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MRI検査環境改善ソリューション「Smart Theatre」の開発
株式会社総合企画 ヘルスケア事業部

2022-4-25


開発コンセプト

MRIの検査は放射線被ばくがないという利点はあるものの,狭い検査空間で長時間動けず,必ずしも被検者にやさしい検査とは言えない。特に狭いところが苦手な被検者にとっては,苦痛を感じる検査環境と考えられる。
そこで,われわれは検査空間ボア内の天井に直接映像を投影することで,検査環境を改善するシステム「Smart Theatre」を開発した。

映像投影のしくみ

MRI対応の投影システムとしては,磁場対策,RFノイズシールドが必要となる。
図1に示すように,本システムは工事が不要な簡易設置方式を特徴とし,漏洩磁場の影響が比較的少ないMRI装置背面の検査室隅に,小型のプロジェクターを内蔵したシールドケースを設置する。このシールドケースはステンレス製で質量が10kg以上あり,内部に磁性体が存在しても,磁場による吸引力よりも自重の方が大きいということで,MRコンパチブルの性能を有している。RFノイズに対しては,シールドケースに導波管を設け,この筒により投影光のみを通す。導波管は直径の3.5倍以上の長さを有することで,80dB以上のRFノイズ遮断特性が得られる。しかしながら,この細長い筒では,一般的なプロジェクターの大きく広がる映像を通すことができない。このため,プロジェクターのレンズ前面に10倍程度の長焦点レンズを光軸調整して配置し,投影光の焦点距離を延長することで,ビーム状に細くなった映像にて導波管を通している。
この映像を2枚のミラーで反射してボア内上面に導くが,このとき,凹面となるボア内に斜めに投影することになり,映像は縦に伸び,凸状に歪む。この歪み量を計測しておき,逆歪みを映像データにあらかじめ与えることで,歪み補正を行うプロジェクションマッピング技術を用いている。

図1 ボア内映像投影システム概要図

図1 ボア内映像投影システム概要図

 

映像コンテンツの最適化

映像内容としては,動きの多いものは映像酔いの原因となるので,落ち着いた映像が適している。特に空の映像が好適である。被検者が天井を見上げると,青空に広がる「白い雲」,夜空に繰り広げられる「オーロラ」,水の中を優雅に泳ぐ「熱帯魚」などの映像で“開放感”と“奥行き感”を演出し,緊張感と閉塞感を軽減させる効果が期待できる。

バリエーション展開

頭部撮像にてボア内の投影映像を検査中に見せるためには天井投影が望ましいが,整形領域の検査などではボア内に視界がなく,映像投影の効果が得られないことがある。そこで,同様のシステムを使用してボアの側面に映像を投影する「Smart Theatre Plus」を開発した。これは,MRI検査前の被検者の不安感を低減することが期待できる(図2)。
また,オープンMRIにおいても,開口ボア下面に映像を投影することで,同様の効果をねらったシステム「Smart Theatre Aqua」も開発した(図3)。
本システムによりMRI検査のハードルが下がり,より多くの被検者に適用されることを期待している。

図2 側面投影システム

図2 側面投影システム

 

図3 オープンMRI下面投影システム

図3 オープンMRI下面投影システム

 

* MRIボア内映像投影システム「Smart Theatre」は,株式会社総合企画の製品名称です。(特許出願中)


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