Aquilion PRIME × 医療法人天神会 新古賀病院
「待たせない」検査と職員の意識改革 診療と経営の両面での効果を生んだ ハイスペックCT「Aquilion PRIME」 ─ 最新のマルチスライスCTが変える検査環境

2011-11-1

キヤノンメディカルシステムズ

CT


Aquilion PRIMEと古賀理事長,スタッフ

Aquilion PRIMEと古賀理事長,スタッフ

医療法人天神会の中核施設である新古賀病院 は,2011年4月に16列CTを更新し,東芝社の最新鋭CT「Aquilion PRIME」を導入した。装置の選定に際しては,放射線診断部の診療放射線技師が中心となり,画質や検査効率などを検討した結果の決定だった。その後の検査では,スループットが向上し,検査待ちがなくなるなどのメリットを生んでいる。また,放射線診断部のスタッフは,被ばく低減を図りながら,有用性の高い画像を提供できるよう,高いモチベーションを持って検査業務にあたるようになり,人材の活性化といった経営面での効果も生まれている。Aquilion PRIMEの導入によって,検査環境が大きく変わったという同院に,導入のねらいや使用経験について取材した。

■高度医療の提供のために画像診断を重要視しモダリティの充実を図る

古賀伸彦 理事長

古賀伸彦 理事長

医療法人天神会は,1946年に古賀病院の初代院長である古賀一雄氏が,福岡県久留米市に内科医院を開設したことから,その歴史が始まる。医療機器などの設備を充実させながら,病床数を増やして発展を続け,92年には医療法人天神会を設立。97年には新古賀病院,2002年には古賀病院21を開設するなど,グループ全体での診療機能を強化し,「人々の豊かな生涯を支援する医療」を理念に掲げて,地域医療に貢献してきた。
このうち,グループの中心的な存在として地域住民に高度医療を提供してきた新古賀病院の特色について,古賀伸彦理事長は次のように述べている。
「当グループでは,予防から,急性期,回復期,慢性期までの総合的な医療と福祉を提供することを究極的な目標としています。その中で新古賀病院では,急性期病院として最先端の医療を行ってきました。特に,循環器,脳神経,消化器,呼吸器の各領域の診療に力を注いでいるほか,救急医療にも取り組んでいます」
高度医療を提供していくために,同院ではモダリティや医療情報システムの整備を他院に先がけて進め,常に用途に応じたハイスペックな製品を導入している。古賀理事長は,「私たちは長年にわたり,画像診断を重要視してきました。なぜならば,誰にでもわかりやすく,透明性の高い医療は,画像診断によって提供できると考えているからです。この考えに基づいて,私たちは常に臨床ニーズに応える高性能なCTやMRIの導入を進めてきました」と説明する。
最新のモダリティを積極的に診療の場に取り入れている同院では,2011年4月に東芝社の最新鋭の80列CTであるAquilion PRIMEを導入し,日常の検査業務の中で,十分にその威力を発揮させている。

小野 研 放射線科部長

小野 研
放射線科部長

橋爪一明 技師長

橋爪一明 技師長

二子石直樹 技師

二子石直樹 技師

     
白石哲史 技師

白石哲史 技師

上田年男 技師

上田年男 技師

 

 

■放射線診断部のスタッフが強く望んだAquilion PRIME

新古賀病院がAquilion PRIMEの導入を図った最大の理由は,それまで7年にわたり使用してきた16列CTをリプレースし,胸部・腹部領域を中心としたルーチン検査を高画質でかつ効率良く行うためであった。機種の選定にあたっては,各社の64列以上の装置を候補に挙げて検討が行われた。
具体的に検討していく過程では,放射線診断部の診療放射線技師が中心となり,画質やアプリケーション,操作性などを吟味していった。このことについて,古賀理事長は,「CTの性能が上がったことで,画像再構成の重要度が高くなっています。それだけに診療放射線技師の役割は非常に重要です。普段から研究をして,専門職として高いレベルの知識・技術を身につけ,プライドを持って業務に取り組んでほしいと考えています。そこで,高性能の装置を導入することで,モチベーションを高く持ってほしいと考え,装置の選定を任せることにしました」と述べている。
当初は,Area Detector CTの「Aquilion ONE」も候補に挙がったが,検討の最中に80列CTのAquilion PRIMEが発表された。Aquilion ONEの性能を受け継いだハイエンドのマルチスライスCTとして発表されたこの装置は,同院が求めていた胸部・腹部領域を中心としたルーチン検査に幅広く対応し,循環器領域の検査にも十二分に適用できる。さらには,画質,スループットの面でも,同院が求めていたレベルに見合うものであり,最終的にAquilion PRIMEの採用が決定した。
放射線診断部の橋爪一明技師長は,「当院で導入していた16列,現在使用している64列CT両機種とも他社のものであり,新たに導入する装置も合わせた方が使い勝手が良いという考えもありましたが,スタッフからは,メーカーが違っても性能の良い製品を導入した方が,日常業務にも新たな目標を持って取り組めるという意見が出ました。私としても,操作方法などが異なると苦労する面もあるかと思いましたが,スタッフのモチベーションを高めるという観点から,Aquilion PRIMEを採用したいという提案に賛成しました」と導入の経緯を振り返る。

■「待たせない」高いスループットと質の高い検査を両立させるAquilion PRIME

新古賀病院の放射線診断部では,「待たせない,患者さんの立場で,高度な医療の提供」を行動規範に掲げている。稼働から3か月が過ぎた現在,Aquilion PRIMEは,この言葉を証明する働きぶりを見せている。
Aquilion PRIMEでは現在,頭部・胸部・腹部の各領域で,ルーチン検査にフル活用されている。1日の検査枠は20件で,さらに緊急の検査が加わり,平日は40~50件前後の撮影を行っている。また,夜間や休日などの救急でも使用されており,5~10件程度の検査をこなしている。
Aquilion PRIMEでの検査は,二子石直樹技師,白石哲史技師,上田年男技師の3名が主に担当し,数名の診療放射線技師がサポートとする体制がとられている。これまで東芝社製CTの使用経験のある診療放射線技師はほとんどいなかったが,日本語表示対応やGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)などによる国産メーカーならではのきめ細やかな配慮がされているため,すぐに操作を習得できたという。特に夜間などの救急での検査では,当初操作経験の少ないスタッフが担当することがあったが,スムーズに検査を行えたとのことで,操作を覚えてしまえば,誰でも使える装置だという声がスタッフからは挙がっている。

●高速撮影・画像再構成とSureStationによる「待たせない」検査

SureStationによる検査業務の並行処理

SureStationによる検査業務の並行処理
二子石技師と上田技師がそれぞれ撮影と画像処理を並行して行うことでスピーディに検査を終えることができる。Aquilion PRIMEによりスループットが向上し,検査待ちが解消された。

同院におけるAquilion PRIME導入による最大のメリットは,検査効率の向上であろう。古賀理事長は,「CT室の前を通ると,患者さんがいないので,検査数が減っているのかと思ったら,実は検査時間が短くなり,患者さんの待ち時間が解消されていたと知り,導入効果を実感しました」と述べている。これについては,橋爪技師長も同じ感想を持っており,「以前は検査を待つ患者さんで待合室がいっぱいでした。われわれCT室の椅子を貸していたくらいでしたが,いまではそういったことはなくスムーズに検査が進められています」と話す。
この検査効率の向上をもたらしたのが,Aquilion PRIMEの超高速ヘリカルスキャンと50f/sという超高速画像再構成技術,そして,コンソールシステムのSureStationである。SureStationは,Aquilion PRIMEの特長の1つであり,通常のモニタ1面とキーボードというコンソールに,もう1台モニタとキーボードを加えて,撮影業務と画像処理・参照を同時並行的に行うことを可能にする。さらには,SureXtensionを導入すれば,CT室以外の読影室などで撮影中の画像を観察することもできるなど,Aquilion PRIMEでは,施設の用途や運用方法に合わせたフレキシブルなコンソール構成が可能になる。二子石技師は,「いままでは撮影を終えてから,再構成・画像処理を行っていたので時間がかかっていましたが,Aquilion PRIMEでは1人がスキャンコンソールで撮影を行い,同時にSureStationで再構成・画像処理をすることができるのが,大きなメリットです」と述べている。これを受けて上田技師も,「撮影した画像を順次処理しながら,次の撮影を行えるので,検査が途切れず,無駄なく実施できています」と付け加える。
 一方で,超高速ヘリカルスキャンについて白石技師は,「体幹部の撮影の場合,いままでだと12,13秒かかっていたスキャン時間が半分にまで短縮できたことも,検査効率の向上に大きく貢献しています」と説明している。このような撮影時間の短縮化は,患者さんからも好評で,「以前に比べ検査が早く終わった」と声をかけられることもあるという。

●Real Prep. による質の高い造影検査

胸部・腹部領域の検査件数が多いAquilion PRIMEであるが,検査の質の向上につながる効果も生んでいる。上田技師は,「造影検査で一番ポイントとなるのは,造影のタイミングです。どの技師が行っても同じイメージクオリティで同じ染まりにしなければなりません。これは意外と難しい技術で個人差が出たりします。Aquilion PRIMEにはReal Prep. 機能があり,ROIを一度設定すればモニタリングから曝射までを自動で行いますので,操作者による差がなく最適な造影条件を保つことができます」と,東芝社のボーラストラッキング法であるReal Prep. の使いやすさを高く評価している。このReal Prep. が使えるようになったことは,造影剤も適量にすることができ,被検者の負担の軽減にもつながる。さらに,上田技師は高分化型肝細胞がん症例などで,病変部が鮮明に描出できるようになったと,メリットを挙げている。

●従来装置の2/3の線量で高画質画像を提供

造影剤量の最適化同様,被ばく低減も,被検者の負担を減らすためには重要なテーマと言える。同院では胸部・腹部領域の症例すべてに,東芝社の最新の被ばく低減技術であるAIDR(Adaptive Iterative Dose Reduction)を適用し,高画質と低線量の両立に努めている。
 Aquilion PRIMEでは装置がオートで設定する点が優れていると評価が高い。白石技師は,「Aquilion PRIMEでは,いままでの画質を保ちながら,2/3程度にまで撮影線量を下げて検査を行っています」と述べている。今後は,さらにAIDRを適用した撮影プロトコールの検討を進め,より被ばく低減を図りつつ,臨床に有用な画像を提供していくことをめざしている。

●ハイエンド装置の導入で高まるスタッフのモチベーション

同院では,ほかにもAquilion PRIMEによって,胸部・腹部領域の検査・診断のワークフローが変わった。例えば,CTコロノグラフィは,Aquilion PRIMEの導入によって,被検者の息止め時間が従来よりも短くなり,負担を大幅に軽減している。また,CTコロノグラフィは,スカウトビューと本撮影で,それぞれ仰臥位と腹臥位での撮影を行うため,AIDRによる被ばく低減は被検者にとって大きなメリットになる。こうしたことからCTコロノグラフィの適用が広がっており,内視鏡検査と注腸X線検査の代替検査や検診で,件数が増えていくことが予想されるという。
このようなAquilion PRIMEの撮影プロトコールやテクニックについては,二子石技師,白石技師,上田技師の3名が中心になって,日々検討を行いながら,より質の高い検査ができるよう"カイゼン"を図っている。二子石技師は,「自分たちがAquilion PRIMEを選んだ以上,医師,患者さんに喜んでいただきたいですし,使命感を持って検査に取り組んでいます。いまは自分たちが作りたいと思った画像を提供できているので,やりがいがあります」とその思いを語る。橋爪技師長も,「ハイスペックCTを導入したことがスタッフの刺激となり,いままで以上にモチベーションが高くなって,良い効果が出ています」と述べている。

■症例1 頭部スクリーニング

症例1

a:axial像,b:coronal像,c:sagittal像 80列,コンベンショナル撮影。
わずか4回転で頭部撮影を終了。

 

■症例2 腹部精査

症例2

a:Plain(管電圧:120kV,管電流:90~150mAs),
b:動脈相(管電圧:120kV,管電流:67~112mAs),
c:門脈相(管電圧:120kV,管電流:67~112mAs)
VolumeEC(患者他の体形に合わせ最適な管電流を設定)にAIDRを連動させることにより,自動的に被ばく低減を考慮した管電流を設定できる。
また,ハイピッチ撮影を行うことで短時間撮影が可能〔HP:111(BP:1.387)〕。

 

■症例3 CTコロノグラフィ・体脂肪測定

症例3

a:CTコロノグラフィ(左:ray sum像,右:VE+MPR像),
b:体脂肪測定 CTによる検診事業を進めている。

 

■患者さんやスタッフの満足度を高め経営面にも大きなメリット 

Aquilion PRIMEは,医師からも高く評価されており,モチベーションを高め,診療の質を上げていくことに貢献している。小野 研放射線科部長は,「ガントリの開口径が780mmと広く,CTガイド下生検やドレナージの手技操作がしやすいです。モニタで穿刺針の位置をリアルタイムに確認でき,またアーチファクトも目立たないために,ストレスなく手技を施行できています」と評価している。
古賀理事長は,Aquilion PRIMEがスタッフの意識改革をもたらしたことについて,「良い装置を導入することで,診療放射線技師たちが努力すれば,スキルが向上します。これはチーム医療の観点からも,良いことだと思います」と言う。そして,「高性能の装置を導入すれば,適用できる症例が増え,検査の質を上げていくことができます。高度医療を提供する当院としては,そのための投資は必要であり,今回の更新は良い効果を生んでいると考えています」と,経営者の視点から語る。
新古賀病院は,Aquilion PRIMEの導入によって「待たせない,患者さんの立場で,高度な医療の提供」をするとともに,スタッフのモチベーションを高めるなど,臨床面はもとより,経営面での効果を得ることができた。同院では今後も,最先端のモダリティを整備しつつ,「人々の豊かな生涯を支援する医療」に向け,患者さんにとってわかりやすく,侵襲の少ない診療を追究していく。

(2011年7月5日取材)

療法人天神会 新古賀病院

医療法人天神会 新古賀病院
住所:〒830-8577 福岡県久留米市天神町120
TEL:0942-38-2222
病床数:202 床
診療科目: 内科,循環器内科,呼吸器内科, 消化器内科,腎臓内科,糖尿病・ 内分泌内科,血液内科,神経内科, 放射線診断科,放射線治療科, 外科,心臓血管外科,脳神経外科, 消化器外科,呼吸器外科,乳腺外科, 整形外科,婦人科,麻酔科,救急科, 病理診断科,臨床検査科
http://www.tenjinkai.or.jp/shinkoga

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