ユーザー訪問 
医療法人愛誠会 昭南病院 
ECHELON OVAL導入により積極的な地域医療を展開
“オープンMRIよりオープン”なワイドボアMRI

2013-4-26


朝戸幹雄 院長(中央)と放射線科スタッフ

朝戸幹雄 院長(中央)と放射線科スタッフ

愛誠会昭南病院は,2006年に就任した朝戸幹雄院長のもと病院運営の改革を実行し,2010年にはJHQCクオリティクラスA認証を鹿児島県で初めて取得した。2012年9月には,日立メディコの楕円形状のワイドボアが特徴の1.5T MRI「ECHELON OVAL」の世界第1号機を導入。病院改革に取り組み,地域に根ざした病院運営を進める昭南病院でのECHELON OVALの運用について,朝戸院長と診療放射線科の熊谷繁夫技師長にお話をうかがった。

朝戸幹雄 院長

朝戸幹雄 院長

熊谷繁夫 技師長

熊谷繁夫 技師長

 

院内の意識改革と医療連携強化で病院経営を改善

昭南病院は,内科,循環器内科,神経内科,消化器内科,消化器外科,泌尿器科,放射線科などを標榜し,常勤医師13名,1日平均の外来患者数は220~240人となっている。朝戸院長は,スタッフの意識の変革や病棟の在院日数の削減,給与体系の見直しなどを敢行し,経営の改善と同時に院内の活気を取り戻すことに成功した。
昭南病院がある大隅半島北部の曽於市は,北に都城市(宮崎県),南に鹿屋市などが隣接する。曽於市の人口は約4万人,都城,鹿屋,志布志などを含めた医療圏の人口が約10万人だが,同院はこれらの中心に位置し,交通の便も良いことから,医療連携を積極的に行っていることも特徴だ。「当院の役割は,循環器や脳神経領域の先端の治療を提供することではなく,ここで的確な診断を行い,しかるべき施設に紹介する,また,術後のフォローアップをしっかりと行うことです。そのためにも,CTやMRIといった画像診断機器は,必要不可欠と考え整備しています」という朝戸院長の経営ポリシーのもと,2012年9月,楕円形状のワイドボアを搭載した1.5T超電導MRI装置「ECHELON OVAL」(日立メディコ)が導入された。

楕円形状のワイドボアが特徴のECHELON OVALを選定

ECHELON OVALは,2011年のRSNA(北米放射線学会)で発表され,日本では2012年4月から販売が開始された。ECHELON OVALは,日立メディコの1.5T MRIの最上位機種となり,同院が世界での第1号機導入となる。
同院では,0.3Tオープン型MRIである「AIRISⅡ comfort」が稼働していたが,リプレイスのタイミングを迎えていた。具体的な検討を始めていた2012年4月に,国際医用画像総合展(ITEM)2012で展示されたECHELON OVALを見て導入を決定したと,朝戸院長は語る。
「当院の診療コンセプトにぴったりの装置だと直感しました。一番はやはり,卵形のガントリ開口部分です。当院は高齢者が多く,腰が曲がっている人や脳梗塞の患者さんなどがたくさんいますが,この形状であれば,そのままの姿勢で検査ができます。画質についても納得でき,当院にとってメリットが大きいと判断しました」
放射線専門医である朝戸院長は,放射線検査についてCT,MRIはもちろん,一般撮影からRIまですべて自ら読影し,レポートを作成。ステントグラフトなど血管内治療も手掛けている。ECHELON OVALの導入により,放射線専門医として迅速な診断を行い,的確な治療につなげることができる環境が整備されたことになる。

OVALの操作端末

OVALの操作端末

左右74cm×縦65cmの楕円形状のワイドボア

左右74cm×縦65cmの楕円形状のワイドボア
膝を折った状態でも横向きで入ることができる。

 

ワイドボアと検査のワークフローを改善する技術を搭載

●楕円形状のワイドボア

ECHELON OVALは左右74cm×縦65cmの楕円形状の開口径を持ち,楕円形状の傾斜磁場コイルでも高い静磁場均一度を実現する。熊谷技師長は,「以前のオープンタイプの機種に比べても,縦方向の開口が広く楕円になっていることで,これまでにOVALで撮像できなかった患者さんはいません」と,その空間の広さを評価する。また,閉所恐怖症の患者さんからも,ECHELON OVALなら大丈夫という声があったという。「OVALのワイドボアは,オープンMRIよりもオープンと言っていいでしょう」と,熊谷技師長は語る。
さらに,63cmのワイドな寝台によって,肩関節の撮像の際に撮影部位を磁場の中心に持ってくることができ,感度の高い撮像が可能になっている。

●WIT(Workflow Integrated Technology)

ECHELON OVALでは,撮像用コイルやテーブルなどをWIT(Workflow Integrated Technology)というコンセプトで開発している。高感度とワークフローの向上を両立させた,WIT RF Coil Systemは,頭部では目的に応じた3種類(頭部用,頭頸部用,頸部用)のアタッチメントを交換でき,体幹部ではテーブルに組み込まれたSpineコイルと,身体に載せて使用するTorsoコイルによって,コイルの交換やセッティングを容易にした。体幹部用のコイルはSpine,Torsoとも身体に密着することができ,SNRの向上が期待できる。また,コイルが軽いので,女性の技師でも扱いやすくなっているという。
WIT Mobile Tableは,楕円の開口径に合わせた63cm幅のワイドテーブルであると同時に,本体から着脱が可能で,ストレッチャーとしても利用できる。折りたたみ式のアームボードも備えており,造影剤注入の際の手台や,ストレッチャーとして使用する場合の落下防止柵として利用できる。
そのほか,本体に設置したWIT Monitorでは,患者基本情報の表示と修正,コイル装着の状況,心電図や脈波,呼吸などの波形を表示するなど,ワークフローを考えた設計を取り入れている。

■症例1:左内頸動脈のBeamSat TOF

■症例1:左内頸動脈のBeamSat TOF

BeamSat TOFは,ビーム状のサチュレーションパルスで特定血管の信号を抑制でき,頭部の血行動態を非造影で抽出する。aでは,左ICAに高度狭窄or閉塞(▲),および左MCAの信号低下(▲)が認められた。そこで,左ICAにBeamSat TOFを施行したところ,左ICAからの血流信号が抑制(▲)されたことによる左MCAの信号消失(▲)を認め(b),左ICAは完全閉塞ではないと判断した。

 

■症例2:頭部の短時間RADAR(体動低減法)

症例2:頭部の短時間RADAR(体動低減法)

RADAR(パラレルイメージング併用)
頭部のT2WI,FSE,TR:4200,TE:91

 

RADAR,AutoPoseなどのアプリケーションを活用

ECHELON OVAL導入後の検査では,頭部と上肢・下肢の非造影MRA,腹部のMRCPなどが増えており,オープンMRIの時の月間100件から,150件近くまで件数が増えている。オープンMRIでは検査できなかった部位を中心に,血管系では非造影MRA,腹部では肝臓のEOBプリモビストを使った検査やMRCPなどを新たに行っている。
ECHELON OVALには,モーションアーチファクトを低減する“RADAR”が搭載されているが,同院では患者ごとに,RADARの適応を判断している。RADARを使用するのは10人に1人ぐらいと多くはないが,熊谷技師長によれば,「RADARはどの断面でも撮像が可能で,補正によってモーションアーチファクトが抑えられますし,体動が大きすぎて補正できない場合でも何とか診断できるレベルの画像が得られます」とのことだ。
また,熊谷技師長は,ECHELON OVALに搭載されたアプリケーションの中で,頭部撮影の際に自動的に撮像断面を設定する位置決め補助機能である“AutoPose”を評価している。AutoPoseでは,頭部の位置決め3断面から解剖学的パターン認識を行うことで,短い処理時間で基準となるOMラインなどの撮像断面設定を自動で行う。
「MRIの経験の浅い技師でも戸惑うことなく検査ができますし,自動的に設定されることで検査ごとのスライスのズレが少なくなり,脳梗塞の範囲の比較などでも精度が向上して正確な診断につながります」

脳ドックや非造影冠動脈MRAによる心臓ドックへの展開を期待

ECHELON OVALの今後の活用として期待されているのが,検診や人間ドックへの適用である。これまで,人間ドックのオプションとして提供してきた脳血管MRAを,脳ドックとして独立したメニューでスタートする予定である。さらに,心臓の冠動脈スクリーニングについても,OVALでの実施を検討中という。朝戸院長は,「われわれのような中小規模の医療機関が,地域での継続的な医療を提供するためには,画質とコストのバランスが取れた機器を導入することは重要な要素であり,今回のMRIの導入が地域医療への還元につながることを期待しています」と語った。
患者にもスタッフにもやさしいMRIとしてECHELON OVALが,地域に根ざしオープンな医療を展開し続ける昭南病院のこれからの診療を支えていくことが期待される。

(2012年12月10日取材)

 

医療法人愛誠会 昭南病院

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