が設けられた。最初に,「CT開発の歴史とCT検診の発展に向けて」を森山紀之氏(医療法人社団 進興会理事長)が講演。森山氏は,国立がんセンター(当時)で東芝(当時)と共に国産初の全身用CT装置(TCT-60A)の開発に携わった。森山氏は,その後に登場したヘリカルCTによって,撮影時間の短縮や業務効率化,経済性効率の向上,三次元画像による診断,造影剤を使った多時相による診断が可能になり臨床にメリットをもたらしたと述べた。さらに,森山氏はCTによる検診,特に肺がんの低線量CT検診に取り組み,CTによってすりガラス様病変(高分化型肺腺癌)などの診断が可能になり,胸部単純写真のみの検診に比べて5年生存率が向上したことを紹介した。また,肺がんのさらなる早期発見のため,現在のAquilion Precisionにつながる高精細CTの開発にも取り組んだ。高精細CTでは,すりガラス様病変の発見や経過観察のほか,高精細画像によって生検による病理診断が省略できる可能性があり,森山氏は高精細CTのさらなる普及を期待していると述べた。
続いて,粟井氏より「日本のCT開発のレジェント」と紹介され片田和広氏(藤田医科大学名誉教授)が登壇した。片田氏は,「CT温故知新」として52年分を25分で語るのは難しいとしながら,1970年代のCT導入・開発初期に本質が詰まっているとして,脳神経外科の講師として「EMI Scanner MK-1(EMI MK-1)」と出会い,CTの情報収集のため私費で海外の関連学会に参加したこと,藤田保健衛生大学(当時)に導入された国産CTでの知見などから,ハードウエアを含めて日本で最もCTを知る医師となった経緯を説明した。片田氏は,EMI MK-1には開発者のHounsfieldのエッセンスがあるとして,散乱線の厳格な排除とマルチスライス(2列)だったことを指摘。その後のCTの開発は,散乱線やPartial Volume Effectの除去やシンスライス化,多列化などによって第2世代から第4世代へと進められていく。片田氏は,これらのCTの発達史からCTの本質は「X線吸収係数の良質な三次元分布を得ること」にあり,そのためにその後のヘリカルからマルチスライス,面検出器へと開発が進んだと述べた。今後のCTへの期待として,全肺をカバーできるようなスキャンエリアの拡大,ボクセルサイズの縮小による弱拡大光学顕微鏡クラスの解像度の実現,複合型AI診断,エビデンスベース型AI診断などを挙げ,これらの実現にはデータ量の増大と膨大な演算能力が必要で,隠れた課題としてメモリや計算ユニットの不足への懸念を挙げた。

特別講演:森山紀之 氏(医療法人社団進興会理事長)

特別講演:森山紀之 氏(医療法人社団進興会理事長)

 

特別講演:片田和広氏(藤田医科大学名誉教授)

特別講演:片田和広 氏(藤田医科大学名誉教授)

 

特別講演終了後には,最終審査結果発表式が行われた。超音波,MR,CTの順番で審査員から最優秀賞をはじめ各賞が発表され,最後に瀧口社長から記念品が授与された。なお,発表式の模様は2025年12月25日(木)14時からオンデマンド配信も予定している。また,次回の「画論34th The Best Image」は,2026年12月13日(日)の開催で応募開始は2026年5月下旬を予定していることもアナウンスされた。

今年は,超音波では血管,心臓,腹部,乳腺・甲状腺・表在の4部門,MRでは1.5テスラ以下(脳神経),1.5テスラ以下,3テスラ(脳神経),3テスラの4部門,CTでは1~160列,1~160列(心血管),Aquilion ONE,Aquilion ONE(心血管),Aquilion Precisionの5部門が設けられた。各部門の審査員と受賞施設は以下の通り。

超音波部門審査員。右から松尾 汎 氏(松尾クリニック),濵口浩敏 氏(北播磨総合医療センター),伊藤 浩 氏(川崎医科大学),瀬尾由広 氏(名古屋市立大学)

超音波部門審査員。右から松尾 汎 氏(松尾クリニック),濵口浩敏 氏(北播磨総合医療センター),
伊藤 浩 氏(川崎医科大学),瀬尾由広 氏(名古屋市立大学)

 

同。右から畠 二郎 氏(川崎医科大学),岡庭信司 氏(飯田市立病院),小川眞広 氏(日本大学),平井都始子 氏(奈良県西和医療センター),何森亜由美 氏(高松平和病院)

同。右から畠 二郎 氏(川崎医科大学),岡庭信司 氏(飯田市立病院),小川眞広 氏(日本大学),
平井都始子 氏(奈良県西和医療センター),何森亜由美 氏(高松平和病院)

 

MR部門審査員。右から阿部 修 氏(東京大学),伊東克能 氏(山口大学),横山健一 氏(杏林大学),佐藤秀二 氏(順天堂大学),沖川隆志 氏(済生会熊本病院),永坂竜男 氏(東北大学病院)

MR部門審査員。右から阿部 修 氏(東京大学),伊東克能 氏(山口大学),横山健一 氏(杏林大学),
佐藤秀二 氏(順天堂大学),沖川隆志 氏(済生会熊本病院),永坂竜男 氏(東北大学病院)

 

CT部門審査員。右から粟井和夫 氏(広島県立病院機構),平井俊範 氏(熊本大学),陣崎雅弘 氏(慶應義塾大学),吉岡邦浩 氏(岩手医科大学),辻岡勝美 氏(藤田医科大学),瓜倉厚志 氏(茨城県立医療大学)※華岡青洲記念病院の山口隆義氏は都合で欠席

CT部門審査員。右から粟井和夫 氏(広島県立病院機構),平井俊範 氏(熊本大学),陣崎雅弘 氏(慶應義塾大学),吉岡邦浩 氏(岩手医科大学),辻岡勝美 氏(藤田医科大学),瓜倉厚志 氏(茨城県立医療大学)※華岡青洲記念病院の山口隆義氏は都合で欠席

 

【受賞施設】

〈CT〉

●1~160列部門

【最優秀賞】
外傷性頭蓋内出血
千葉県済生会習志野病院

【テクニカル賞】
CCJDuralAVFに伴う微小動脈瘤同定@頭頸部TBT法
鳥取県立厚生病院

●1~160列(心血管)部門

【優秀賞】
腹部大動脈瘤
福岡リハビリテーション病院

●Aquilion ONE部門

【最優秀賞】
嚥下4D-CTAを用いたbony stroke診断
杏林大学医学部付属病院

【テクニカル賞】
嚥下4D-CTAを用いたbony stroke診断
杏林大学医学部付属病院

呼吸同期における呼吸動態CT(4D-CT)の肺換気機能評価
自治医科大学附属さいたま医療センター

【優秀賞】
Synthetic ECGによる無鎮静下の小児胸腹部撮影
市立福知山市民病院

SilverBeam Filterを用いた低線量胎児撮像の挑戦
日本赤十字社さいたま赤十字病院

Bone Scintigraphy-Like Image
尾道市立市民病院

●Aquilion ONE(心血管)部門

【最優秀賞】
ECG-less 冠動脈CT検査
一般財団法人 厚生会 仙台厚生病院

【テクニカル賞】
One Sequence Protocolエンドリーク診断
愛知医科大学病院

【優秀賞】
Split-Bolus法を用いたFontan型心臓CT撮影
大阪母子医療センター

解離性腹部大動脈瘤
諏訪赤十字病院

造影不良克服のための重力を利用した左心耳閉鎖術術前CT
一般財団法人 厚生会 仙台厚生病院

●Aquilion Precision部門

【最優秀賞】
難治性てんかんに対する迷走神経刺激療法(VNS)
藤田医科大学病院

【テクニカル賞】
高精細CTにて憩室内伸展を観察し得た側方発育型大腸腫瘍
公益社団法人日本海員掖済会 小樽掖済会病院

〈MR〉

●1.5テスラ以下(脳神経)部門

【最優秀賞】
Flexコイルを活用したSTA-MCA Bypass術前画像
藤田医科大学ばんたね病院

【優秀賞】
頭痛の原因精査
医療法人社団医敬会わかば画像診断クリニック

●1.5テスラ以下部門

【最優秀賞】
前立腺癌疑い
千葉県済生会習志野病院

【テクニカル賞】
腰椎圧迫骨折
千葉県済生会習志野病院

【優秀賞】
RDC DWI×ExsperとT2WIを用いた腰部神経根の描出
ふじさわ北整形外科

手根管症候群の術前後の評価
医療法人秀友会 札幌秀友会病院

下肢閉塞性動脈疾患
医療法人顕正会 蓮田病院

●3テスラ(脳神経)部門

【最優秀賞】
Fast 3Dの最適化により高画質・高速化を実現する頸部MRA
藤田医科大学ばんたね病院

【テクニカル賞】
乳頭視床路描出のためのFGATIR最適化
名古屋大学医学部附属病院

●3テスラ部門

【最優秀賞】
FASE-cineによる顎関節症の動態評価と病態把握への貢献
東京大学医学部附属病院

【テクニカル賞】
腎動脈撮像における静脈信号の抑制
社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院

【優秀賞】
9sec息止め Reverse Wheel 3D MRCP
神戸大学医学部附属病院

【Clinical Update賞】
右内頸動脈-前脈絡叢動脈瘤clipping術後
いせき脳神経外科クリニック

T2 FLAIRの“待ち時間”を活かしたMTCパルスの応用
KKR札幌医療センター

〈超音波〉

●血管部門

【最優秀賞】
膝窩動脈捕捉症候群(type5)
藤田医科大学病院

【優秀賞】
Flip-Flop Phenomenon(FFP)疑い
東邦大学医療センター大橋病院

治療効果を追えた総大腿静脈外膜嚢腫
宗教法人 在南プレスビテリアンミッション 淀川キリスト教病院

●心臓部門

【最優秀賞】
All in ONEで挑む収縮性心膜炎
北海道大学/北海道大学病院

【優秀賞】
極めて稀な左室心尖部中隔粘液腫
医療法人平成会 八戸平和病院

左心耳内血栓
医療法人社団松和会 池上総合病院

●腹部部門

【最優秀賞】
肝細胞癌:造影超音波多次元解析による免疫複合療法効果予測
岩手医科大学附属内丸メディカルセンター

【優秀賞】
三尖弁逆流に起因する拍動性ジェット流を伴った肝内静脈瘤の一例
山口大学大学院医学系研究科

超音波が診断・治療経過観察に有用だった先天性胆道拡張症の一例
浜松医科大学医学部付属病院

●乳腺甲状腺表在部門

【優秀賞】
鼠径ヘルニアを疑われた悪性リンパ腫の一例
奈良県立医科大学附属病院

男性非浸潤性乳管癌
相模原ブレストクリニック

 

●問い合わせ先
「画論 ザ・ベストイメージ」事務局
メールアドレス
thebestimage@medical.canon
受付時間
9:00~17:00(土・日・祝日・同社休業日を除く)
https://thebestimage.medical.canon/